File No.103Union K.Tさん work:ブランドコンテンツクリエイター

日常の一杯を最高のご褒美に。
芳醇な香りに包まれるモダン家カフェ。

「1杯のコーヒーはインスピレーションを与え、1杯のブランデーは苦悩を取り除く」という名言を残したベートーヴェン。『音楽の父』と呼ばれるバッハは、コーヒー好きが高じて『コーヒー・カンタータ』という小喜劇を作り出した。第26代アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトは、1日40杯のコーヒーを飲んでいたという逸話があるほどコーヒーを愛していたという。

日常生活に深く溶け込むコーヒーは偉人たちをも魅了する。そんな偉人たちに負けないくらいコーヒーを愛してやまないのが、モダンデザインをベースにしたリノベーションシリーズ「Union」に住むTさんだ。

「もともとカフェの空気感が好きでコーヒーをよく飲んでいたんですけど、はじめてスペシャルティコーヒーを飲んで、あまりの美味しさに感動して。そこからコーヒーの魅力にどっぷりハマった感じです。好きが高じてコーヒー業界で働きだしましたし(笑)。コーヒーは生活になくてはならないものですね」



笑顔でコーヒー愛を語るTさん。実は、この部屋の居住の決め手のひとつにもコーヒーが深く関わっているという。

「リノベーション物件を探していたときにこの部屋を見つけて。ナチュラルな造りでどことなくカフェっぽさもあって気に入り内見を申し込みました。実際に部屋を見たら、剥き出しのコンクリートの素の感じと木材とアイアンのバランスが自分好み。陽当たりも良いし、何よりお気に入りのカフェが近くにあるのが最高で。すぐに申し込みをしました」

Tさんが住むのは、都心へのアクセスが良好ながら落ち着いた雰囲気が魅力のエリア。駅周辺は高層ビルが少なく、穏やかな雰囲気が漂う。日々の暮らしを支える買い物環境も整い、個性的で落ち着いた雰囲気のカフェも数多く点在。

「この辺りのカフェに良く来ていて、街の雰囲気がすごくいいなと思っていたんです。次に住むならこのエリアもいいなと思っていて、そんなときに見つけた物件で。休みの日はよく自転車で街を散策して、新しい店を開拓したり写真を撮ったりと楽しんでいます。何より、この部屋でコーヒーを淹れて過ごす時間が心地良くて」

部屋を見回すと、飾り棚にはお皿になるまな板のパッケージをディスプレイし、その他の棚にはセンスの良い雑誌が並ぶ。パーケットフローリングとも相性の良い木製の椅子と観葉植物が空間に馴染み、カフェのような雰囲気を醸し出している。

「前に住んでいた家は北欧チックにしていたんですけど、この部屋に越してきてナチュラルな感じにしたくて。素の感じを活かせるように、木製の椅子や植物を買い足してカフェの持つ心地よい空間を意識しました」

BGMは耳あたりの良いヒーリングミュージック。右手にはお気に入りの豆から挽いた浅煎りコーヒー。日常の一杯を最高に仕立てる贅沢な空間。さぞかし部屋にいる時間が楽しいに違いない。

「そうですね、思い通りのインテリアにできたし家にいる時間が心地よいんですけど、満足度としては6割くらい。実はクローゼット周りがまだ完璧じゃなくて、人様には見せられない状態で(笑)。そこがクリアになったら本当に楽しいって思えるのかもしれないです」

自分だけの理想的な一杯を見つけるように、理想の部屋にするためのあくなき探求はもう少し続くようだ。

ライフスタイルを変えた、
コーヒーとの出会い。

今でこそ大好きなコーヒーに携わる業界で働き、街に溶け込むように暮らしているTさん。そこに行きつくまでにどんな物語があったのだろう。

「前職は広告業界で、プロダクションマネージャーをしていたんです。忙しい時期は残業が150時間超えることもあって、とにかく忙しかったですね。やりがいもあったし楽しかったんですけど、自分をすり減らしながら仕事することに疑問を感じて……。キャリアを考えたときに違うなって思って、ライフバランスに合った仕事に就こうと思ったんです。自分が本当にしたいこと……そう考えたときに、真っ先に浮かんだのがコーヒーで。単に好きってだけじゃなく、コーヒーが持つ味わい、香りや見た目、豆の触感や焙煎する音……五感を通じて気分転換になる、そういう深い部分を伝えていきたいと思ったんです」

