宮田華子
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。
ウェブ:http://matka-cr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/
※記事内容は2022年7月28日時点の情報によるものです。
先月、7月15日に公開された記事(7月1日時点)は「涼しい…を通り越して『寒い』日が続くロンドンです」という書き出しだったのですが… その後、突然猛暑に襲われました。
7月18日と19日、約40度まで上がったのです。
38度までなので…と思うところがすでに異常…。明日10度下がるのも異常…。 pic.twitter.com/xhX14Of3yR
— 華子です in London (@hanakolondon_uk) July 19, 2022
7月18日は38度、7月19日は40度を記録しました。
このコラムに何度か書いていますが、イギリスは寒い国なので、夏は涼しく短いのが一般的です。一般家庭にクーラーは設置されていません。
そんな「寒いはずの国」を突如襲った40度。南向きの部屋からさんさんと陽が入る我が家の室内はサウナ状態。クーラーなしの2日間は…辛かったです(;^_^A。
多くの人は暑すぎて自宅では仕事にならず、この日はあえて出勤したり(←現在週1~3日通勤規定の会社が多いです)、またクーラーがあるカフェで仕事をした人が多かったようです。私も本当は朝から近所のカフェに逃げ込みたかったのですが、7月18日~3日間、自宅のボイラー&ガス管の工事が予定されていたため、仕方なく自宅におりました。
我が家の台所は窓がありません。修理屋さんは台所を見た途端、一度自宅に戻って扇風機を持ってきたので笑ってしまいました。キンキンに凍らせてきた水のボトルがあっという間に溶けました。
猛暑を見越し、工事は朝8時過ぎにスタート。あまりに暑くなったためか、修理屋さんは13時過ぎには仕事を終えて撤退しました。その頃になると私のPCから変な音がし始め、「もしかして、熱で故障する?」と思う事態に。急いで電源を切り、すぐにクーラーの効いた近所のカフェに移動しました。
このように暑さに慣れていない国の猛暑はそれなりの事件だったのですが、猛暑日は2日間であっけなく終了しました。7月20日水曜日には一気に気温が13度も落ち、以後は涼しいロンドンに戻っています。
7月27日の気温と天気予報。半袖でいるのが寒いぐらいの気温です(BBCオンライン版のキャプチャ画像)。 40度を記録したことも驚きですが、この急激な気温の上下に「異常気象」を実感しています。
熱波が訪れる少し前、7月上旬のある金曜日の夜にイギリス人の友人2人と一緒にうどんを食べに行ってきました。現在、ロンドンに「うどんブーム」が到来しているのです。
約10年前のラーメンブーム、その後のカツカレーブームに続き、「うどんブーム」がやってきました。
「うどん」そのものは、ロンドンにある日本食レストランで以前から提供されていました。しかしロンドンの「うどん店」としては、2010年に開店した「Koya」という手打ちうどんのお店が第一号です。
現在ロンドン市内に3店舗ある「Koya」。コロナ禍で通販もはじめました。
腰のある手打ち麺、出汁のきいたつゆ、そしてちょっとした小皿料理もとてもおいしいお店です。シンプルでおしゃれな店内も相まって、人気のお店となりました。
その後、2020年12月、ロンドンのターミナル駅の1つ「St Pancras駅」に、大阪から「杵屋麦丸」が進出しました。開店後すぐにロックダウンとなったものの、「Withコロナ」となった現在は安定した人気を誇っています。
「大阪のうどんそのもの!」とまず在ロンドン日本人が飛びついた「杵屋麦丸」。店舗デザインを手がけたのは、井上愛之氏(ドイルコレクション)。駅を歩く人たちを惹きつけ、現在も大人気です。ケンブリッジに2号店もオープン。
このように「うどん」はじわじわ広まっていましたが、昨年7月、「丸亀製麺」がロンドンに進出し、一気に「うどん」の知名度が上がりました。金融街「シティ」に1号店がオープンし、その後たった1年でなんと5店舗まで拡大。日々行列ができるほどの人気で、「うどんブーム」の到来を決定づけました。
今年6月にオープンした5店舗目のBrent Cross店。年内にあと3店舗できることが決定しているそうです。
