File No.069Organic Y.Dさん work:公認会計士

自分の軸をぶらさない、心地よさを優先する生き方

閑静な高級住宅街の白金エリアはワンランク上の東京暮らしを叶えるにはもってこいの土地だ。Dさんが住むOrganicはコンパクトながらスマートな印象でまさに都心での上質さを生活空間からも感じられる。グレーのフロアタイルが心地いいこの部屋で、話を聞いてみるとDさんの人生観を垣間見ることができた。

「REISMのHPを見たときに、直感的にOrganicのこの部屋がいい!と思ったんです。僕がいいと思ったものは多くの人もいいと思うと感じたのですぐに電話してウェイティング1番で申し込みました」



「はだしで生活したい。持ち歩くものはケータイと財布くらいで、いつでも海に飛び込めるくらいの身軽なスタイルでいたいのが本音です」

ここに惹かれた一番の理由はタイル床の醸し出すホテルのような空気感。HPで見てすぐに連絡し、内見するとその日に入居を決めたという。

「もともと窓にブラインドがついてたり玄関の棚がついてたりして、部屋の雰囲気が出来上がってたので自分がどう住みたいかイメージしやすかったんですよね。何よりシンプルを極めたミニマリストに近い、物を少なめにホテル的に暮らしたいという気持ちがあって。あんまりものを持ちたくないから、結局増やしても人間関係も含めて、ふと整理したくなる欲が出てきてしまうんです。常にいらないものはないかと考えていますね。居心地の良さを求めていくと、いらないものは捨てていきたい。半年ほどアドレスホッパーをしてたときはリュックひとつで動いてたので、その名残もあるかもしれないです。インテリアへのこだわりはそれほどなく、身軽にミニマルに生きたいという姿勢の表れです」

こだわりがないと語りながらも全体的に調和した空間からは、Dさんの潜在的ともいえる好きなものへの意識が伺える。

「意識せずにもの選びをしているので潜在的に好きなものが確立してるのかもしれないです。何かを買うときは値段を見ないで、気に入ったものは買うとか。特に古着を買うのは昔から好きで、畳まない派なのでハンガーのバーがあるのは便利。洋服はどうしてもミニマルに過ごしたくても増えていっちゃいますよね。服を楽しみたいという気持ちは昔からあるのですが、究極2着でも生活できるしそれでいいと思ったりするんですよね」

空間を効率的に使いながら、よく使うものは手に取りやすいところへ。「日用品がシックな黒で揃っててシンプルでいい」とのことで調理器具やマスク入れはヤマザキ実業のもの。

仕事は基本的にリモートワーク。休みの日や仕事以外の時間は基本的に居心地の良いこの部屋にいてYouTubeやNetflixを観たり、友人を招いてシーシャを楽しんだり。趣味は筋トレとサウナだ。

「サウナは5年前から通っていて、流行に乗った訳じゃないんですよ(笑)。僕がふと行動することのきっかけはサウナに入ってる時に思いつくんです。例えば、アドレスホッパーをやろうと思い立ったら翌日申し込み。そういう意味でもサウナに入る時間はとても大事にしています。もちろんただぼーっとしてるだけのことの方が多いですが、サウナで思いついたことは走って脱衣所に行ってiPhoneにメモします」



削ぎ落とされた後に残る自分が大切にしたいもの

一人暮らし歴は大学卒業の時から始まり、今年で5年目。何度か引っ越しをしてきたとのことでいろんなところに住んできたというがその真意を聞いてみると「思い立ったら即行動」という哲学があった。その中でも一番大きな決断だったのは会計士資格を受験すると決めたことだ。

「僕が通っていた大学は自分の中であまり納得できない学校で、わだかまりを抱えながら大学三年のとき就職活動していると、行きたい会社に行けないと感じたんです。そんな時、アルバイト先の先輩に『簿記をとったら?』とアドバイスされて。就職で不利だと自分が感じるならそれを補填するために、せめて資格を取ろうと思って簿記の勉強を始めると、のめり込んでしまいました。そこで会計士という仕事を知って、会計士資格の予備校に通うことを決めたんですよね。2年かけて、卒業する年に受かりました。借り方、貸し方という会計と監査の仕事内容が僕にはとても魅力的に感じた。数字と財務諸表を通して会社の全体像を知ることができるのが楽しいんです。他の勉強は今まで本当にできなくて、大学受験もうまくいかなかった。でも、会計の勉強は僕には合っていて、今は自分が勝負できる専門性を身につけて好きな仕事で働けることが幸せです」

Dさんは「大学受験は挫折」と語りながら、一方で確かにそれがバネになってきたのだという。

「挫折が深いほど、跳ね返りが強いんだと思います。量が質を生むと信じて2年間は大晦日正月以外ほぼ休まず12時間予備校にいましたね。同級生は内定が決まってる時期だったので、不安になることもありましたが、取り返してやろうって思いながら奮闘してました」

血の滲む苦労を乗り越えて会計士の資格を取得し、大手監査法人に就職。職場に対しては満足度が高いとのことだが、この先のキャリアは計画性を持ちながらもあくまで自分の感じた気持ちを大切にしていきたいとのこと。

「監査や会計業界にこだわらず、そして縛られずに転職をしてみたいと思っています。将来的には税務業務で独立したいですが、直近では海外に行きたい。英語を話したいし、日本にいるだけで形成できる価値観や見えるものに限界があると考えているので、海外で英語の勉強含めいろんな人と会いたいです。同時に英語を話せたら仕事でも出来ることの幅が広がりますしね。僕は20代のうちに名乗りをあげ、30代で軍資金を作り、40代で勝負して50代で引き継ぐという孫正義の哲学に感化されています。20代の時に培った経験値や積み重ねた人間力の利息で30代を過ごしたいので、20代はアグレッシブに生きていきたいんです。ある程度骨組みとして計画は立てていきますが、あくまで余白を残したまま、気持ちの赴くままに生きることが大事。日々過ごしていく中で変わる心情を受け入れて、大事にしていきたいと思う。そうじゃないと生きる意味ないから」

靴みがきが好きで週に一回はレザーシューズを磨いているそう。「社会人2年目に買ったチェルシーの靴は値段が高くてびっくりした記憶があり、思い入れがあります」。小銭は財布に入れず、ドロアラインに貯めて賽銭箱的にし、お参りするという習慣も。

本を読んでインプットすることも大事にしてきたが、同時にアウトプットとして実際に行動に移すことそのものを大事にしているDさん。決められたレールの上を歩きたくないという言葉は、常日頃から考えられている独自の生き方や価値観に裏打ちされているものだ。

「人生は実験的であれ、というのが僕の座右の銘。生きることは実験だなと思うんです。だから、どんどん実験していきたい。『これをやったら自分はどうなるかな?』と考えて生きてみると面白い。結果よりも挑戦することそのものが大事で、そうやって生きるの気持ちが楽になるんです。将来は世界一異端なカリスマ公認会計士になりたい。会計士って真面目でお堅いイメージがあると思うんですが、僕はその常識に囚われたくないから異端でありたいし、スキルを伴っているべきなのでカリスマでいようと思うんです。世間が正解とする姿や生きた方より人間力を加味した選択肢を選び続けたいですね」



Text: Rika Watanabe
Photograph: Hiroshi Yahata