宮原亜矢
ロサンゼルス在住ライター。ラジオ、雑誌、テレビ、ウェブなど様々な媒体で洋楽(主にロック)を紹介。2000年代前半から毎年1−2回は欧米のフェスやコンサートに足を運び、フォトグラファーを兼任することも。2011年から拠点をロサンゼルスに移すと、米中西部出身のアメリカ人と砂漠で出逢って国際結婚、コンテンポラリーアートを紹介する業務にも着手するなど良い意味で想定外の人生を歩むことに。様々な面で文化の壁、言葉の壁にぶつかりながらもLife Is Beautifulを実感している。
インスタグラム:https://www.instagram.com/ayarchyintheus/
ツイッター:@ayamiyahara
日本が世界に誇るサブカルチャーといえば、やっぱりなんといってもアニメ。
そんなことは皆さんご存知だとは思いますが、でも数えてみると今年だけでも約300ものアニメコンベンションが全米各地で開催されていることは案外知られていないかもしれません。かくいう私もこれまではアニメコンベンションそのものは知ってはいたものの、コアなアニメファンというわけではないので足を運ぶことはありませんでした。
日本にいた頃も同様の理由でAnimeJapanなどの日本のアニメコンベンションに参加したことがないため、日米比較はできませんが、2022年は縁があって複数のアニメコンベンションに足を運ぶことに恵まれて、毎度そこに集うアニメファンの方々の熱温に感心させられました。
個人的に良い意味で驚かされたのは、客層の大半を占めていたのが非日本人の方々だったということ。通常、アメリカの日系イベントでは日本人が多くを占めるものが珍しくないのですが、その真逆だったのです。つまり、日本のアニメコンベンションというイベント、そして日本のアニメというカルチャーがアメリカに住む人々に愛されているという紛れもない証拠と言えます。
今回はそんなアニメコンベンションの中から、全米最大の動員数を誇るアニメ・エクスポ(AX)と、アニメのサブスクリプションサービスで最大規模のCrunchyrollが主催するCrunchy Expo(CRX)、そしてロサンゼルスから遠く離れますがテキサス州フォートワースで開催のAnime Frontierをご紹介します。
初回の開催は1992年。つまり、30年もの歴史を持つ北米最大のアニメコンベンションとして有名なのがアニメ・エクスポ(略称AX)。毎年7月4日の独立記念日のビッグホリデー・タイミング(今年は7月1−4日)に開催されることでもお馴染みです。今年は去年と一昨年のオンライン開催を経て久しぶりのin-personということもあってか、同イベント史上最多の12.5万人分のチケットがソールドアウトしたそうです。ロサンゼルスではほとんど求められることがなくなってきたワクチンの接種証明に関しては、日本からの出展者の希望を反映してここでは必須でした。ブースの出展者含む来場者全員が会場に入る前に接種証明の提示を求められ、会場内のマスク着用も推奨されていました。
日本からも沢山のアニメ・ゲーム業界がブースを出展し、連日多くのコスプレしたファンで溢れ返っていて、ブースのあるエリアから飲食コーナーを抜けてパネル・ディスカッションなどが開催されるホールへの移動はさながら少しピークタイムを過ぎた程度のラッシュアワー並みの混雑でなかなか思うように移動が出来ません。でも、道中に出会うコスプレイヤーたちの姿を横目にしながらだったのであまり苦ではなかったですね。むしろ普段無機質な雰囲気のコンベンションセンターに色とりどりのカラーが溢れ、日本人にとってお馴染みのキャラクター達の衣装を身に纏ったアメリカのコスプレイヤーの姿を目にすることは、自分がクリエイターではないのにも関わらずなんだか自分のことのように誇らしかったりするものなのです。不思議なものですね。
また、個人的にセンセーショナルだったのは、アニメのブースと同じ位大きな熱気を帯びていたのがVチューパーのブースだったという事実。時代はバーチャルなのだなとつくづく実感しました。当然ながらe-sportsのコーナーもあり、賑わっていました。
キャプション:人気Vチューバーが多数所属しているHololiveのブースで販売されていたグッズの一覧。ほとんどがソールドアウト!