業界で培った広告のノウハウを活かし、現在では企業のブランドコンテンツクリエイターとしてコーヒーの魅力を世に発信している。

「八雲のONIBUS COFFEE(駒沢)でスペシャルティコーヒーを飲まなかったら、コーヒーにハマってもいなかったし、この道に進もうと思わなかった。人生を変えた一杯ですね」

ライルスタイルを変えたコーヒー。そんな最高の一杯を、自分でも淹れてみたいとは思わないのだろうか。

「いつかはお店を持ってみたいとは思うけど、まだまだ先ですね。今はこの業界のことを学んで、人脈を広げていければと思ってて。でも、自分で美味しいコーヒーを淹れるために、色々と研究はしているんですよ」

そういうと、キッチン横のラックに並べたお気に入りの豆を選び、ミルで挽きはじめた。



「豆の量は15g。アイスの時は細かく挽くんですけど、ホットの場合は粗目に挽くんです」

フィルターにペーパーをセットしてコーヒーを淹れる……と思いきや、ここにひと手間を加えるという。

「挽いた粉を淹れる前に、ペーパーの汚れを取ります。このひと手間で雑味が軽減されるんですよ。きれいになったら粉を平らになるように入れてお湯を注いでいきます」



240mlのお湯をゆっくりと回しながら注いでいく。ふくらみが止まったら、再度ゆっくりと「の」の字を描くようにお湯を注ぐ。コーヒーのふくらみが止まるまで待つ時間も、美味しいコーヒーを味わうために必要なのだという。この動作を3回繰り返すと、部屋中を魅惑的な香りが埋め尽くした。

「240mlのお湯を注いで、ペーパーを通して残るのが200mlくらい。まとめて作ると味にムラが出てしまうので、飲みたいと思ったときに淹れるようにしているんです」

この淹れ方は、Tさんが独自で調べたのだという。

「その日の気温や湿度によって味が変わってしまうので、その時々で淹れ方を変えています。美味しいコーヒーを味わうためなら、全然苦にならない(笑)。むしろ、この時間が楽しいんです」

コーヒーを片手に、満面の笑みを浮かべるTさん。駒沢で出会った一杯は、生活を豊かにして最高の笑みをも引き出した。

人が集まる場所は、
街になってやがてカルチャーに。

心地の良い陽光が差し込むモダンテイストな空間。季節の風を感じながら、時折、本を開いてコーヒーやインテリアの本を読むというTさん。

「いつかカフェを開くときのために、色々参考になるものを吸収しています。自分でYouTubeを配信しているんですけど、そこではカフェや雑貨、花屋や古本屋などを街とともに紹介していて。カフェだったらコーヒーの味はもちろん、内装にも凝っていたり、雑貨屋や古本屋は店自体の雰囲気もすごく良くて、人が集まるのがよくわかる。お店を紹介しつつ、今後の参考にしています」

YouTubeでの取材や撮影、編集、配信すべて自分一人で行っているというTさん。店へのアポイントもすべて自分で行っているのだろうか。

「好きなお店を見つけたら、何度か通って顔見知りになって、色々話せるようになったら『YouTubeで紹介させてほしい』と切り出しています。いきなりお店に行ってお願いするよりも信頼度があがるんです。それに、通う間にどういった経緯でお店をはじめることになったのかとか、どういったお客さんが来ているのかなど色々知ることができるので、勉強になるんですよ。アップの頻度は月1回くらいでなかなかあげられていないんですけどね(笑)」

好きで行っていることが、未来の投資に。今を楽しみながら未来に続く道を着実に歩んでいる。他にも、今後を見据えたやりたいことがあるという。

「自分のお店を持つにあたって、空間づくりも大切にしたいので、インテリアコーディネートの勉強などもしています。」

剥き出しのコンクリートに施されたオープンハンガーや小物掛けには、ショップさながらにディスプレイ兼、収納された服や小物が。今のままでも十分お洒落だが、そこにインテリアの知識が加わったらさぞかし上質な空間になるだろう。

「あとは、色んなお店の人と知り合ってコミュニティを作っていきたいですね。イベントをやってみんなが集まる場所をつくりたい。人が集まると、やがてそれが街となってカルチャーになっていく。そういった根本的な土台をつくっていきたいです」

一杯のコーヒーからライフスタイルが変わり、大きな夢を持ったTさん。いつかTさんが営むカフェで、コーヒーを飲みながら新たなカルチャーが生まれるところを見てみたくなった。

Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata