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File No.15BOX I・Eさん work: 医療系企画

部屋中の真ん中に「箱」を置く。 オープンだけどエリアごとに仕切ることもできる、 「回廊」のような不思議な空間。

キッチンやバスルームなどの水周りを、部屋の真ん中に設置した「BOX」の中にインするという、大胆な発想。まったく新しいコンセプトで作られたこの部屋は、空室になるその日を心待ちにしている「BOXファン」がもともととても多い、大人気の物件だった。

つねづね「普通ではない」ちょっとハイセンスな部屋に暮らしたいと考え、ずっと物件探しをしていたIさん。リノベーションとREISMの存在は、TVで見てもとから知っていたという。そんなある日、心待ちにしていた「BOX」部屋が空いたと知り、即決したと言う。つくづく、部屋選びにおいて出会いのタイミングと運はとても大事なのだ。

「以前住んでいた部屋はいちおうデザイナーズマンションでしたけど、部屋自体は四角四面の普通の形だし、あまり広くなかったので特別感はなかったです。好きな家具を置こうにもスペース的に厳しくてたいした工夫もできず、キッチンも狭い。ほんとうにただ居るだけの部屋で生活自体も普通のものでした。」

ところが、「BOX」へ越してきてかたというもの、その生活水準が驚くほど上がったのだ。

というのも、この部屋はワンルームながら、BOXがあることで空間の区切りが生まれ、まるで3LDKに暮らしているような感覚なのだ。荷物を仕舞える場所、趣味に没頭する場所、リラックスして眠れる場所。BOXをぐるりと囲む回廊のような空間は、それらすべてに対応してくれる。空間のメリハリは、生活スタイルを理想のものに昇華してくれた。

「解放感」という言葉がぴったりな素晴らしい毎日が、Iさんを待っていたのだった。

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BOXの効果で、ここは通常の部屋より壁面が断然多い。好きなものを思うままに飾れば、完全プライベートギャラリーのできあがり。

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奥の部屋からメインダイニングへ。飛び石のような足場をわたり、回廊をぐるりと移動する。まるで秘密基地さながらで、生活しているだけで心が躍る。


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好奇心と美意識が高まっていく部屋なら、 自分自身だけでなく、人との絆も磨くことができる。

「仕事以外、ほとんどの時間をこの部屋で過ごすようになりました。」

時には美術館めぐりやショッピングなども楽しむが、ほとんどの休日はこの部屋で過ごすことが多くなったというIさん。

厳密に区切りがあるわけではないのに、ちょっとした「用途別」感を作ってくれるBOXを中心とした回廊状の空間。気分を変えたり、日々のいろいろな作業をする役割を担い、あらゆる生活シーンを上手に包み込み、フォローしてくれる。だからこそ、一人で過ごす時間がこの上なく楽しい。ましてや気の置けないたくさん仲間を呼べば、さらに楽しいひとときがやってくる。

「この部屋に来てから、キッチンも広くなり今まではあまりやらなかった料理がとても楽しくなって友達を呼ぶ機会が増えました。キッチンやバスルームなどの水周りはBOXの中だから、あまり見せたくない生活感のある場所も隠してくれる。まさに「区切り」が助けてくれるんです。」

かつてファッション業界に身を置いていたIさんは、インテリアや身に着けるものにも格別のこだわりを持っている。長年愛用している真鍮ハンガーラックは、美大生の卒業制作作品を買い取ったもの。このハンガーを中心に、部屋のインテリアを考えた。

自身のセンスの命ずるままにモノを置き、身に着け、暮らす。そうしながら磨かれていく美意識は、この部屋に訪れる人たちをも魅了する。

新しいモノを求める心を持つ住人がその部屋を芯から楽しむから、自然に人も集まる。それはまるでコアな隠れ家ギャラリーのような魅力。部屋と住人が織りなす最上級のコラボなのだ。

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BOXがもたらしてくれる、誰にも邪魔されず、集中して好きなことに没頭できるいくつもの場所。見える景色が違えば、インスピレーションも無限に沸き出てくる。

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心が落ち着く空間には、必ず日常を見守ってくれる相棒のようなアイテムがあるものだ。 空間に溶け込むスタイリッシュな照明も使い慣れた楽器も、その役割にふさわしい。


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すべての「思い」が完結する。この部屋は、 人生にとってかけがえのない存在となった。

「この部屋では、くつろぐのが大前提だけど、たまには集中して仕事もする。だけどその切り替えがうまくできるから、ここはワンルームの域を超えたすべての『思い』を完結できる空間だと思っています。」

音楽、ファッション、アート、仕事。趣味と仕事をまるごと楽しめ、しかも居る場所を変えればその気分までチェンジできる「BOX」の部屋。

受け手の感性しだいで、どの使い方は無限にあるのだろう。Iさんは、その使い方を一人だけで存分に広げ、空間と時間の余裕をうらやましいほどに謳歌している。日々、仕事である医療系のコンサルタント業務を忙しくこなし、部屋に帰れば「一個人」となり、暮らしながら多彩な趣味を楽しむ。この部屋だからこそ実現した理想の毎日なのではないだろうか。

ところで、美大生の卒制をはじめ、さまざまな工夫が凝らされたこの部屋には、じつはカーテンというものが無い。大きな窓面がたくさんあるにも関わらず。カーテンの代わりには、衣装を入れるガーメントケースで代用。これで広い窓でもしっかりと目隠しができ、しかも半透明だから光も通す。

そんな大胆な発想を取り入れることも、思いを完結するひとつの要因なのだろう。時にはギャラリーのように、時には服のセレクトショップのように、カフェのように…住人の遊び心に共鳴し、部屋は、今日もその大きな包容力で Iさんのすべての『思い』を受け止めている。部屋も、立派に人生の良きパートナーとなりうるのだ。

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窓辺に服を掛ける。ただそれだけで、ギャラリーテイスト。「暮らす」と「飾る」の両立は、心の自由な開放へとつながっていた。

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帰宅するたび、導線の良さに気づかされる。ストールなどを置いてもそのまま絵になるカウンターは、身に着け、はずすという動作をとてもスマートにしてくれる。

Text: Yuzuka Matsumoto Photograph: Yoshinori Tonari