私自身はロンドンで外食する際に日本食レストランに行くことはあまりないのですが(和食は自分で料理できてしまうので)、日本人以外の友だちと食べに行くときは「ちょうどよい和食処があるといいな」といつも思っていました。
あまり値段が高くなく、気軽に友人を誘えることに加え、ベジタリアンの友人も多いので「ベジメニューが充実している」ことも大切です。何年も友人たちと「いつか一緒に日本食を食べに行こう」と言いつつ実現しなかったのですが、今回やっと「丸亀製麺(イギリスでは「Marugame Udon」)」のLiverpool Street店に行ってきました。
2021年7月26日にロンドン1号店としてオープンした「Marugame Udon Liverpool Street店」。グレーの建物が目印。
セルフで注文するスタイルは、日本の「丸亀製麺」と同じです。中に入るとすぐに注文カウンターがあります。
メニュー選びに迷う友人Jackson。 アクリル板越しにうどんが茹でられる風景を見ながらカウンターを進みますが、ここでまず(特に非アジア系の)客の心がわし掴みにされます。
湯気がもうもうと立つ中、うどんを茹でる→すくう→水でしめるといったアクション1つ1つがイギリスに暮らす人々(特に非アジア系の人たち)には珍しいのです。 うどんの調理方法を知らない人たちにとって、このオープンカウンターはエンタメのようなもの。友人たちが楽しそうに眺める姿を見ながら、「連れてきて良かった!」と(食べる前なのに)思いました。
ニコニコ顔でうどんを待つ友人のAnna。連日混雑しているこのお店ですが、夜20時半ごろ、列が切れた絶妙のタイミングで入店。行列や待ち時間なしでうどんを注文できました。
汁物系うどんを受け取った後は、天ぷらや揚げ物コーナーが続きます。「揚げたて天ぷら&揚げ物」を自分で選ぶのも、友人たちには初体験です。
エビや野菜のてんぷら(アスパラ、ズッキーニ、パプリカ等)以外にも、コロッケ、鶏のから揚げ、揚げ餃子(野菜またはチキン)が人気です。皆、ついつい多めに選んでしまうようでした。揚げ物類は最安値の揚げ餃子(0.85ポンド=約138円)から最高値のかき揚げ(2.45ポンド=約399円)まで多種類有り。
汁物以外のメニュー、たとえば丼ものや焼うどんはレジ近くのコーナーで1つ1つ仕上げてくれるのですが、その様子を見るのも客にとっては新鮮です。 そしてテーブルに着く前、トッピングコーナーにも友人たちはコーフンしていました。
Jacksonはベジタリアンなので、動物性の食材を一切使用していないビーガンメニューの一つ、「キムチ焼うどん(Kimchi Yaki Udon)」(6.95ポンド=約1133円)にかき揚げや野菜天ぷらなどをどっさりと購入。Annaも普段はJacksonと一緒にベジタリアン生活をしていますが、この日は「ダブル豚骨うどん(Two Pork Tonkotsu)」(8.95ポンド=約1460円)にチキン餃子、ズッキーニの天ぷらを選びました。
「キムチ焼うどん」。キムチはアジア系料理が好きな人には浸透済です。
日本の丸亀製麺にはない「ダブル豚骨うどん」。イギリスにおける「豚骨ラーメン人気」を意識したメニューのようです。豚骨スープ、味噌味のひき肉、チャーシュー、卵がのっています。お店の人に聞くと、現在この「ダブル豚骨うどん」が1番人気とのことでした。
こちらは私の夫が食べた「肉たまうどん(Beef Nikutama)」(8.95ポンド=約1460円)。肉にしっかり甘辛味がついています。
はしゃぎながら食べる2人。Jacksonは巨大なかき揚げが特に気に入りました。
私もAnnaと同様に「ダブル豚骨うどん」を食べたのですが、うどんの味は日本そのまま! 腰のある太麺の「しこしこ」感を堪能しました。濃厚なスープに味噌味のひき肉を溶かしながら食べると豚骨ラーメン以上のボリュームがあります。アスパラの天ぷらも揚げたてサクサクで美味。本当にお腹いっぱいになりました。
一時空いていた店内ですが、21時を過ぎてまた混んできました。遅くまで繁盛していることからも、人気ぶりが分かります。
和の雰囲気を程よくあしらったモダンな内装の店内。一人席も多く、ランチや仕事帰りにふらりと立ち寄る人も多いようです。
メニューを見てみると、日本の丸亀製麺とロンドン店とではかなり異なっていることが分かります。
まずロンドン店ではベジタリアン&ビーガンメニューが充実しています。
