File No.74Loco S.Mさん work:動画クリエイター

日常の1秒1秒を慈しむ。
不思議な縁が紡いだ愛おしい暮らし。

一期一会 [いちごいちえ]
一生に一度の機会。生涯に一度限りであること。すべての出会いにおいてその時しかない出会いを大事にすることを意味する。

Mさんが住むこの部屋は、まさにこの一期一会の縁がきっかけだった。

「実は前に住んでいた方と知り合いで。DIYの手伝いをしながらYouTubeの撮影をする企画でこの部屋に来たことがあったんです。それっきり来ることはなかったんですけど、まさかその部屋に自分が住むことになるとは思ってもみませんでした(笑)」

仕事を辞めるタイミングで引っ越しを考えていたMさん。REISMの物件をいくつか内見したのちに、この部屋を紹介されたという。

「当初はレンガが印象的な「Brick」が良かったんですけど、YouTubeの撮影をするときに三脚を立てたり機材を置くにはちょっと狭いなって感じて。それを担当の方に伝えたらこの部屋を紹介してくれたんです。部屋を見てびっくりしました。あ、この部屋来たことある!って(笑)。撮影で訪れた部屋がREISMの物件だということを、そこで初めて知りました。話を聞くと、その方が退去されるってことだったので、友だち紹介というかたちでこの部屋を明け渡してもらったんです」

運命的な再会を果たしたその部屋は、無垢の肌ざわりと赤みが特徴的な南洋材のフローリングに、紙や麻が織り込まれた天然素材クロスにシーリングファンが回る、オールドハワイアンスタイルを取り入れた「Loco」。一度訪れたこともあり、部屋のイメージはできていたそうだが、「住みたい」と思ったきっかけは他にもあったのだとか。

「決め手になったのはキッチン周りの導線が良かったところ。以前住んでいた家は、作ったものを何度もリビングに運ばなければいけなかったんです。DIYしてお洒落に仕上げたキッチンだったんですけど、運ぶ動作がわずらわしく自炊をしなくなってしまって。料理を作ること自体は好きなのに、この動作があることで自炊をしなくなるんだって気づいたんです。だから次に住む部屋は、料理を運ぶ手間が解消されるカウンターキッチンがあるところにしようって。この部屋のキッチンは対面で使えるカウンタータイプなので、作った料理をそのままカウンターに置いて食べられるのが良かったんです」



この部屋に越してきてからは、2日に1回のペースで料理を作っているという。自身のYouTubeチャンネル マツログ(@matsulog)でも、得意の料理を披露している。料理好きというだけあって、手際がいい。見ると、調理器具をはじめ料理を盛る器、カトラリーやグラスにいたるまで、どれもお洒落でこの部屋に合っている。

「暮らし系YouTuberの奥平ベース(@OKUDAIRABASE)さんが好きなんですよ。生活スタイルだったり暮らしが本当に素敵で参考になるんです。その方が監修している『ki duki』の食器やカトラリーは結構集めていて。お洒落っていうのもあるんですけど、暮らしの中で気付いたものをカタチにしているので、音や香り、風合いを感じられるんですよ。何より使いやすさにこだわっているので、料理をすること自体を楽しめるんです」

この部屋の住人となって、丁寧に暮らすことの意味を再認識したMさん。人や部屋だけじゃなく、生活を彩る一つひとつも一期一会に満ちていた。 

(左)参考にしているという奥平ベースさん監修の食器やカトラリー。「手前は軽量スプーン。長さがあって色んな用途に使えるんです。茶色のお皿は陶器でできていて、フライパンとして火にかけることもできるんですよ」 (右上)キッチンの周りにはこだわりの調理器具がセンス良く並んでいる。備え付けの棚には、パスタや小麦粉など生活必需品を詰めた保存容器がずらり。「日常で使うものも、見せる収納として部屋の一部にしています」 (右下)「メジャーカップとグラスも『ki duki』のもの。グラスは上下どちらも使えるようになっていて、飲み物をゆっくり注ぐと音が反響して澄んだ音色になるんです。この音を聞いてから飲むと美味しさが増すんですよ」

実用と癒しを取り入れた上質ライフ

「時間にゆとりを持つ暮らし」
日常の暮らしや料理、 DIY、お気に入りのモノなどを紹介している、MさんのYouTubeチャンネルのコンセプトだ。この部屋でのルーティーンやルームツアーの様子を見ると、こだわりに溢れていて暮らしを満喫しているのがわかる。

「実は、引っ越しを機に家具や家電を新調したんです。自分のイメージした部屋にしたくて。デザインや大きさ、使用感…全ての条件をクリアするものを探すのに1ヵ月くらいかかったんです。だから、決まるまでの間は何もない状態で過ごしていました(笑)。この部屋は、こだわりが詰まった“集大成”ですね」

確かに、どこを切り取っても絵になる。木材を生かした温かみのある空間に、調和のとれた家具たち。まとまりよく、でも決してやり過ぎていない。バランスの良い部屋に仕上げられたのはMさんのセンスの賜物だろう。

