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宮田華子
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。情報経営イノベーション専門職大学(iU)客員教授。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。
ウェブ:http://matka-cr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/
※記事内容は2021年10月29日時点の情報によるものです。
10月終盤の現在、毎日「今日こそ暖房をつけようか」と悩みます。冬に向かいつつあることを肌で感じる今日この頃です。
ロンドン中心部にあるケンジントン・ガーデンズの秋景色。
10月初旬の週末、コロナ禍になって以来初めて飛行機に乗り旅行に行ってきました。行先はスコットランドです。
10/4から渡航国リストがグリーンかレッドの2択になるそうです。UK戻りは楽になりそうだけど、行った先の国のルールもあるわけで。ワクチンパスポート、日本とか世界でもう少し有効にしてもらえたら緊急時(家族の病気等)に楽だけど…でも安全第一。https://t.co/kEu9VlN7GM
— 華子です in London (@hanakolondon_uk) September 17, 2021
今回フライトを利用しましたがイギリス国内で移動規制はなく、海外渡航も10月4日以降かなり緩和しています。
昨年以来、遠出の移動はずっとしておらず、ロンドン近辺をウロウロしつつ静かに暮らしてきました。しかし今回、やや遠出したのには理由があります。それは友人のアナ(Anna)がスコットランドで挙式することになったからです。
ロシア出身のアナは、私が来英したばかりの頃に通っていた語学学校のクラスメイトでした。その後彼女はロンドンからオックスフォードに転居し、現在小児科医として働いています。約20年に渡りパートナー(今回の新郎)と暮らし、子供たちも生まれてファミリーを築いていました。イギリスでは「婚姻カップル」も「パートナー同士(事実婚)」も同じ権利を持っているので生活上まったく不便はなかったそうですが、この度結婚することにしたとのこと。
アナからの招待メールには「コロナ禍なので、移動に不安がある人もいるでしょう。(出席不可でも)どうか気にしないで」と前置きした上で「本当に数名だけで行う小さな式です。できれば来てほしいので返事を待っています」と丁寧な言葉で書かれていました。
挙式会場はスコットランドにある「古城(!?)」らしい。ロンドンからスコットランドといっても広いのですが…
ハイライトしてある部分がスコットランド全域です。Google mapのキャプチャ画面より。
会場である「バーカルディン城」はかな~り西の端。
オーバン(Oban)という海辺の街の外れにある古城「バーカルディン城」が結婚式会場。グラスゴーからもエジンバラからも遠い…。Google mapのキャプチャ画面より。
ロンドンからフライトまたは電車で直行できるエジンバラまたはグラスゴーからも遠いのです。お城↓はとっても素敵なのだけど、
17世紀初頭に建てられたバーカルディン城。当時の雰囲気を残した状態で修復されており、ホテルおよびイベント会場として利用できます。
はて、どうやって行ったら良いのだろう? 友だちの大切な日。行きたいのはやまやまだけど、行きつけるの?
そんなところから始まった今回の「結婚式出席スコットランド旅行」。新婦自らあれこれ手配してくれたおかげで、無事出席できただけでなく、私にとっても忘れられない旅となりました。
スコットランド旅の話の前に、少しだけイギリスの結婚式事情について。イギリスと日本の結婚式、招待する方・される方、どちらにとっても異なる点が多々ありますが、代表的な下記2つを紹介します。
①会場までの旅費
日本では遠方での結婚式の場合、招待する側が交通&宿泊費を払い、すべての移動を手配してくれることも多いと思います。
イギリスの場合、近場・遠方に関わらず会場までは招待客が自費で行くものであり、日帰り出来ない場合の宿泊費も招待客が払うのが普通です。
今回の結婚式は、旅費は招待客が各自支払いましたが、宿泊費はすべて新郎新婦が支払ってくれました。これはかなり珍しい事だと思います。
②ご祝儀・プレゼント
イギリスには「ご祝儀(お金)」の文化はありません。その代わり、ウェディング・ギフト・リスト」と呼ばれるカップルの「欲しいものリスト」から招待客側がプレゼントするものを選んだり、「この品の一部のお金を負担します」と申し出たりするシステムがあります。映画やドラマにもこういったシーンが登場することがありますね。
ウェディング・ギフト・リストのオンラインサービスのインスタより。家庭用品から旅行まで、扱う商品は本当に幅広いです。
以前はウェディング専門の業者が提供するカタログや紙のリストから贈り物を招待客が選んでいましたが、現在はオンライン上のギフト・リストから選ぶのが一般的です。中には「招待客がお金を出し合い、新婚旅行をプレゼントする」的な、クラウドファンディングのようなものまであります。
しかし、私自身は「ウェディング・ギフト・リスト」を提示されたことはありません。イギリスで数回結婚式に出席しているのですが、(今回を含め)出席したすべての式で「金銭・プレゼントは絶対にもってこないで」「ギフト・リストはありません」と言われました。
お祝いスタイルには決まりがなく、本当にいろいろのようです。
さて、旅の話に戻ります。
最終目的地の古城までは、「ロンドンからフライトでグラスゴー(スコットランドの首都)へ」→「グラスゴー空港からグラスゴー・クイーンストリート駅まで空港バスで移動」→「グラスゴー・クイーンストリート駅から電車に乗り(3時間)オーバン駅へ」→「新郎に車で迎えに来てもらい、オーバン駅からバーカルディン城へ」という長旅です。
ガラガラのロンドン・ガトウィック空港。朝便とは言え、コロナ禍以前はもっと人で溢れていました。渡航先によっては海外旅行も青信号になっていますが、実際のフライト利用者はまだ少ないことが分かります。
辺鄙な場所で行うため、誰も日帰りできません。式は土曜日ですが、全員が挙式前日(金曜日)から古城に招待され、2泊3日、ウェディング・ウィークエンドを共に過ごすというスケジュールでした。
グラスゴー→オーバン駅まで電車の旅。車窓からの眺めが、↑このレベルにあまりに大自然かつ美しく、感激でした。(Visit Scotlandのinstagramより。この風景はラム島です)
私(と夫)がオーバン駅についたのは19時半ごろ。新郎アンドリスさんがオーバン駅に迎えに来てくれて、そこから車で20分。漆黒の闇の中にど~んと石積みの古城が見えてきたときは「おぉ~!!」と盛り上がりました。
この写真は夕方のものですが、私たちが到着したとき辺りは真っ暗でした。
すでに私たち以外の招待客は到着済。夕方から古城の大広間(ダイニングルーム)でアフタヌーンティーを楽しみ、その後はワインを飲みつつおしゃべりをしていました。
大広間。10月初旬でしたがすでに夜は暖炉が炊かれていました。
ひとまず軽く挨拶をして宿泊する部屋に案内されました。ドアをあけるなり再び
「おぉ!!」
と声をあげたのは、まるでヘンリー8世が寝ていそうな天蓋付きのベッドだったから!
