ふるさと納税にはデメリットもある?損をしないために注意したいこと

ふるさと納税は、少ない自己負担で地方を応援できる制度だ。名産品などの返礼品が受け取れるのも、大きな魅力といえるだろう。
ただし、ふるさと納税にもデメリットがある。「誰でも簡単に、格安で各地の名産品を手に入れられる」と思っていると、思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれない。ふるさと納税で損をしないように、知っておきたい注意点を5つ紹介しよう。

ふるさと納税のメリットは?節税になるというのは本当?

注意点1 節税になるわけではない

ふるさと納税は、節税対策のひとつだと思っている人もいるかもしれない。しかし、ふるさと納税をしても、納税に必要なお金の総額が減るわけではないことに注意が必要だ。
ふるさと納税は、実際には地方自治体に対する寄付制度で、寄付した金額のうち、自己負担分の2,000円を超えた金額が所得税の還付金として戻ってくるか、住民税から控除される(上限額あり)。手元に残るお金が増えるわけではないのだ。

<ふるさと納税の利用例>
ある会社員が、3万円のふるさと納税をした場合(この会社員の上限額は5万円とする)

上記の会社員は、ふるさと納税をした時点で3万円を支払うことになる。その後、確定申告をするか、ワンストップ特例制度を利用することで、自己負担分2,000円を除いた2万8,000円が還付、または翌年の住民税から控除される。

結果として、この人はふるさと納税のために、差し引き2,000円を寄付したことになる。税金が減って、手元に残るお金が増えるわけではない。ただし、返礼品として自己負担額2,000円以上の価値がある商品をもらえる可能性はあるだろう。

注意点2 控除できる金額には上限がある

ふるさと納税では、支払った金額のうち自己負担2,000円以外の金額が、所得税や住民税から控除される。ただし、控除できる金額には上限があるため、高額なふるさと納税を行うと、一部が還付や控除の対象外になる可能性がある。

総務省のふるさと納税ポータルサイトにある「ふるさと納税のしくみ」のページで、給与収入別のふるさと納税の目安上限額を紹介している。ここでは、独身の場合の上限額の目安を一部紹介しよう。

■独身の人がふるさと納税をする場合の上限額の目安

ふるさと納税を行う本人の給与収入 ふるさと納税の上限額目安
300万円 2万8,000円
350万円 3万4,000円
400万円 4万2,000円
450万円 5万2,000円
500万円 6万1,000円
550万円 6万9,000円
600万円 7万7,000円
650万円 9万7,000円
700万円 10万8,000円

実際の目安額は、それぞれの人の状況によって異なるが、上記を目安に年間のふるさと納税額を検討しよう。上限額を超えた分は全額自己負担になるため、上限目安よりも少なめの金額でふるさと納税をするのがおすすめだ。

なお、ふるさと納税の上限は1月1日から12月31日までの1年間で判定される。年が変われば上限はリセットされるため、あらためてふるさと納税を行える。

注意点3 還付は翌年以降

ふるさと納税では、一度支払った金額が、後から所得税の還付、また住民税の控除として戻ってくる。しかし、所得税の還付も住民税の控除も、翌年以降である点に注意しよう。戻ってくるからといって多額のふるさと納税をしてしまうと、手元資金が不足する可能性もある。ふるさと納税はあくまでも余裕資金で行いたい。

<ふるさと納税の控除例>
2022年5月31日にふるさと納税をした場合

上記の場合、ふるさと納税で確定申告をできるのは2023年だ。確定申告の期間は例年2月16日から3月15日。仮に、2023年3月10日に確定申告をしたとすると、その後、数ヵ月経過後に指定した口座に還付金が振り込まれる。具体的な日数は状況によって変わるが、おおよその目安として、1~2ヵ月前後かかると思っておこう。
ただし、所得税の還付が受けられるのは、ふるさと納税の一部のみだ。残りは、翌年に納付する住民税から控除される。

住民税では、毎年6月から翌5月にかけて、前年の所得にかかる税金を納める。よって、上記の人は、2023年6月から2024年5月の給料から差し引かれる住民税額が、ふるさと納税をしない場合に比べて減少することになるだろう。
このパターンでは、2022年5月にふるさと納税のための寄付をしているが、実際にその金額が戻るのは、2023年になってからだ。しかも、会社員の場合、住民税は毎月の給与から天引きされるため、住民税については1年かけて少しずつメリットを得る形となる。

「どうせ戻ってくるから」とふるさと納税にまとまったお金を使ってしまい、その後の支払いに困ることがないように気をつけよう。
ふるさと納税は、1年のうちいつ行っても良いため、ボーナスが出たタイミングや、まとまった収入の予定があるときなどに検討するのがおすすめだ。

注意点4 ワンストップ特例制度は全額住民税から控除

会社員がふるさと納税をする場合、年間のふるさと納税先が5ヵ所以内ならワンストップ特例制度が使える。この制度を使うと、確定申告をする必要がなくなるため、気軽にふるさと納税を活用できるだろう。

ただし、ワンストップ特例制度では、所得税からの還付が受けられない。自己負担以外の全額が、住民税からの控除となる。現金として振り込まれるわけではないため「ふるさと納税でお金が戻って来た」という実感を抱きにくい。

「ふるさと納税が得」といわれるのは、少ない自己負担額で返礼品をもらえたり、地方を応援したりできるからだ。しかし、戻って来た実感がないまま普段の生活費の支出に使ってしまうと、「ただ出費が増えただけ」ということにもなりかねない。
ふるさと納税によって減った住民税分を毎月貯金して、次の年のふるさと納税に利用するといった工夫をしよう。

注意点5 確定申告とワンストップ特例制度は併用できない

ワンストップ特例制度は、確定申告と併用することができない。会社員で、ふるさと納税先が5ヵ所以内だったとしても、何らかの理由で確定申告をする場合は、ふるさと納税についても確定申告での申告が必要だ。
会社員が確定申告をしなければならない主な理由には、下記のようなものがある。

<会社員が確定申告をしなければならない主な理由>
・医療費控除など、確定申告でしか申告できない控除を利用したい
・20万円を超える副業所得がある
・年末調整で申告し忘れたことがある
・年収が2,000万円を超える
・その年に住宅ローンを組んで、住宅ローン控除の申告をする

何らかの理由で確定申告をする場合は、ワンストップ特例制度の申請をしていたとしても確定申告で申告を行おう。

ふるさと納税はデメリットを踏まえた上で活用しよう

ふるさと納税は、返礼品をお得に手に入れられる魅力的な制度だが、デメリットもある。しかし、「上限額に気をつける」「どのように還付や控除が行われるのかを理解した上で行う」といった対処をとれば、大きな問題は起こらないだろう。
地元を応援できる、その土地の特産物を返礼品としてお得に入手できるなど、ふるさと納税のメリットは多くある。注意すべき点を踏まえて、ふるさと納税を賢く活用しよう。