File No.067Wasabi T.Kさん work:雑誌編集者

等身大であることを大切に、クリエイティブを映し出す暮らし

部屋に足を踏み入れると、目に飛び込んでくるのは白壁にかけられた大胆かつカラフルなアート作品。聞くと、作品はすべてこの部屋に住むKさんが制作したものだというから驚きだ。他にもワンルームを取り囲む花や植物。杉板のフローリングと相まって草木の柔らかな雰囲気を感じさせる。

「僕は料理も好きなので、カウンターキッチンがあるkitchenシリーズもいいなと思っていました。ですが、他の部屋はレイアウトに制限がある気がして。下町エリアの中でいくつかの部屋を内見したときに、ここは自分の色に染めやすいなと感じたんです。木の質感や植物も好きなので、好みと理想にぴったりだったんですよね」

ひと目見てわかる、Kさんが好きな絵や画材、植物、木、花に埋め尽くされたオリジナリティを存分に活かした空間。自分色に染まった部屋では、創作というキーワードを軸にクリエイティブな時間が流れている。

「部屋に絵を飾りたいと思ったので雰囲気に合うものを書いたんです。白壁だと絵が映えますね」

真ん中の絵は五感を表現し目や鼻などのモチーフと、喜怒哀楽を色でみせている。フォルナセッティが好きで、自身の絵のラインにも活かされているという。iPadで絵を描きたい場所の写真を撮って下書きし、色合いを決めながらキャンバスにポスカやアクリル絵の具を使って描いていく。

「絵は大学生の頃から本格的に描き始めた」とのことで、きっかけは映画だった。1日2本などのペースで見溜めた映画は友人におすすめを聞かれた際に、内容を忘れてしまっていることに気づき、ストーリーや作品を見て感じたことなどを覚えておくため、思うままに一枚の絵にとどめていったという。

「花や植物、動物の生命エネルギーを可視化するようなカラフルな色で表現した絵を描きたいと思っています。これまではあくまで趣味として書いてきましたが、最近はポップアップや、六本木のCommon cafe & music bar loungeでフラワーショップとコラボしてウィンドウアートを手がけました。カフェで出た廃棄のガラス瓶にアートを描いたり、アクリル絵の具で窓へペイントしたり。ここに引っ越してから、常連になることで浅草や蔵前のカフェや飲み屋さんで友人が増え、新しいコミュニティができました。そこから絵の仕事をいただくことも増えてきましたね」

また、あくまで絵の制作は自分のペースを大事にしながら行っているという。「追い詰められるとできないので自分がやりたいときにやる、というのを大事にしています。締め切りがあるものに行き詰まったら、隅田川へ行ってリフレッシュします」。自分にとっての心地いい暮らしを自分らしく叶えていく、そんなKさんの生き方が垣間見える。





好きなものを詰め込んだ。話を聞くと確かにそうした部屋づくりをしているのだが全体はまとまり、居心地の良い空間という印象も強く感じる。至る所に吊るされ、飾られたドライフラワーが柔らかな雰囲気を醸し出しWasabiシリーズ本来がもつ空気感を活かしながらアップデートされているようだ。

「インテリアのベースは床が木材ということもあって大きなものは木の素材で。家具は色が強めのものよりナチュラルなものを選んでいます。この部屋で気に入っている壁のライトを見たとき、上に何か置けるなと思ったんですよ。住みはじめて、花などを買うとどうしても枯れた枝が残る。それを乗せていってどんどん溜まっていった結果、ライトが枝の影を天井に作ってくれました」

家具は中央を広く開け壁沿いに配置した。配置は、ベッドを窓際に置くことから始め、入口から高く、低く、高くと並べたことで緩急を作り奥行きを演出するためにこだわったという。限られた空間をできるだけ広く見せかったのとテレビはあまり見ないため、インターネットに繋がったプロジェクターを設置している。