キャプション:こちらも人気のVチューバー・エージェンシー、VShojo。通路が人で埋め尽くされて封鎖されていました。このシーンに無知な私にとってはセンセーショナルな光景。この混雑を生み出していたのはTwitchで130万人ものフォロワーを抱えるIronmouseでした。この熱気と混雑、実はメインの企業ブースがあったエリアよりもすごいことになっていました
アニメのサブスクリプション・サービスプロバイダーとして日本でも有名なクランチーロールの拠点はアメリカ。AXのような有名アニメコンベンションにも大きなブースを出展していますが、このCrunchyroll自らアニメコンベンションを主催しています。場所はカリフォルニア北部、サンフランシスコの隣、サンホゼ。サンフランシスコ南部からこの地域までのエリアがいわゆるハイテクとイノベーションの世界的な中心地シリコンバレーでもあります。入場者の規模は約1万5千人とアニメ・エクスポよりは小さいのですが、こちらも会場の隅々までコスプレイヤーで溢れて高い熱気に包まれていました。
個人的に良い意味で驚いたのは、日本のロックバンド、SiMのコンサートでの盛り上がり。私の本業は音楽ライターということもあって、アメリカに暮らし始めてからの約12年、様々な形で日本のロックバンドやアーティストがこちらでライヴを行う姿を観てきましたがアニメのコンベンションでコンサートを行うのはアニメソングを手掛けているアイドルやポップ系のアーティストがメインで、本格的なバンドセットを引き連れてコンサートを行うバンドを観る機会がありませんでした。アニメファンとロックファンに共通項があるのか?盛り上がるのか?いろんな思いが過ぎりましたがその全てが杞憂に過ぎないことが分かりました。寧ろあたかも日本のコンサート会場のように観客がステージパフォーマンスに集中してシンガロングを楽しみ、曲の合間のMCになれば一斉に静かになってアーティストの言葉一つ一つに耳を傾ける光景が。いち日本人として居住国アメリカで祖国のバンドが愛されている姿を見ることが出来て純粋に感動しました。
たとえばSiMはこの日の観客が最も楽しみにしていたのは『進撃の巨人(Attack on Titan)』Season 3 の主題歌「The Rambling」ではありましたが、この曲をオープニングでいきなり披露した後も観客の歓声やテンションは下がるどころかずっと上がりきったまま。バンド自体の魅力や技量があればこそですが、アニメやゲームで使われている楽曲であろうとなかろうと全ての楽曲を心底楽しむアメリカのアニメファンの姿に心を打たれました。
最終日となると人気ブースの販売グッズは売り切れてグッズの無くなったショーケースがこんな感じで鎮座することも
ライヴが始まる前30分以上前から満杯の観客で埋め尽くされたメインホール
こちらはカリフォルニアから離れて米南部、テキサス州ダラスのお隣、フォートワースで開催されたAnime Frontier。2019年に初回開催予定がパンデミックでキャンセル。2021年12月に待望の第1回を開催実現ということで今回が2回目だったのですが、普段は閑静な街に1万6500人ものジャパニーズアニメファンが集結するインパクトはなかなかのもの。
主催者の情熱によってアメリカでの公開に先立ってプレミア公開された『シン・ウルトラマン』の上映会に参加しましたが、ウルトラマン登場シーンでは待ってました!とばかりに歓声が上がり、エンドロールでは大きな拍手が。アメリカで特撮ものといえばゴジラ人気がパッと浮かびますが、ウルトラマンもアメリカ人に長らく愛されていることを実感すると同時に私自身の知識が浅いことに気付かされました。もっと日本のアニメや特撮を勉強して、アメリカ人と作品について色々と語ってみたいと強く思いました。
最後に、そんなアメリカのジャパニーズアニメ・特撮ファンの方々に敬意を込めて、コスプレイヤーの方々の写真を掲載してこのページを締め括らせて頂きます。
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