会社員の多くは、年末調整で所得税が確定する。その際に利用できる控除制度があっても、申告しないと適用されない。会社員でも利用できる控除やその申告方法を紹介する。
所得税や住民税は1年間の所得合計額に対してかかる税金だ。特に所得税は所得合計額によって税率が変わってくる。所得控除とは、その所得合計額から一定額を差し引ける控除制度のことだ。利用すればその分、納税額が小さくなる、つまり節税できるが、基本的に自分で申告しないと適用されない。
そこで今回は、会社員でも利用しやすい所得控除を7つ紹介する。利用できる控除を見落とすことがないよう気をつけよう。
なお、所得控除には年末調整で申告できるものと、確定申告でしか申告できないものの2種類がある。本記事では、年末調整で申告できるものを前半、確定申告でしか申告できないものを後半に記載するため、参考にしてほしい。
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生命保険料控除は、民間の生命保険や医療保険などに加入している人が利用できる控除だ。
「一般の生命保険」「介護保険」「年金保険」の3種類に分けられ、カテゴリーごとに支払った保険料に応じた控除が受けられる。ただし、保険料の全額が控除されるわけではない。実際の控除額は、契約内容や金額に応じて決まり、合計12万円が上限となっている。
秋頃になると、生命保険料控除を利用できる人のもとに、保険会社から「生命保険料控除証明書」が届く。年末調整の際に提出する「給与所得者の保険料控除申告書」に、必要事項を転記して申告しよう。なお、申告には生命保険料控除証明書の添付が必要だ。なくさないように気をつけたい。
小規模企業共済等掛金控除とは、小規模企業共済等に加入している人が利用できる所得控除だ。掛金は全額所得控除の対象になる。控除対象となる掛金は複数あるが、会社員であれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)が代表的なものだろう。
「iDeCoの掛金は全額所得控除の対象になって節税できる」という話を耳にしたことがある人も多いだろう。しかし、控除を利用するためには申告が必要だ。年末調整の際、「給与所得者の保険料控除申告書」の「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」欄に支払った掛金の額を記入しよう。
なお、申告書には企業型確定拠出年金に関する欄も設けられているが、こちらは自分で申告する必要はなく、勤務先が控除手続きを行う。
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社会保険料控除の「社会保険料」とは、年金保険料や健康保険料、雇用保険料などのことだ。会社員として給与をもらっている人は、毎月社会保険料を天引きされているだろう。この金額については、勤務先が把握して自動で控除処理をしてくれるため、申告の必要はない。
ただし、学生時代に免除を受けていた国民年金の追納を行った場合など、個人的に国民年金や健康保険などの社会保険料を支払った場合は申告が必要だ。また、扶養している親の健康保険料を納めたなど、家族の年金保険料や健康保険料について控除を受けることもできる。
該当する場合は「給与所得者の保険料控除申告書」に記入して勤務先に提出しよう。なお、国民年金保険料を追納した場合は、証明書を提出する必要がある。
基礎控除は、所得2,500万円以下の人が利用できる控除だ。この「所得」とは、給与所得だけでなく、雑所得や事業所得も含んだ合計額で判定される。
会社員の場合、給与所得は勤務先が把握している。しかし、副業をしている場合、そちらの所得について勤務先が判断することはできないだろう。そのため、年末調整の際「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」に、合計所得額の見積額を記載しなければならない。
給与所得の見積額とそれ以外の所得の合計額の見積額を記載する欄があるため、副業所得がある人は記入しておこう。
寄附金控除は、国や地方公共団体、認定NPO法人などに寄付をした際に、寄付金額から2,000円を控除した額が控除される制度だ。なお、ふるさと納税も寄附金控除の一部に該当するが、控除額の計算方法が通常の寄付金控除とは異なり、よりメリットが大きい制度となっている。
寄附金控除は、年末調整では申告することができないため、確定申告をして控除を受けよう。ただし、ふるさと納税に関しては、ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告をしないで適用を受けることができる。
なお、ワンストップ特例制度は、自治体とふるさと納税者のあいだで行う手続きのため、勤務先は関係ない。そのため、年末調整の際にふるさと納税関係の書類を提出する必要もないので、気をつけたい。
医療費控除は、年間に支払った医療費が10万円、または総所得金額の5%のどちらか低いほうを超えた際に利用できる。年末調整では申告ができないため、該当する場合は確定申告をする必要がある。
医療費控除では、病院に行くために利用した公共交通機関の交通費なども対象になる。含められる範囲を正しく把握して漏れなく計上しよう。
なお、年間1万2,000円を超える指定の医薬品をドラッグストアなどで購入した際に利用できる「セルフメディケーション税制」の利用も可能だ。
ただし、セルメディケーション税制の利用は、健康診断の受診や予防接種など、健康のための一定の取り組みを行っていることが条件だ。会社員の場合は、勤務先で健康診断等を受けていれば利用できる。
また、医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらかひとつしか使えない。両方の条件に該当する人は、より控除額が大きくなるほうを選んで申告しよう。
いずれにせよ、年間の医療費やドラッグストアでも買い物の履歴がわかる領収書類は、1年間保管しておくことをおすすめする。
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雑損控除は、盗難や災害などに遭った場合に利用できる所得控除だ。損害額から一定額を差し引いた残りの金額について控除を受けられる。これも、年末調整では利用できないため、確定申告で申告しよう。
さらに、年間の所得額の合計が1,000万円以下であれば「災害減免法による所得税の軽減免除」という制度も利用可能だ。どちらが得になるかはそれぞれの人の被害額や年収などによって異なるため、有利なほうを選択しよう。選び方がわからない場合や申告方法に迷ったときは、税務署窓口や確定申告時期に設置される申告会場で相談してみてほしい。
本記事で紹介した控除のほかにも、障害者控除やひとり親控除など、所得控除にはさまざまな種類がある。また、随時制度の見直しも行われているため、新しい控除を見落とさないようにしよう。
年末調整時に勤務先からもらえる案内をしっかり確認するとともに、最新の情報をチェックしておくことが大切だ。税金を納めすぎることがないよう、所得控除をしっかり活用していこう。
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