File No.83Wasabi T.Eさん work:メーカー経営企画

板の間、陽だまり、
心のまにまに。

柔らかな陽ざしに包まれてウトウト——。ひなたぼっこをする猫は、幸せそうにまどろむ。
陽の光に触れると、気持ちが穏やかになり幸せで満たされるのは人も同じ。そこだけ時間がゆっくり流れているような錯覚に陥る。

広々とした開放的な空間に杉の無垢床が広がる、和の趣を取り入れたリノベーションシリーズ「Wasabi」。この部屋の住人Eさんは、部屋の造りもさることながら、陽あたりの良さも入居の決め手になったという。

「この部屋に引っ越して来る前は、男3人でルームシェアしてたんです。場所も良かったし楽しかったけど、自分の部屋の陽あたりが悪くて。コロナ禍でテレワークになった時に、陽の当らない部屋にずっといることが本当に苦痛で、気が滅入るしこのままじゃ変になるなって思って、引っ越すことに決めたんです」
一人暮らしは初となるEさん、内見には高校時代からの友人2人も来たのだとか。

「和を感じる落ち着いた雰囲気が気に入って内見の申し込みをしたんですけど、この部屋の近くに友達2人が住んでることもあって、内見当日に来てくれたんです。僕自身、部屋の造りも陽あたりも申し分なくていいなぁと思っていたら、友達2人も気に入ったみたいで『ここにしろよ!』ってめちゃくちゃ薦めてきて(笑)。内見1件目だったんですけど、すぐに決めました」

友人2人が後押ししたというのも無理もない。広々とした居室には杉板のフローリングに襖のようなガラスの引き戸、杉材を利用したサイドの照明と、細部にまで和の趣を演出。窓からは心地の良い陽ざしが差し込む。この部屋での楽しい未来が、瞬時にイメージできたのだろう。



「落ち着いた雰囲気も良いし、通勤にも便利。陽あたりも最高だし、この部屋に越してきて本当に良かったですね。後押ししてくれた友達は、居心地が良いのか頻繁に家にくるので、すっかりたまり場になってます(笑)。」

この部屋に越してきて半年ほど経ったそうだが、暮らしには慣れたのだろうか。

「初めての一人暮らしで家具や家電を揃えるのが大変だったけど、家具もだいぶ揃ったしこの街での生活にも慣れました。部屋の完成度としては7割くらい。プロジェクターでテレビや映画を観ているんですけど、壁の下半分にキャビネットを置こうかと思ってて。ラグも春夏仕様に変えたいんですよね」



部屋の雰囲気に合わせて、全体的に和のテイストで揃えているというEさん。中でも和紙が生み出すほのかな光が月のように見える、イサムノグチデザインの照明『AKARI』は、この部屋のシンボル的な存在感を発する。

「部屋の照明はすべてアレクサに対応していて、この和紙の照明も音声で点いたり消したりできるんです。色も変えることができるので、ピンクや青にして気分を変えることも。昼間は部屋が明るいので、夜は間接照明を点けたりと雰囲気を変えて楽しんでいます」

思いのままに暮らしを満喫するEさん。陽のあたるこの部屋がもたらしたのは、生活の質を向上させる心の豊かさなのかもしれない。



(上)「前の家は陽あたりが悪くて植物が育たなかったんですけど、この部屋は陽が良く入るので、念願だった植物を育てています」(左下)シマムラ園芸で買ったというエバーフレッシュ。「陽が良く当たるのですくすく育っています(笑)」(右下)樹木などに絡みついて生息する貯水葉も、この部屋に合わせて購入したという。「湿気に弱いので、常に風を当てて換気しています。手間がかかる分可愛いんですよね」

心のゆとりがもたらした
新たなる自分時間

お気に入りのものに囲まれて、充実した日々を送るEさん。部屋の至る所に置かれている植物と同じくらい、絵画も好きだという。

「デスクの横に飾っているのは、武田鉄平さんの絵。一見すると立体的に見えるんですけど、近くで見ると実は平面なんです。一度立体的に描いて、その絵を再度平面的に描くっていう独特な描き方が印象的で。この人の絵を見ていると時間を忘れるんです。この絵とは対象的なんですけど、同じくらい好きなのがノーマン・ロックウェル。何気ない日常を描いているんですけど、優しさに溢れているんですよね」

まったくタッチの違った絵ではあるが、不思議とこの部屋にマッチする。フローリングで洋の雰囲気を醸しながらも、要所要所に和の趣を取り入れる「Wasabi」だからこそ、和らぎを与えてほどよく馴染ませるのかもしれない。

「この部屋に来てから趣味が増えた気がします。料理もその1つ。仕事の半分は在宅なので、家で仕事をするときは自炊をしてます。土鍋でご飯を炊いたりもしてるんですよ」



「カレーやシチューも作るんですけど、一度では食べきれないんですよね。だから食べきれない分は冷凍して作り置き。ご飯も余った分はラップに包んで冷凍しています。食べたいときにサッと食べられるのがいいんですよ」

初めての一人暮らし、一つひとつの動作すべてが新鮮に映る。加えて、この部屋で行うことだからこそ、特別感が生まれるのだ。

「部屋にいることが心地いいので家にいることが多いんですけど、休みの日は外出することも結構あって。会社の人から『やらないの?』って言われたことがきっかけではじめたゴルフは、スクールに週1で通うくらいハマったんですよ。昨年は念願の100を切ったので、今年は100をキープできるようにしたいなと思ってます」

家でも外でも自分時間を全力で楽しむ。Eさんにとっては、楽しむことこそ心を整える大事なアクションなのだ。

(左)ガラス引き戸の上には収納スペースが。「ここには好きな本や読みかけの本を並べています。まだスペースがあるので、ここを充実させたいです」(右)コロナの時期に、シェアハウスの仲間と遊んでいたというホームカジノセット。「みんなで遊ぶと盛り上がるんです。これはあくまでもゲームとして楽しむものなので、悪いことはしてないですよ(笑)。相手の裏を読んでゲームを進めるので白熱するんです」

視野を広げて、
日本から世界へ

日々の暮らしを満喫しつつも、さらに上を目指しているというEさん。メーカーで経営企画として仕事に励みながら、その先を見据えているという。

「今の仕事に就いて5年。会社のビジョンや計画を立てたりと大変ではあるけど、面白さを実感してきました。ただ、取引先の相手が海外の方ってことも多くて、英語の大切さを痛感して。今年は英語を学んで力をつけたいですね」

時間ができたときには英語の勉強をしているという。未来を見据えて仕事を進めているEさんのことだ、さらなる展望があるのではないだろうか?



「海外に支店があるので、できればそこで働いてみたいって想いがあります。海外支店は、アメリカ・ヨーロッパ・東アジアと幅広いんですけど、できれば英語圏でやってみたい。赴任となったら2~4年は帰ってこられないけど、自分を試してみたいんです。だからこそ、日本でしっかり英語の基礎を学んでベースを作っておきたいんですよね」

会社のビジョンだけじゃなく、自分のビジョンもしっかり描いているEさん。たとえ困難な道だとしても、真っすぐ進んでいくのだろう。

陽あたりの良いこの部屋のように、いつだって向かうは光の射す方へ。

(左)棚の一部には、カメラや財布、香水や眼鏡のコレクションが。「シンプルが好きなので、気に入ったものをいくつか並べています」(右)在宅での勤務もあるというEさんのデスクには、彩りを添えるように花が飾られている。仕事の合間にふっと見ると、きっと癒されるに違いない。

Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata