宮田華子
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。
ウェブ:http://matka-cr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/
現在もなおロックダウン中のロンドンです。
ある週末のご近所。ひとっこひとり、いないストリート。
3月後半から4月前半の状況は前回のコラムに書いた通りですが、イギリスがロックダウンとなって1カ月半以上たちました。厳しい行動規制の効果が出て、1日の死者数および感染者数は減少、4月30日には「イギリスは新型コロナウィルスのピークを通過した」と宣言されました。
4/30 #イギリス 政府 #新型コロナウィルス 政府会見。首相、ヴァランス政府主席科学顧問、ホウィッティ イングランド主席医務官が登壇。
— イギリスについてつぶやく (@uknews_murmur) April 30, 2020
●UKはコロナのピークを通過した
●来週ロックダウン解除プランを設定
●マスク着用はロックダウン後、人々が安心するためにも有効>続https://t.co/huaTf7FSyl
そして5月10日にジョンソン首相が今後のロックダウン解除に向けたロードマップを発表。まだまだ行動制限は続きますが、順調に危険レベルが下がれば6月から順次学校や店舗が再開される可能性がでてきました。
5/10 ボリスの会見。これまでと変化した点は下記:
— イギリスについてつぶやく (@uknews_murmur) May 10, 2020
①家で働けない人以外は出勤できる(これまでは「どうしても要出勤である場合は」がついた)。しかしできるだけ車か自転車、または徒歩で出勤し、公共交通機関を使用しないことを奨励
>続https://t.co/KQnkYs8yah
トンネルの先の光は見えてきましたが、良い兆候はひとえに厳しい行動制限によって人工的に作り出しているものです。自然に感染が抑制されたわけではありません。
ですのでもうしばらく、STAY HOMEの日々は続きます。
世の中はいろいろ大変なのですが、イギリスはこれからもっとも美しく、過ごしやすい季節を迎えます。
緑が少しずつ濃くなっています
夕暮れ時。木立を見上げて。
これまでも運動目的の外出は許可されており、また皆の憩いの場である公園は閉鎖されませんでした。私も毎日ではないのですが、公園にジョギングに行っています。
公園で筋トレ中の2人。
写真がなくて恐縮なのですが、現在これまでになくジョギングが流行っています。Youtubeやインスタを使って室内で運動不足を解消している人も多いのですが、せっかくの「1日1度の外出枠」を有効に使い、「ロックダウンを機に走り始めた」という人の話をよく聞きます。
しかしジョギングや運動は、1人または同居人のみと一緒に、がルールです。違反者が増えると、公園が閉鎖されてしまうので、皆、慎重です。
BBCがインスタで分かりやすく図解した行動制限ルール。車での遠出はNG、公園で人と集まるのもNG、日光浴は自宅の庭で、など。
長い冬の後に訪れる美しい季節をイギリス人は心待ちにしていました。ルールを守り、ソーシャルディスタンスをキープしつつ、野外での短い運動を皆さん楽しんでいる様子です。
家で過ごす時間に料理を楽しんでいる人は日本でも多いと思います。イギリスも同じです。イギリス人は料理下手なイメージがあり、外食やテイクアウトも大好きです。でも節約もかねて「この時期に料理をやってみよう」という人が増えています。家から受講できるお料理コースも百花繚乱、さまざまな料理を自宅から学べます。
ロンドンの情報誌「Time Out」は、「Time In」と期間限定で名前を変え、家で出来るアクティビティに特化したコンテンツを配信中。サワードウ・ブレッドからビール、チーズの作り方のコースまで、実にさまざまなコースが受講者募集中です。(画像はサイトのキャプチャ画面)
そんな話を日本の友人としたところ、何人もの人から「イギリス人のセレブシェフって、ジェイミー・オリバーとレイチェル・クー以外知らないけど、他にもいるの?」という同じ質問を受けました。
ジェイミー・オリバー。昨年5月に経営するレストランチェーンが破産したものの、名声は衰えず、のジェイミー様。5人の子どもがいますが、最近は末っ子をガンガン顔出ししてSNSに励んでいます。
はい、たっくさんいますよ~!