Kitchenシリーズへ入居も視野に入れていたというKさんは、この部屋に住んだことでさらに料理が好きになったという。料理も創作の一つとして捉えるのがKさんらしい。

「料理は以前からやっていましたが、ここにきてからよりやるようになりました。週に3-4回はしてますね。家でお酒を飲むことも多いので、友人が来たら手料理を振る舞う。得意餃子は水餃子です。どんなメニューも計量や分量は気にせずフィーリングで作るので、はかりや計量スプーンなどはこの家にないんです。僕は創作全般が好きなので料理も創作だと思って、色々な味の掛け合わせを想像して、新しい味を探求しています。」

「母方の実家が長野県にあって畑を持っているので、いつも野菜を送ってくれます。今回は夏野菜。昔から美味しい野菜を食べてきたから料理が好きなのかもしれないです」

お酒も自家製。行きつけのお店やバーでレシピを教えてもらうのだとか。左は八角と山椒、真ん中はりんごとレモン、右はローズマリーとジュニパーベリーをそれぞれジンに漬けている。



キャンバスのような部屋を起点に、
地域へコミットしクリエイティビティを発揮する

現在、雑誌の編集者として大手出版社に勤務しており、リモートワークの際は基本的に家での作業となる。お仕事に関して話を聞くとここにも創作というキーワードが。

「映画を一枚の絵に書き出したことから、一枚の紙という限られたスペースにさまざまな要素を編集して表現する魅力を感じました。同様のおもしろさを雑誌にも見出して学生のとき、webライターとして働きその後フリーランスとして活動したのちに編集者として今の会社に就職したんです。いろんな方に会って、お話を聞く仕事なのでその中で自分の価値観を高めつつ最終的に自分が作ったものを世の中に発信して行きたいと思うので、仕事で得たものが何かに繋がればいいなと思っています」

一方で仕事は仕事としてプライベートとは割り切って考えているとKさんは語る。「これからはプライベートでの制作をもっと拡大して頑張っていきたいですね。それを補強する形で編集力やエンタメ、動画やwebなどの力をつけていけるのは今の仕事のいいところですかね」



「僕は所謂普通の部屋が好きじゃないので、多くの部屋を内見しましたが惹かれる物件には出会えなかったんです。そんな中でREISMはHP見ているだけで楽しかった」と語るKさん。

下町風情あふれ、近く隅田川の側に居を構えることにしたのはREISMのバリエーション豊かな内装デザインに魅力を感じたことはもちろん、それ以上に浅草に魅了されていたからだ。この部屋に住む前、都心を転々としてさまざまな場所に住んでいたそう。すでに下町エリアで暮らすことを思い描いていた。

「もともと浅草や両国、蔵前という街が好きだったのでこのエリアに住みたいと思っていました。昔からお酒好きなのでよく遊びに来ていたんです。ホッピー通りや歴史ある街並みと人の賑やかさやコンパクトなエンターテイメント感がいいですよね。初めてこの部屋を内見したときも、隅田川に行ったら向かいの学校から吹奏楽部の音が聞こえたり、屋形船が通ったりする開放感が心地よかったのが印象的で」

浅草や両国は観光地、蔵前はクリエイターが多いという空気感の違う街がまとまったこのエリアで、Kさんは地域に根ざした暮らしをしている。浅草での暮らしをテーマに YouTubeコンテンツを発信しているのだとか。

「様々な方法で自分の考えを表現したい欲があったのでYouTubeはずっと興味がありました。素人的に何か発信するなら狭いコンセプトの方が見てもらえると思い、浅草紹介を始めました。一人で飲みに行ったり、お店の紹介をしたりするvlogがメインです。地域での体験を発信することを大切にしています。浅草エリアの人は飾らずに、自分らしく生きている人が多くて自分もそうやって等身大に生きたい。それが部屋にも現れているかもしれないですね」



Text: Yuzuka Matsumoto
Photograph: Hiroshi Yahata