「賃貸物件の家賃は固定で、値上がりすることはない」と考えている人もいるだろう。しかし、残念ながら、家賃は変わらないわけではなく、値上げされることもある。
ここでは、家賃の値上げを告げられたときにすべきことと、借主側の選択肢をまとめた。値上げに慌てることがないよう、家賃の基本ルールと対処法を知っておこう。
家賃は、一定の条件にあてはまる場合に値上げすることができる。これは、借地借家法という法律にも明記されている。
この一定の条件とは、下記の3つの理由、あるいはそれらと同じような事情がある場合を指す。
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不動産を保有している人は、毎年、固定資産税という税金を納めなければならない。
固定資産税は、該当の不動産の価格をベースに、3年に1度見直しが行われる。見直しによって税額が上がった場合、納税義務者である大家の負担が大きくなることから、家賃が見直されるケースがある。
日本の物価が上昇し、これまで100円で買えていたものが150円出さないと買えなくなった場合、家賃も同じ金額のままというわけにはいかないだろう。そのため、大家は物価の変動に応じて、家賃を値上げすることができる。
家賃は、物件ごとに個別に設定されるものだが、地域ごとの相場も存在している。周辺の類似物件の家賃がどこも6万円台であるのに、1ヵ所だけ5万円台の物件があった場合、借主にとっては「掘り出し物」だが、貸主にとっては「6万円台でも入居者がつく物件を5万円台で貸している分、損をしている」ことになる。このような場合も、家賃の見直しが可能だ。
なお、これとは反対に、周辺の家賃相場よりも家賃が高ければ、借主側から家賃の減額を申し出てもいいだろう。
大家側から家賃の値上げを言い渡された場合、借主がとれる主な選択肢は4つある。急な値上げに慌てないよう、どのような選択肢があるか知っておこう。
最も無難な選択肢は、大家の言い分をそのままのんで値上げに応じ、その部屋に住み続ける方法だろう。波風が立たず、面倒もないため、値上げに納得できるのであれば、そのまま応じればいい。
値上げに納得できない場合は、拒否することもできる。家賃を値上げするには、大家と入居者、双方の合意が必要なため、大家側の一存で値上げを決めることはできない。
ただし、拒否する場合は、最初から拒否という姿勢を見せる必要がある。値上げを通知する書類が送られてきた際、「返送してください」と書かれた書類に署名して送り返してしまうと、「合意した」とみなされる可能性がある。
通知の内容をよく読み、納得できない場合や、返事を保留して検討したい場合は、安易に署名しないようにしよう。
値上げに納得がいかないが、拒否して大家と交渉するのも面倒という場合は、もっと条件の良い物件に引っ越す方法もある。引越し費用がかかるが、元々引越しを検討していた場合や、そのほうが穏やかに過ごせるという場合は検討してみよう。
家賃の値上げについて、条件つきで了承するという選択肢もある。例えば「当初3,000円の値上げと言われていたものを、2,000円に減額する」「値上げを了承する代わりに更新費用を半額にしてもらう」「エアコンを新しい物に交換してもらう」といったケースが該当する。
大家から家賃の値上げを告げられたときは、値上げの妥当性を確認した上で、その後どのように対応するか決めることになる。ここからは、具体的に何をすべきか見ていこう。
値上げを告げられたら、どうして値上げをするのか、理由を大家側に確認してみよう。このとき、客観的なデータにもとづく根拠を提示してもらうことが大切だ。
例えば、「税金が上がったから」と言われたら、固定資産税評価額が実際に上がっている証拠を示してもらおう。
次に、同じエリア内の類似物件の家賃相場を調べ、値上げが妥当か自分の目で確認しよう。賃貸物件サイトなどで、最寄り駅や広さ、築年数といった条件を絞り込めば、簡単に確認できる。
値上げの理由や周辺の相場を確認した上で、家賃の値上げに納得できない場合、大家側と交渉を行うことになる。このとき、「値上げを拒否する」のか「値上げを了承する代わりに条件を出す」のかによって、交渉の仕方が変わってくる。自分の目指すゴールを最初に決めておこう。
家賃の値上げを拒否したり、条件をつけたりする場合、話し合いを続けるうちに、家賃の支払日が来てしまう可能性がある。
このような場合でも、値上げに応じなかったことを理由に、住んでいる家を追い出されることはない。もちろん、大家側から「値上げに応じなければ、出て行ってもらうしかない」などと脅しをかけられた場合も同じで、出ていく必要はない。
ただし、交渉がうまくいかなかったとしても、値上げ前の家賃の支払いは継続しなければならない。元々の家賃の支払いを滞納すると、賃貸借契約を解除される可能性があるため、注意しよう。
なお、家賃の受け取りを大家側に拒否されるなど、交渉が泥沼化してしまった場合は、自治体の相談窓口や、裁判所の供託制度(家賃を預けることで「支払った」ということにできる制度)などを活用して、早期解決を目指そう。
家賃の値上げは、大家側が一方的に決められるものではない。入居者が合意することが値上げの条件になるため、納得できない場合は無理に合意する必要はない。
とはいえ、大家側と争いになってしまうと、部屋を借り続けることがストレスになってしまう可能性もある。強固に拒否の姿勢を見せるのではなく、理由を聞いたり、希望の条件を伝えたりしながら、双方が納得できる妥協点を見つけよう。
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