実はわたくし、美味しそうな料理動画や写真を眺めるのが趣味の1つなので、このエリアの話は大得意なのです。まともにお答えすると永遠に話が終わらないので、個人的に大注目&深堀りしている人に絞り、リンクをガンガン送っては暑くるしく語っています。
そんなわたくしの現在の一押しが、こちら↓のお方です。
UK's biggest names in food call for rent pause to save restaurant industry from collapse during coronavirus outbreak @Nigella_Lawson @ChefTomKerridge @AngelaHartnett @michelrouxjr
— i newspaper (@theipaper) April 23, 2020
https://t.co/FbzcZZlQlc
ナイジェラ・ローソン様(割と最近…と思われる写真です)。こんなに「様」付けが似合うお方も珍しい。
美人料理研究家であるナイジェラ・ローソン様(60歳)は、イギリスでは誰でも知っている超セレブです。日本でも料理番組が放送済みなので「そういえば、こんな人もいた!」と思い出す方も多いかもしれません。
政治家の父を持ち、お嬢様として生まれ育ったナイジェラ様。社会人になって暫くは出版業界で働いていました。シェフとして訓練を受けたことはなかったものの、1998年に出版した料理本が大ヒット。1999年に彼女のテレビ番組シリーズ『Nigella Bites(ナイジェラ・バイツ)』がスタートし、一気に「イギリス料理界の女王様」として君臨することに。
しかしその後、夫と死別(2001年)→億万長者と再婚(2003年)→泥沼離婚(2013年)→個人アシスタントによる詐欺事件→コカインと大麻吸引の過去発覚といろいろありました。加えダイエットに成功したりリバウドしたり、イメチェンしたりと話題にも事欠かず。最近はゴシップ女王としても知られています。
セクシー路線だったころのナイジェラ様。
ロックダウン後に公開したインスタ動画。最近またダイエットに成功、ナチュラルメイクでイメチェンも成し遂げました。まだまだやる気満々のご様子です。
料理のことだけにフォーカスすると、彼女の調理法にはいくつか特徴があるのです。
①とにかく大雑把:繊細さはゼロ。手でちぎる系のアクションが多く、細かい作業は苦手そう。
②レシピが簡単:「買ったものにひと手間加えるだけ」的なレシピも多い。
③調理器具を使いまくり:スピードカッターやブレンダーなどを使いまくって調理する。みじん切りとか不得意そう。
④カロリーは気にしない:ヘルシークッキングとは真逆。油もクリームも砂糖もた~っぷり使う。
美しい顔だちとグラマラスなボディで「セクシー系料理研究家」などと言われますが、容貌とはちょっとイメージが違う、雑でバサバサとした調理法なのです。でもできあがりは何だかとっても美味しそう!
