賃貸の重要事項説明書とは?その重要性と確認すべきポイントを解説

「重要事項説明書」とは、賃貸物件の本契約前に確認する重要書類のひとつ。その物件で暮らしていくにあたり重要な情報が多く記載されているため、チェックすべきポイントを踏まえて確認し、納得した上で契約に進むことが重要だ。
そこで今回は、この重要事項説明書の役割や記載されている内容を詳しく解説。特にチェックしたいポイントと併せて見ていこう。

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貸主には賃貸の重要事項説明書にもとづく説明義務がある

賃貸物件を契約する際、賃貸借契約書に署名や捺印をする前に、貸主側には重要事項説明書にもとづく説明が義務付けられている。まずは、この重要事項説明書の役割と内容を確認しておこう。

不動産会社が契約の最終確認に使用する重要事項説明書

賃貸物件の賃貸借契約をはじめ、不動産取引は条件や内容が難しいということもあり、契約を結ぶ前に宅地建物取引士が、借主や買主に契約内容の重要事項について説明する。ここで用いられるのが、重要事項説明書だ。重要事項説明書には、借主が賃貸物件やその契約内容について、誤った認識で契約することを防ぐ役割がある。

重要事項説明を受けて契約内容に納得した上で契約を結ぶという流れだが、実際は重要事項説明と契約締結が同日に行われるケースも少なくない。
しっかりと重要事項説明書の内容を確認するためには、重要事項説明書を事前にもらえないか相談するのもひとつの方法だ。

重要事項説明書に記載されている内容

重要事項説明書に記載される項目は宅地建物取引業法で決まっており、主に次のような内容を確認できるようになっている。

<重要事項説明書の主な記載内容>
・契約にかかる各種表示
・対象となる賃貸に直接関係する事項
・取引条件に関する事項

賃貸借契約の場合は、重要事項説明書に記載する項目がひとつでも欠けることは認められていない。そのため、あまりにも内容が薄い重要事項説明書を渡された場合は注意が必要だ。

重要事項説明書で特に確認すべき内容

重要事項説明書は記載されている情報が多く、どの項目を重点的にチェックすべきかわからないという人もいるだろう。そこで、重要事項説明書で特に確認すべきポイントを見ていこう。

敷金に関する詳細や特約

契約満了時の敷金の精算に関する取り決めを確認しておこう。敷金の場合、滞納した賃料と相殺する、一定の範囲の原状回復費用として充当されるといったケースがある。

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賃料以外に必要な金銭

管理費や鍵の交換費用、自治会・町内会費など、賃料以外に必要な金銭についても必ず確認しておきたい。敷金・礼金などの初期費用の項目と、自治会・町内会費のように毎月発生する費用の項目があるため両方確認し、契約金明細書と異なる部分がないか、不要な費用を請求されていないかをチェックしよう。

更新料・更新手数料

契約更新時には、更新料が発生する賃貸もある。「家賃1ヵ月分」など高額な更新料が必要な場合もあるため、必ず確認しておこう。
また、オーナーに支払う更新料とは別に、不動産会社に支払う更新手数料が必要なケースもあるため、併せて確認しておきたい。

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保証委託料・保証会社利用料

保証委託料または保証会社利用料とは、賃貸物件の契約時に保証会社に支払う料金のことだ。これは、賃貸物件の借主が家賃を支払えなくなったときに備えるもので、賃貸契約時の支払が必須となっていることも少なくない。
賃貸物件の更新時に、保証委託料・保証会社利用料も更新料が必要になるかどうか、金額と併せてチェックしておこう。

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供給処理施設の整備状況

供給処理施設とは、水道やガス、電気、下水などのインフラに関わるもの。利用可能なライフライン施設とその配管状況や、将来的に整備計画があるかといったことが記載されている。

なお、昨今はガス自由化によって、消費者がガス会社を選ぶことができる。特に、ガスはプロパンガスだと光熱費が割高になる傾向があるため注意しよう。
賃貸物件でガス会社を選べない場合は重要事項説明書にその旨が記載されているので、併せて確認したい。

設備の整備状況

賃貸物件にどのような設備があるのかを確認しておこう。古い物件だと、エアコンや温水洗浄便座がなく、必要な場合は自己負担で後付けしなければならないケースもある。

なお、図面と実際の設備状況が異なる場合がある。賃貸物件の場合、入居者が変わるタイミングでリフォームをしたり、設備を交換したりするが、その際、図面までは変更されないことが多い。これを現況優先といい、現在の設備状況(現況)が優先される。図面などと設備状況が異なる場合は、「現況優先とする」などと但し書きがあるため必ず確認しよう。

また、設備と明記されているものは、故障時は原則として貸主が修繕費用を負担する。ただし、借主の故意あるいは過失などで故障した場合は、借主負担となるため注意が必要だ。

解約予告期間

通常、賃貸の契約期間は2年間の場合が多い。中途解約する場合、解約予告は何ヵ月前からしなければならないのかを、必ず確認しておこう。

また、契約解除となる条件もチェックが必要だ。一般的には、「家賃を◯ヵ月以上滞納した」「無断で造作や模様替え、転貸などをした」「反社会的勢力との関わりがあると判断された」「逮捕・拘留された」「死亡した」などの条件が取り決められている。

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禁止事項

賃貸物権で暮らす上での禁止事項も確認しておきたい。次のような項目の取り決めについてもチェックしておこう。

<賃貸物件の主な禁止事項>
・石油ストーブの利用
・ルームシェア
・事務所利用
・楽器演奏(演奏可の楽器の種類、演奏可能な時間帯)

緊急時の連絡先(管理委託先)

設備が故障したときやトラブル発生時の連絡先も、重要事項説明書で確認しよう。
賃貸によっては、契約した不動産会社ではなく委託先の管理会社だったり、オーナーだったりする場合もある。

借主に不利な条件がある場合はどうする?

重要事項説明書に次のような記載があった場合は、借主にとって不利な条件となりがちなため、契約するかどうかは慎重に検討したい。

<借主に不利な重要事項説明書の条件例>
・退去時のクリーニング費用がすべて借主負担となっている
・設備の故障時の修理費用がすべて借主負担となっている

汚れや故障の原因が借主にある場合を除いて、上記のような費用は基本的には貸主が負担するのが一般的だ。契約後に思わぬ費用負担が生じることのないよう、金銭に関する条件は念入りにチェックしておこう。

賃貸の重要事項説明書で疑問点や不明点があれば必ず解消しよう

賃貸の重要事項説明書には、金銭や契約の更新、解除などに関する重要な取り決めが数多く記載されている。疑問点や不明点があれば、必ず担当者に質問して解消することが大切だ。
しっかりと確認せず署名・捺印すると、契約後の思わぬトラブルの原因となるため、重要事項説明書の内容に納得した上で契約すべきか判断しよう。