賃貸を借りるときは、申込み、契約、入居してから退去するまで、さまざまなステップを踏むこととなる。契約時、契約中、退去時それぞれにトラブル事例があるため、どのようなトラブルがあるのか、予防策や解決方法と併せて把握しておきたい。
そこで今回は、賃貸契約のシーン別のトラブルについて、その解決方法や予防策を紹介する。併せて、トラブル時に相談できる窓口もチェックしていこう。
まずは、賃貸契約のタイミング別にどのようなトラブルが起こる可能性があるのか、解決のポイントと併せて見ていこう。ここでは、「契約時や入居手続き」「契約中」「更新時や退去時」の3つのシーン別に、トラブル例とその解決方法の例を紹介する。
物件を賃貸するときに限らず、契約や手続きは確認事項が多く、金銭を扱う場面が多いため、トラブルも少なくない。賃貸の契約時や入居手続きの際は、次のようなトラブルに遭う可能性がある。
・入居申込みをキャンセルできない
入居申込みのキャンセルを申請したら、管理会社からキャンセル不可と断られてしまうトラブルは多い。
このトラブルを防ぐためにも、申し込む前に万が一事情が変わったときはキャンセル可能かどうかを確認しておこう。また、可能な場合はキャンセルの連絡はいつまでに、誰にすれば良いかも明確にしておくことが大切だ。
・申込金が返還されない
入居申込みをキャンセルした際に、一時的に管理会社に預けた申込金が返還されないというトラブルも。仲介会社が申込金などの預かり金の返還を拒むことは、法律で禁止されている。返還を断られたら、管理会社に対して申込金の返還請求を行おう。
このトラブルを防ぐためには、申込金を預ける際に「預り証」を受け取ることをおすすめする。
・契約時に追加費用を請求される
賃貸物件を契約する段階に至って、初めて聞く費用が追加されて、予算をオーバーしてしまうというトラブルもある。
このような追加費用を請求された場合は、契約締結を中断するのもひとつの方法だ。契約時に支払う契約金(初期費用)の金額と内訳は、それ以上追加されるものがないかどうかも含めて、入居申込みをする前に確認しておこう。
賃貸借契約書の読み方のポイントは?トラブル回避のための確認事項
賃貸の契約中は、契約にまつわるトラブルだけではなく、生活に関連することがトラブルに発展する場合もある。起こりがちなトラブルについて説明しよう。
・設備の故障
備え付けの設備が故障した場合は、すぐに管理会社に連絡して修理を依頼したい。通常の使用で故障した場合は、原則として修理費用は貸主が負担することとなっている。
なお、連絡せずに自分で修理をすると修理費を負担してもらえない場合があるため、必ず最初に管理会社に連絡しよう。
・家賃滞納
期日までに家賃を支払えない場合は、支払えないと判明した時点で支払先に連絡をして、その後の対処について相談したい。
もし、家賃を滞納してしまったときは、支払先に謝罪した上で事情を説明し、できるだけすみやかに滞納分を支払うことが大切だ。
・近隣住民とのトラブル
賃貸物件では生活音や共用スペースの使い方、ゴミ出しのルールなど、近隣住民同士のトラブルも少なくない。トラブル発生時は、まず管理会社に相談して、トラブルの解決を依頼しよう。
相談する際は、トラブルの内容をできるだけ詳しく、そして客観的な事実を伝えておくとスムーズな解決が期待できるだろう。
近隣トラブルの対処法とは?主な原因と困ったときの相談先について
更新時や退去時もトラブル事例がある。こちらも契約やお金にまつわることが少なくないため、それぞれの内容と解決方法を確認しておこう。
・家賃・管理費の値上げ
家賃や管理費の値上げは契約条件の変更にあてはまるため、借主の合意がなければ行うことはできない。値上げに納得できない場合は、管理会社に問い合わせてみよう。
・契約更新を拒否される
賃貸契約では、正当な理由がない限り、貸主側が更新を拒否することはできない。また、正当な理由があるとしても、解約時期の6ヵ月前までに借主にその旨を通知しなければならない。さらに、貸主の更新拒否の通知に対して借主が同意しなかった場合は、「法定更新」が行われることもある。法定更新とは、一定の期間前に、契約の更新をしないことや契約を解除することを通知しなければ、条件などを変更しないまま自動的に契約が継続されることだ。
契約更新を拒否されたときは、まずは管理会社と話し合いをすることが大切だ。
・原状回復義務をめぐるトラブル
賃貸物件を退去する際、借主には部屋を元の状態に戻す「原状回復義務」がある。この原状回復を行うにあたり、入居前からある損傷の修繕費や敷金を超えるクリーニング費用などを請求されたり、敷金が返ってこなかったりといったトラブルが多く発生している。
こうした原状回復義務をめぐるトラブルが発生したら、まずは契約書の原状回復に関する項目と、自分が負担すべき原状回復の範囲を確認しよう。敷金よりも自分が負担する金額のほうが少ないと判断できる場合は、原状回復費用を差し引いた敷金を返してもらうよう、貸主に対して書面による文書手続きをする必要がある。
賃貸物件の東京ルールとは?その内容とトラブルを避けるポイント
賃貸契約でトラブルが発生した際、どこに相談すれば良いのか迷ってしまう人もいるのではないだろうか。ここでは、賃貸トラブル発生時の主な相談先を確認しておこう。
賃貸契約や金銭に関係するトラブルは、管理会社や大家との問題になってしまうケースも多いため、次のような機関へ相談しよう。
<賃貸契約や金銭にまつわるトラブルの相談先>
・消費者ホットライン
・日本司法支援センター 法テラス
・一般財団法人不動産適正取引推進機構
入居中に発生した近隣住民とのトラブルなどは、まずは管理会社や大家へ相談しよう。それでも解決が難しい場合は、次のような専門の窓口へ相談することをおすすめする。
<入居中のトラブルに関する相談先>
・独立行政法人国民生活センター
・最寄りの消費生活センター
賃貸のトラブルは、物件選びを工夫したり、契約前に契約書の内容や契約条件をしっかり確認したりすることで防げるものも多い。ここでは最後に、賃貸のトラブルを避けるために心掛けたい2つのポイントを見ていこう。
賃貸を選ぶ際は、次のような選び方をするとある程度の近隣住民同士のトラブルを防げる可能性がある。
<近隣トラブルを防ぐ物件の選び方>
・自分の生活音が階下の人に聞こえない1階を選ぶ
・上階や隣戸の音が気にならない最上階や角部屋を選ぶ
・隣り合う部屋の間取りを確認して、浴室やトイレなどに接していないかチェックする
内見時も物件内の様子をよく観察して、トラブルの心配がないかの判断材料を集めておこう。
賃貸の契約や金銭に関するトラブルは、契約締結前の確認が不十分だったために発生するケースも多い。下記のような内容については、契約を交わす前に一通り確認しておこう。
<契約締結前にしておきたい確認事項>
・契約金(初期費用)の金額と明細、追加費用の有無
・入居前から物件にどのような損傷があるのか
・申込みのキャンセルは可能か
もし、不明瞭な部分や納得のいかない内容があれば、その時点では契約を締結しないことが重要だ。わからない部分は管理会社へ質問して、必ず納得した上で署名捺印をするようにしよう。
入居中のトラブルは、管理会社や大家に相談して解決するケースが多いが、契約内容や金銭に関するトラブルは専門の窓口に相談しなければ解決できない場合もある。
安心して契約できる賃貸かどうかを判断するために、物件選びの際は管理会社の評判や口コミなどもリサーチしておこう。
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