これは割と初期の頃の映像。「ストレスなしでお客様を呼ぶときの料理」と題し、手間なしでもてなし料理をどんどん作っていきます。最初にでてくる1品は「茹でたインゲンに生ハムを巻き、バルサミコ酢につけるだけ」。確かに…ストレスなく作れます。
しかしこれはナイジェラ様、というよりはテレビ制作側の勝利なのかもです。
番組はナイジェラ様の自宅で撮影されているのですが、ちょっと見れば豪邸だと分かります。ダイナマイトな容姿に素敵なお家&キッチン等々、実は視聴者から嫌われそうな要素もたっくさん含んでいるのです。
しかしそこを飛び越え、視聴者の心をわしづかみにする理由は見た目と動作のギャップです。
きっちり測って先に準備も整えて、みたいな場面は皆無。ナイジェラ様が野菜を手でバリバリちぎったり、野菜の切れ端を投げ捨てたり、目分量で砂糖を手づかみしたり、手についたべとべとのクリームを舐めたりしながら調理は進みます。ときどき開ける冷蔵庫も生活感ありまくりな上に全く片付いていません。調理途中でガンガン味見もしますが、大口を開けてかなりガッツリ食べるのも見どころの1つと言えるでしょう。
エレガントな見た目とスポーツのような大胆な調理法のギャップがとにかく面白く、そして「これだったら私も出来るかも…」思わせる簡単そうなレシピにも引き込まれ、つい夜な夜な見入ってしまうのです。
割と最近までナイジェラ様のYoutubeチャンネルはあまり人気がなかった印象でしたが、ロックダウンの影響もあってでしょうか、久しぶりに再生回数を確認したらかなり増えていました。
ナイジェラ様の英語版・番組動画は、彼女のYoutubeチャンネルと、<Tonic>チャンネルでたくさん見られます。日本語字幕を自動生成すると、調理法が分かる程度には訳してくれます。
ナイジェラ様・ウォッチャーのわたくしですので、彼女のレシピでこれまでもいろいろ作っています。動画を見るだけで目分量でもできてしまうのが良いところです。
というのも番組で紹介したレシピの分量を知りたくて本人のオフィシャルサイトのレシピを見るのですが、掲載されていなかったり、「これって同じ料理?」と疑うほど分量が違っていたりするのです。その辺の「割とテキトー」な点も笑ってしまい、個人的には高感度が上がってしまってます。
今回作ってみたスペアリブ、参考にしたのはこちら↓の動画「Sticky Spicy Spare Ribs(べとべと&スパイシーなスペアリブ)」です。
ナイジェラ様のレシピでは最後にハチミツを使うので、べっとべとの艶がお肉の周りをまといます。しかし映像で見る限り、恐ろしい量のハチミツを使うんです。糖質制限中のわたくしは、この部分を真似する勇気がどうしてもありませんでした。
なので最後の部分は省いているのですが、十分美味しかったです。
<ナイジェラ様レシピをちょいアレンジしたスペアリブ>
※動画を参照しながら少しアレンジしました。
材料:
●スペアリブ:800g
●つけだれ
醤油、ワイン(赤でも白でも。日本酒でもOK):各半カップ
しょうが:千切りにして、たっぷり(1/2個ぐらい。いくら入れてもOK)
にんにく:2~3片を荒みじん切りにする
ゴマ油、サラダ油:各大さじ2
酢:大さじ1
スパイス類:唐辛子1本、月桂樹2~3枚、八角(1角分で十分)、ネギの切れ端少々、シナモン少々、胡椒少々
※つけだれは舐めてみて「美味しい」と思えば、それで良し。
作り方:
① スペアリブとつけだれの材料全部をボウル、またはビニール袋にいれて少しもみこむ。そして数時間そのまま放置し、たれをしみこませる。
② 少し深さのある耐熱容器に①を入れて(たれも一緒に)、アルミホイルでふわっとふたをする。
③ 200度のオーブンで30分焼く(この段階で中まで火が通ります)
④ アルミホイルを取り、10分焼く(汁気を飛ばして照りを出すため)
できあがり!