まるで映画に出てきそうな重厚な木造の天蓋付きベッドでした。
「古城に泊まってる感」がさらに倍増してきましたが、
バーカルディン城のウェブサイトのキャプチャ画面より。(以下2つの客室写真も同様)© Copyright 2021 Barcaldine Castle
ベッドの左手にある肖像画がリアルすぎて、目が合うと動きそう…! ちょっと怖い…。
「お化け怖い人」の私は、この時点で電気を消して寝られないことに決定(笑)。でも部屋はとても広く、快適でした。広々としたバスルームに加え、何と書斎用の小部屋までついていたのです(写真がなくてごめんなさい)。
バーカルディン城の客室は全部で6室。私たち以外の部屋も見せてもらいましたが、カントリークラシカルな部屋もあれば、
© Copyright 2021 Barcaldine Castle
私が泊った部屋よりもさらにゴシック感のある部屋もあり、インテリアは各々微妙に違います。
© Copyright 2021 Barcaldine Castle
部屋には「見張り用の」小窓や小部屋がついていたり、隠し扉や「秘密の階段」まであったり。お互いの部屋を見せ合ったり一緒に城内を探検しているうちに、夜は更けていきました。
招待客同士は全員初対面なのですが、すっかり打ち解けとても良い雰囲気。「きっと素敵な週末になる」と確信し、初日が終了しました。
2日目、いよいよ式当日です。
一夜明け、明るいところでやっとちゃんと見たお城の外観。シンプルで渋めの外観、かつお城としては小さめかもしれませんが、実際に間近でみるとかなり迫力があります。
前日の長旅と12時近くまで飲んでいたこともあり、朝8時半の大広間に集合は正直ちょっと辛かった(笑)。でも「このお城の朝食は最高」と聞いていたので、頑張って時間通りに大広間に向かいました。
すでにジュースやコーヒー、トースト、果物類は並べられていましたが、スコットランドのコロナルールにより「ブッフェスタイルの食事は提供できない」ため、前夜に朝食メニューが配られ、各自オーダー済みでした。
私と夫は「スコットランド風ブレックファースト(Full Scottish Breakfast)」と
(上から時計回りで)ハギス、目玉焼き(下にピタブレッド)、焼トマト、ベーコン、マッシュルーム、ソーセージ、ブラッグプディング(豚の血の入ったソーセージ)。これをトーストと共に食べるのですから恐ろしい…ボリュームです。
「スコットランド・サーモン」をシェアすることに。
トーストの上にスクランブルエッグとスモークサーモンがのっています。トロっとした卵にサーモンがよく合います。
私はこれまで「ハギス(羊の内臓を胃袋に詰めて茹でたスコットランドの伝統料理)は苦手」と思い込んでいたのですが、この朝食のハギスはとても美味でした。食材の新鮮さに加え、ハーブ&スパイスの使い方が絶妙。「ハギス嫌い」を返上することとなりました。
右に立っているのが新婦のアナです。
朝食は10時に終了。式は16時からなので、15時半に再集合することに。私たちは他の招待客と一緒にオーバンにミニ観光に行くことにしました。
オーバンは魚介類が美味しい事で有名な海辺の町です。加え、スコットランドは美味しい水で知られ、ウィスキー蒸留所が沢山あります。
まずはウィスキー屋さんに立ち寄り、
試飲したかったのですが、スコットランドはイングランドよりも厳しいコロナルール施行しているため、試飲ができず残念でした。
その後「せっかくシーフードの町なのだから」と生ガキを食べました。これが、これまでの結構長い人生で最高に美味しい生ガキだったのです!
大粒生ガキ12個で22ポンド。4人でシェアしたので1人3個ずつ。ミルキーな部分とヒダ部分の美味しさの両方が味わえ、かつ中からの汁がスッキリした味わい! 3つでは全然足りませんでした。本当に、食べてばっかり…(笑)。
他の海鮮料理もおいしそうだったのですが、これから式→ディナー→一晩中のパーティーで散々飲み食べするのが分かっているので、ぐっとこらえてカキだけ食べてお城に戻りました。
続きは次週
「スコットランド、秋の旅。古城でのウェディング<後編>」をお楽しみに
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