ディープなこだわりを壁一面に。「Rough」の部屋は、その名の通り、ラフに自由に棚が構成でき、ペイントや壁打ち、DIYなんでもオーケーのカスタムウォールがコンセプトの、機能的かつ魅力的な空間だ。
「雑誌『POPEYE』の部屋特集を見ていたら、REISMの「Rough」が掲載されていたんです。それを見て『ここに住みたい!』と思ったのがこの部屋との出会いのキッカケでした。」
また、この部屋にはカスタムウォールの棚だけでなくハンガーラックもあり、これも大きな決め手になったと言う。仕事柄、清潔感を保ちつねに人目を意識しているため手持ちの服もできるだけ機能的に美しく収納したいという要望に、この部屋は見事に応えてくれる。服の収納だけでなく、インテリアや趣味の雑貨など、どこまでも自由に、どこまでも気ままに受け入れてくれる壁は、暖かみのある木調で威圧感もなく目にも肌にも心地が良い。
「この部屋は、すべてアメリカンテイストで揃えています。」と語るT.Sさん。
ブレのない確固たるコンセプトがあれば、その部屋の印象はとてもくっきりとした彩りを放ちはじめる。家具からインテリアに至るまで、とことんアメリカンにこだわった空間に身を置けば、気分はもう西海岸。部屋の演出にこだわることは、インスピレーションと五感がマックスになり、最高の心の運動へとつながるのだ。
「部屋に置くモノを選ぶ時の重要なポイントは、第一にルックス、第二に寸法です!そうすれば、長く使える愛用品に必ず出会えます。」
この部屋を構成する際、シンボルアイテムにしたのは、TV台とモノ入れを兼ねている横長のステンレス棚だった。引っ越す前から持っていたそうなのだが、この部屋に置いた瞬間から、驚くほど自然に空間に同化した。
「これ、もともとは飲食店で使われていた調理道具用の棚です。それをDJの人が中古で購入し、レコード入れ兼ターンテーブル台としてバリバリ使っていたらしいですよ。だってこれ、LPレコードのジャストサイズなんです。」
その後、DJからネット販売を介してT.Sさんの元へとやってきたこの棚。シンプルで機能的な造りに加え清潔感にもあふれ、抜群の実用性を誇り、スケール感といい木調壁との相性といい、まるであつらえたようにこの部屋にマッチしている。
T.Sさんが以前雑誌で見たアメリカの部屋特集。西海岸で暮らすとあるアメリカ人の部屋に、TV台として使われているステンレス棚の写真があった。それがとても良い感じだったので、自室のインテリアに取り入れてみたという。その空間を冷静にシミュレーションする力と独特で熱いセンスに、脱帽だ。
ビンテージ感が光るスチール棚は『ジャーナルスタンダードファニチャー』で購入。居住スペースを広く保つために、あえて奥行きの浅いタイプを選んだ。
そんなこだわりの家具をはじめ、この部屋にあるものはどれも、ルックスと寸法を熟考して選び抜いた大切なアイテムばかり。モノを大切に使い続けて行く、という素晴らしい理念を、T.Sさんと部屋がまるごと体現しているというわけだ。
「僕は物欲が暴走すると止まらない性分なので、今は厳選・熟考してモノを買い、努力してできるだけ買うモノの数を抑えています。そして、ここへ来てから衣服などはきちんとたたみ、きれいに収納するクセが自然とつきました。」
この部屋に住む事で、自身のライフスタイルがより美しく質の高いものになったというT.Sさん。半年ほど前ここへ越してきた際、招いた友達が口を揃えて言う「この部屋すごくお洒落!」の感嘆の声に自身の努力の結果が現れているようで、とても嬉しかった。
いろいろな人やショップのインスタグラムなどを見て、ファッションやインテリアを日々研究しているというT.Sさんの仕事は美容師。毎日、そのファッションやスタイル、在り方までも人の目にさらされているため、セルフプロデュース力はとても重要なのだ。そんな点でも、自身と部屋をファッショナブルに保つことはとてもプラスの働きになっている。
「でも、ファッション性は重視しつつ、あくまでも大テーマは『気兼ねなく遊べる空間』。だからこそ大好きで長く使えるモノだけを選び、好きな場所に置きたい。だって、世界にたったひとつの『僕だけの空間』ですから。」
柔軟だけど、適度で心地よい緊張感を。そんな理念こそが、自由自在な「Rough」の空間をさらに魅力的にする秘訣なのだろう。その心地良さはきっと、ここへ訪れたすべての人が感じられるはずだ。
Text: Yuzuka Matsumoto Photograph: Yoshinori Tonari
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