たれに漬けてオーブンで焼くだけ!なので手間いらずで簡単です。もしナイジェラ様風に「べとべと」にしたければ、③の前にハチミツを豪快にかけ、五香粉を振りかけてください(動画の5:37ぐらいからを参照してください。ハチミツと五香粉の量は目分量で大丈夫です)。
わたくし、料理は好きなんですがスイーツにはこれまで手を出してきませんでした。特に粉物系は「膨らまないかも」の危険性があり、目分量では失敗する、という点も敬遠ポイントでした。
作らないので「このぐらいまで混ぜると良い」的なコツも体得できずにおり、さらに手を出しづらくしていました。
しかしナイジェラ様のチーズケーキ動画は、何だか失敗しようがないぐらい「まぜて焼くだけ」だったので、やってみました。
動画の15:47からチーズケーキ調理が始まります。
<ナイジェラ様レシピをちょいアレンジしたチーズケーキ>
※動画とナイジェラ様のHP記載レシピを参照し、分量を少なくしました。
材料:
(土台用)
●ザクザクした触感のビスケット:100g
●無縁バター(常温にしておく):50g
(チーズケーキ液)
●クリームチーズ:400g
●砂糖:100g
●全卵:2個
●卵黄:2個
●バニラエッセンス::小さじ1
●レモンまたはライムの絞り汁:小さじ1
作り方:
準備:オーブンを180度に予熱しておく
① ビスケットを無塩バターをブレンダーにかけてよく混ぜる(ブレンダーを使うと時短というだけで、ビスケットを手で砕いてバターを練りこんでももちろんOKです)
② ①をケーキ型に敷きつめ、冷蔵庫にいれておく
この状態で冷蔵庫に入れて冷やしておく。クッキングシートを敷きました。
③ チーズケーキ液用の材料全部をボウルに入れて滑らかになるまで混ぜる
「こんなんで固まるの?」というぐらい、さらさらの液です。
④ ③を②に流し込む。
⑤ ④を湯煎して、オーブンに入れて40分焼く
深さのある天ぱんに熱湯をいれてもOK。私は大きめのケーキ型に熱湯を入れ、その中に液の入ったケーキ型を入れました。
できあがり!
どちらもとても簡単ですが、見栄え的にも悪くない1品 x 2です。スペアリブはビールにものすごく合います。チーズケーキは濃いコーヒーにぴったりです。
材料にこだわればこだわっただけ美味しくできそうな「素材の味そのまま」のチーズケーキです。
これを機に、スイーツにも本格的に手を出そうか現在思案中のわたくしです。
#ロックダウン 絵日記
— イギリスについてつぶやく (@uknews_murmur) May 3, 2020
いままで「スイーツは作らない(=作れない)」で通してきたけれど…とうとう、手を付けてしまいました。
「甘い」は「美味しい」なのよね。#イギリス #ロンドン pic.twitter.com/AYS53F3pkT
さて、どうなるか。
次は、ビビりながらもナイジェラ様を信じて簡単そうな粉物スイーツにに挑戦しようと思っています。
PS:おまけ
上記でナイジェラ様のレシピを「何だかとっても美味しそう!」とほめちぎっているのですが、実は…ときどき(ごくまれに、なんですが)大変不味そうなびっくりレシピもあります。
こちらは、ここ数年イギリスでも定番となったラーメン。
ラーメンのスープを、和風だし?らしきもの(動画では「野菜スープストックもよく使うわ」と言ってます)と干しシイタケとショウガで作っているのですが、何だかすっごく…まずそう…(笑)。
素敵なキッチンで、簡単そうだけど絶対美味しくないラーメンを作るナイジェラ様。
この辺のびっくりがあるのも、ナイジェラ様の魅力です♡。
今回、わたくしの「ナイジェラ様♡愛」を爆発させてしまったので、他のお気に入りの料理研究家を紹介するスペースがなくなってしまいました(涙)。名前は似ているけれど、お料理もライフスタイルのプレゼン法も全然違うナイジェル・スレーターのことも紹介したかったのですが。
敬愛する料理家のナイジェル・スレーター。
ナイジェル様の自宅キッチン。個人宅とは思えない洗練されたインテリアにもうっとりです。
Nigel Slater’s oxtail stew and trimmings recipes https://t.co/aDMG7J3M7p
— The Guardian (@guardian) January 19, 2020
最近作ったナイジェル様のレシピの1つ、オックステイルの煮込み。オックステイルなんて自宅で食べるものだとは思っていなかったのですが、レシピ通りに作ったらとても簡単でした。どっしりとした煮込み等もお得意の料理家なので、冬になったらまた特集したいです。
他にも語りどころ、突っ込みどころアリアリの料理研究家が本当にたくさんいるので、いつかまたご紹介したいです。その日のために、日夜「深堀り」に精を出して備えようと思います。
まだ家に籠る日々が続きますが、楽しく、安全に過ごしたいと思っています。「STAY HOME & SAVE LIVES (家にいて、命を救いましょう)」―― 美味しくお料理しながら、もうしばらく一緒に頑張りましょう。
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