「ナチュラルな部屋のイメージに合うように、家具やファブリックは、ブラウン・ベージュ・グレーの3色で統一して、差し色に黒を使おうと決めていました。家具で一番こだわったのは仕事用のデスクですね。天板をKANADEMONOでオーダーして、自分でDIYしたんです。杉の無垢材をサイズオーダーして取り寄せて、脚は以前使っていたデスクについていたものを再利用しました。この大きさのデスクはなかなかないので、自分が納得するカタチにしたかったんです」



「こんな風に聞くとこだわり強めって思いますよね。僕のYouTubeを見た女友だちからも、こだわり強そうで絶対結婚できないよねって言われたんです(笑)。実際はそんな完璧主義じゃないんですよ。こだわりはもちろんあるんですけど、作る理由だったり選ぶ理由っていうのがあって、特に家電は選ぶ理由が明確で。例えば、何か集中しているときに洗濯機がピーピー鳴って干さなきゃいけないってなると、邪魔しないでほしいって思うんです。だったら、乾燥まで全部やってくれるものを選ぼうと。ベッドで横たわっていてそのまま眠ろうとしたときに、照明のスイッチをいちいち押しに行くのも嫌なんです。それなら音声操作できる仕様に変えようって。すごい面倒くさがりだから、いかに快適に暮らせるかを考えて選ぶことが多いんです」

日常の動作は極力シンプルに。その中で生まれるゆとりの時間は最大限に楽しむ。実用と癒しを取り入れた暮らしは、生活自体を上質なものに格上げしてくれる。そんな気づきをMさんは教えてくれた。



(上)「この3人掛けのソファ はRe:CENOで買いました。Agraって名前がついているんですけど、その名の通りあぐらをかいてもゆったり座れるんですよ。この場所でまったりしながら映画を観るのが最高なんです」 (左下) 映画館にいるような臨場感を味わえるというXGIMIの4Kプロジェクター。「昼間でも映像がクリアに見えるのが良いんですよね。スタンドをつけて角度調整できるようにしています」 (右下)「部屋の照明はスイッチボットをつけて、ハブを接続して音声で操作できるようにしています。これをつけてから無駄な動作が減って快適さが増しました。スイッチボットなしの生活にはもう戻れないですね(笑)」

未来を切り開く鍵は
“まぁ何とかなる”

前職は誰もが知る大手家電メーカーでシステムエンジニアと人事採用をしていたというMさん。引っ越しを機に、動画クリエイターとしてフリーランスの道を歩み始めた。まったく違う分野に飛び込むことに不安はなかったのだろうか。

「“ときめくことがしたい!”と思って仕事を辞めているんで、結構楽観的に考えていました。まぁ何とかなるだろうって(笑)。実際、副業としてやっていた動画編集の仕事が軌道に乗ってきたところではあったので、それを生かした仕事ができたらとは思っていました。例えば、動画編集の技術をスクールとして教えられたら面白いなって。でも自分だけだと集客は見込めない…と考えていたんです。そんな時に、たまたま知り合った第一線で活躍されているYouTuberの方が、動画編集ができてマーケティングできる人を募集してて。それを見て、あ、自分ならできるかも!って(笑)。その方と仕事をすることになって、スクールの話をしたらぜひやろうってことになり、インフルエンサーとして活躍されている方を入れて3人で動画編集が学べるクリエイタージャパンを立ち上げたんです」

楽しみながら仕事をしたいというMさんの想いと人柄に惹かれ、同じ志を持つ仲間が集まったのだろう。今は動画編集だけでなく、趣味でしていたカメラの技術を生かし、講師としても活躍されているのだとか。

「クリエイタージャパンの方は、今は人数も増えて業務委託として携わっています。個人で編集業務を請け負うことも増えましたね。カメラ講師の仕事も、有難いことに色々と声をかけていただくことも多くて。毎日楽しみながら仕事をしています。好きではじめた仕事なので続けていきたいっていう思いはあるんですけど、いずれは他の事業もやってみたいんです」

時代のトレンドをいち早くキャッチし、次へと繋げる先見の明があるMさんの次の展望とは一体何なのだろう?

「メンズ美容で何かできたらいいなって思いはあります。今の若い子って美容意識高くてスキンケアはもちろんメイクをするのも当たり前になってきていますよね。高校生から大学生くらいが多いと思うんですけど、年代的に高い商品は手が出せない。だからその世代が自分でお金を稼ぐようになったときに、欲しくなるようなプロダクトを作ってみたいです」

今だけでなく未来を見据えているMさん。一期一会の出会いを大事にし、その縁をきっと新たなものへと紡いでいくのだろう。そのときもきっと“まぁ何とかなるだろう”と気負わずに挑むに違いない。



(上) 「木製のベッドはRe:CENOで、上にかけているブランケットはKlippanのもの。どちらもシンプルではあるんですけど、素材の温かみを感じられてこの部屋に合うと思って買いました」 (左下)エスニックなつくりが印象的なラタン照明は、バリ島雑貨のお店で購入したそう。ラタンの隙間からもれる光が 幻想的な陰影を生み出し、部屋のアクセントになっている。 (右下)美容のプロダクトを作ってみたいというだけあって、スキンケアも抜かりなし。「基礎化粧品は色々試しますね。Aesopの化粧水、乳液、クリームの他にもIPSAの化粧水や乳液を使っています」

Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata