今回の舞台は、トレンドに敏感な人たちに人気の街にある「Anti/アンチ」の部屋。
アンティークな洋館を意識した空間は、木の腰壁が目を引く、重厚さ漂うデザイン。
インパクトのある分厚いコンクリートの梁は斜めのフォルムがなんとも個性的。
温かく灯る乳白ガラスの照明がビンテージ感を増し、ムーディな空間を演出している。
壁ライトが灯るスペースにデスクを置けば、小さな書斎のように使える、心落ち着く一角ができる。
「壁の漆喰に、腰板や床の木材、そしてコンクリート。相反し、反転する素材を用いることで部屋のテーマである 『Anti』を表現しています。」
すべての素材がバランスよく配置され、相反するテイストながらも調和のとれた美しい世界観。
さらに、経年変化の使い込まれた味わいも楽しめるアンティークテイストな空間。
限られたスペースのなかに深くて広いテーマを秘めている。
何を隠そう、REISMのリノベーション物件にはSさんが手がけた部屋が多く存在する。
今回は、リノベーションのプロであるREISMスタッフが実際に自身で手掛けた物件住んでみたケースをご紹介。
さて、自分の作品に暮らした実感や住みこなし方は、どんな感じだろう?
「引っ越しをするにあたり、せっかくだからこのAntiに住みたいと思っていました。工事の管理やプランニングから間取りを考えたりと多岐にわたってこの部屋の設計・建築に携わっているので自分の子供のように感じていることもあって…。」
長年使い込まれたような木材を使うことで、「Antique/アンティーク」の要素もプラス。
ここに暮らす人が経年変化の味わいとノスタルジーを楽しみながら、時の流れとともに共存・成長できる空間となっている。
「二十一平米もないコンパクトな部屋なので、いかに広く見せるか?が腕の見せ所だったので、燃えました。」
基本として、インテリアの色味や素材はすべて同系で揃える。
背の高い家具は一切置かず、すべての家具を低めに統一。
高さを一直線にして合わせ、目線を上へと逃がし部屋を広く開放的に感じさせている。
さらに、ひとつの部屋の中でスペースごとに役割を持たせることで生活や心の変化をつけているというから驚き。
ワーキングデスクがある壁は「生/動」のサイド。
フレッシュな植物を置き、仕事や勉強などの「生きた活動」をするエリアとして構成。
ベッドやソファがある壁は「死/静」のサイド。
ドライフラワーを効果的に飾り、ぐっすりと眠ったり、ソファでリラックスしたり「静かに休む」エリアとして構成。
なるほど、参考になるスゴ技!
暮らし方に一工夫加えるだけで、毎日のルーティンさえも真新しく感じ、もっと楽しくなるのだということを教わることができた。
リノベーションのプロの手によって、これからも部屋はどんどん進化し育っていく。
経年変化と一緒に、もっとずっと暮らしやすい空間へ。
「マンションの廊下に面しているキッチン窓をエコカラットにして閉じてしまおうかと。さらに玄関の壁にもハメコミアートを入れて見た目を楽しくする予定。賃貸でも自由気ままに色々できるっていう裏技をこれからどんどん披露していきたいと思っています。」
また、調理などでキッチンの壁面が汚れたら、同じ品番の塗料を探して塗ればキレイに元通り…などなど、部屋作りのプロが住むと物件はこのように楽しくかつ正しく整えられるのか…、とただ感動。
キッチン下収納は、これまで使っていたテレビ台をバラしてラワン材ボックスを用いて作成したという。
「ついでに、テレビも捨てちゃいました。テレビつけっぱなしだと時間を取られるだけでなく、生活が死んでしまうような気がして…。」
全体的に躯体のコンクリートを生かした部屋をまるごとお洒落にするにはなかなか頭をひねらないといけない。
そこで建築学科卒の知識や技術を活かせるという。
天職ってこういうことか。
友達が遊びに来ると、全員とても良い反応をしてくれるのも嬉しい。
この部屋は会社にも近いし、とくに集中した時などはかえって部屋で取り組んだほうが効率も断然アガル。
したいこと、できることを次々と具現化できるこの部屋は、まさしく「成長する空間」。
ゆくゆくはリノベーション事業部として独立することも視野に入れているというSさん。
この部屋で夢を語る姿は、力強く輝いているように見えた。
Text: Yuzuka Matsumoto
Photograph: Yoshinori Tonari
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