「かけうどん(Kake)」(4.75ポンド=約774円)。通常の出汁とビーガン用出汁の2種類がありますが、値段は同じです。 そしてチキン照り焼き丼等の日本では販売していない丼ものや焼うどんもあり、イギリスで受けるメニューを研究していることが分かります。
チキンカツカレーうどん(Chicken Katsu Curry Udon)」(7.45ポンド=約1214円)。イギリスでは「カツ」と「カレー」はセットのものと認識されています(「カツカレー」で1つの単語、と考えられています)。「カレーうどん(Curry Udon)」(6.45円=約1051円)もメニューにありますが、圧倒的に「カツカレーうどん」の方が人気の様子でした。カツは豚ではなくチキンを使用するのがイギリススタンダード。宗教上、豚肉が食べられない人が多いからです。 「日本の味そのまま」にこだわりすぎず、イギリスの現在の食文化を抑えたメニュー開発が成功の鍵なのでは?と思いました。
加え、リーズナブルな価格もポイントのようです。現在、1ポンドは約163.05円。やや円安なので、日本円に換算すると「高い!」と思われるかもしれません。しかし1ポンドは現地感覚では「100円」程度の価値で使われます。最安値の「釜揚げ(Kamaage)」)(3.45ポンド=約562円)は日本でいう「ワンコイン(こちらでは5ポンド)」以下であり、ボリューム満点のメニューでも8ポンド台(800円感覚)以下なので、現地感覚的には「お得感」があるのです。
日本同様、桶でサーブされる「釜揚げ」。見た目にインパクトがあるので、食べている人に注目が集まっていました。しかし初めてうどんを食べる人にとっては食べ方が分からず、ちょっとハードルが高いメニューかもしれません。
現在、スーパーやテイクアウト専門店、カフェなどでも寿司を扱っているので「日本食=高いもの」というわけではありません。とは言え、日本食レストランに食事に行ってお腹いっぱい食べるとかなり高額になります。
丸亀製麺の場合、うどんに天ぷらをいくつかチョイスし、ビールを頼むと1人あたり20ポンド(=約3260円)程度にはなります。しかしそれでも現地的には「20ポンド=2000円感覚」。「ディナーとして日本食をお腹いっぱい食べて、この値段なら安いね!」という範疇内に収まるのも人気に繋がっているはずです。
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AnnaもJacksonもうどんが大変気に入った様子。「また来たい!」「別の友達にも教えてあげなきゃ」と何度も言ってくれたので、私も嬉しかったです。
お腹いっぱいになった後は、お決まりコースでパブへ。
「丸亀製麺」のすぐ近くにある、「The Williams Ale & Cider House」。エールの種類が充実している大好きなパブです。
ビールを飲みながらひとしきり日本食トークに花が咲きました。最後はほろ酔い気分で金融街を散歩し、腹ごなしをしながら帰宅しました。夏の夕べを満喫した、楽しい夜でした。
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現在、「7月猛暑の2日間」がなかったかのように涼しい毎日が続いています。8月になったら再び暑くなるのか、ずっと涼しいままなのか、まだ分かりません。
現在涼しいものの、雨が降っていないので公園の芝生が枯れてしまっています。
実は我が家は、8月中に「引っ越しするかも…?」の大イベントを控えています。
「住み替えする“かも”」については3月記事で書きましたが、その後について、近々このコラムでご紹介したいと思っています。すでに7月末なのに、まだ8月中に引っ越しできるかも分からない…という悲惨&混乱ぶりです。とにかく早くいろいろ終えたいです涙。
そんなわけで気もそぞろな日々を送っているのですが、熱波での引っ越しは辛いので、涼しい8月になることを願っています。
皆様もどうか熱中症に気をつけて、夏を乗り切ってください。
紹介したお店:Marugame Udon (Livepool Street店)
The Williams Ale & CiderHouse
https://www.williamsspitalfields.com/
※両店共、お店の許可を得て撮影しました。
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