File No.107Plain K.Hさん work:IT事務

好きな場所へ 好きなものへ
“好きのアクセス”になる部屋

大きな公園の並木道を抜けると、街の輪郭がふっとやわらぐ。
高いビルが続くエリアのすぐそばにも、歩きたくなる静けさと光がある。Plainシリーズに住むHさんが暮らすのは、そんな“街と余白の間”にある場所だ。

「街を歩くのが好きで、家から原宿や渋谷まで歩いたりします。お気に入りの雑貨屋さんがあるので。1時間ぐらいお散歩がてら歩くと気持ちがいいんです」

その言葉のとおり、彼女にとって散歩は“移動”というより“趣味の延長”にある。
原宿方面へ、渋谷方面へ。気になる店へふらりと歩きながら向かうのが、仕事の合間を埋める大切な時間だという。

普段はデスクワークが多いHさん。
「ずっと座りっぱなしなので、なるべく動きたいなと思って歩いています」
と笑う。歩くほどに、街の空気に自分の思考がほどけていく感覚が心地いいという。



その“好きな場所へ歩いていける”というアクセスは、日々の楽しみを少しずつ増やしてくれる。
彼女が選んだこの部屋もまた、そんな散歩のスタイルと、趣味の世界観をそのまま受け止めてくれる場所だった。

彼女がこの部屋に出会ったのは、同僚からの「おもしろいリノベ物件があるよ」という何気ない紹介だった。
そこから物件探しを続けること半年。ようやく巡り会ったのが、今のREISMの空間だ。

「ずーっとお部屋を探していて、同僚からREISMを紹介してもらったんです。ここは来た瞬間、即決でした(笑)」



そう振り返る彼女の声には、“ようやく見つけた”という安堵と高揚が同時に滲む。

決め手になったのは、部屋に入った瞬間に感じた色と質感だった。

「可愛いなと思ったのが壁の色です。こっち側は打ちっぱなしでラフな感じなんですけど向かいの壁はまた違った配色で、それも決め手になりました」

淡く静かな色味の壁。その空気感が、彼女の好きな深い色味の家具や、ウッド調の雑貨と似合うと直感した。

そして、REISMらしい造作収納や棚、レールのフック。



(上)天井付近のスペースを活かしたラック。書籍や小物などHさんの”好きなもの”が見せる収納として配置されている。(左下)打ちっぱなしに配置されたレールフックにはフェスのTシャツやお気に入りの服がかけられている(右下)決め手となった淡い青の壁紙。ウッド調の配色と融合し穏やかな雰囲気を醸し出している

「部屋のレイアウトを自由に考えやすそうだなって。ここに服の収納や棚を置いて、上にも収納があるのが良いですよね。広いスペースで色々なものが置きやすそうで、惹かれました」

“取り出したいもの”を手元に、本来“隠したいもの”でもは高い棚へ置けば“見せる収納”に。そんな彼女の生活の癖を自然と受け入れてくれる設計だった。

この部屋は、ただ住む場所というだけでなく、彼女の“動き”と“好き”に対して、寄り添ってくれる空間だったのだろう。



(上)レールフックには服だけではなくお気に入りのアーティストポスターが。モノクロのポスターは打ちっぱなしの壁とマッチしている(左下・右下)「香りが好きなんです」と語るHさん部屋の至るとことろにデフューザーや香水が

香り、音楽、散歩、雑貨。彼女の嗜好がそのまま部屋の風景になっている。

棚の上には、お香の袋がいくつも並ぶ。

(左)天井収納から様々なお香が入った袋を取り出すHさん。ちょうどいい高さのベッドに登り手を伸ばす(右上)他種類のお香は旅行先や、行きつけの雑貨屋さんで集めたそう。気分に合わせて香りを選んでいるそう(右下)フジロックで見つけたお香は中々試せない。特別な時まで取っている。

「お香が好きなんです。ふらーっと散歩しながら雑貨屋さんへ入ったりしたら買ってしまって、気づいたらいろんな種類が増えていくんです」

今年初めて訪れたフジロックでは、エリアごとに香りが変わる“フェスのお香”に出会った。

「音楽も好きなんですけど、フジロックに行った際見つけました。『え!こんなグッズがあるんだ!』ってびっくりして思わず買っちゃいました。まだ使えなくて。特別な日に焚きたいなと思ってます」

その箱はまだ封を切らず、楽しみとしてそっと残している。

旅行先の三重で出会った試験管入りのお香、ライブのステッカー、深めの色味の雑貨たち。
直感で“持ち帰りたい”と思ったものだけが、この部屋に集まっている。

「木っぽい深めの色味が好きで、このお家もウッド調をベースに作られていてかわいいですよね。家具もここに合わせて買っちゃいました」

散歩で見つけたお気に入りの店、旅行で心惹かれた香り、音楽の余韻——。
そのすべてが手を伸ばせば届く場所にある。
この部屋自体が、彼女の“嗜好へのアクセス”になっているようだった。

なかでも彼女が特に愛しているのが、玄関まわりの小さなスペース。
靴を脱ぐ前のその一角に、香水やお香、雑貨、そしてラッコたちが整然と並んでいる。

「実は部屋のいたるところにラッコがいるんです」



その言葉を裏付けるように、玄関の棚にも、冷蔵庫の側面にも、小さなラッコがちょこんと佇んでいる。

彼女のラッコ好きは、「日本に2頭しかいないって聞いて、鳥羽水族館まで会いに行きました」

というほど熱心だ。
愛らしく無邪気な表情に惹かれ、見つけるたびについ連れ帰ってしまうという。

玄関に“好きなものゾーン”を作る理由を尋ねると、「帰ってきた瞬間に癒されるから」と彼女。
外の世界で溜めてきたものが、ラッコのゆるい表情とお香のほのかな香りでふっとほどける。そんな切り替えの場所としても、この小さなゾーンは欠かせない。

ここでもまた、彼女の“好きなものへのアクセス”が最短距離で存在している。

キッチンに立つと、整った収納とステンレスラックが広がり、彼女の生活リズムがよく見えてくる。

「料理は好きでよくしますよ。会社に行く時はお弁当作って持っていってます。」



朝の時間に丁寧に作るお弁当は、歩いて通勤する彼女にとって、自分のペースを保つための大切な儀式だ。

キッチン横には、自分で追加したステンレスラックがすっと馴染んでいる。
「料理をするので、キッチンのスペースを充実させたくて、ステンレスラックを足しました。冗談には炊飯器やトースターもおけますし、下には食べ物のストックもおけるし、お部屋の雰囲気にもマッチしていて気に入ってます」



淡い色味の壁紙とも相性がよく、調味料や器具がひと目で分かるほどきれいに収まっている。

作ること、整えること、気に入った道具をそばに置くこと。
キッチンにもまた、”彼女らしさ”が満ちていた。

好きな場所へ歩いていけて、
好きなものにすぐ手が伸ばせて、
心を惹かれた物だけが自然と集まっていく。

彼女の暮らしは、そんな“嗜好のアクセス”で形づくられていた。

街の賑わいと静けさのあいだで、今日も彼女は歩いて帰ってくる。
玄関でラッコたちが迎え、部屋にはお香の香りがそっと漂う。



その小さな瞬間の積み重ねこそ、自分らしさのある暮らしの核なのだと、彼女の部屋が静かに語っていた。

Text: Taichi Kodama
Photograph: Hiroshi Yahata