コロナ禍のアウォード:第93回アカデミー賞授賞式会場を ”外側から” 覗いてみました

宮原亜矢 
ロサンゼルス在住ライター。ラジオ、雑誌、テレビ、ウェブなど様々な媒体で洋楽(主にロック)を紹介。2000年代前半から毎年1−2回は欧米のフェスやコンサートに足を運び、フォトグラファーを兼任することも。2011年から拠点をロサンゼルスに移すと、米中西部出身のアメリカ人と砂漠で出逢って国際結婚、コンテンポラリーアートを紹介する業務にも着手するなど良い意味で想定外の人生を歩むことに。様々な面で文化の壁、言葉の壁にぶつかりながらもLife Is Beautifulを実感している。 
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前回(vol. 8)ではグラミー賞の会場周辺の様子をお伝えしましたが、今回は音楽・映画系のアワードの中でも最も注目を集める世界最高峰の映画の祭典、アカデミー賞についてご紹介します。

前回もお伝えした通り、本来であれば1−3月に世界中が注目する音楽・映画賞などの受賞式で盛り上がるロサンゼルス。しかし今年は延期やリモートなど、いつもとは全く異なる形式で執り行われました。

アカデミー賞の授賞式は1988年4月11日に開催されたのを最後に2月や3月に開催されていました。昨年は2月9日でしたし、実は次回94回は2月27日に開催が予定されているほど。今年はコロナパンデミックの影響で当初の2月28日から約2ヶ月先となる4月25日への日程変更が発表されたのは2020年6月のこと。

ということでとても長い間待った印象だった今年のアカデミー賞。

待たされた分、驚きが色々とありました。

まずは会場。

2002年以降はハリウッドのど真ん中で観光スポットの一つでもあるショッピング・モール、ハリウッド・ハイランド・センターに併設されているドルビー・シアターで開催されていたのに対し、今年は車で15分ほど離れたダウンタウンにあるハブ鉄道駅、ユニオン・ステーションが会場に選ばれました。

ということで、グラミー賞に続いて今回も会場視察を敢行。まずは普段はレッドカーペット設置のため、交通量の多い目抜き通りにも関わらず、会場前の数ブロックを封鎖するドルビー・シアター前は全く違っていました。事前のニュースではこちらの会場も放送で使用されるとのことでしたが、蓋を開けて見れば俳優ブライアン・クランストン(米ドラマ『ブレイキング・バッド』や舞台『王様と私』でお馴染みの名優ですね)が、ドルビーシアターを紹介するフッテージで使用されたのみでした。会場前を通るとアワード感はゼロ。

普段であれば大幅な迂回を余儀なくされるところですが、全くそんなこともなく、呆気ないほどスムーズにハリウッドを通過することができた私は今年の会場、ユニオン・ステーションへと車を走らせました。

驚きました…

会場付近の道路封鎖が半端ない!!!!

いや、そんなに隠さなくても良いでしょって位、広範囲に渡って道路が封鎖されていました。

しかしこのままで大人しく帰るなんて勿体無いと思った私は、ユニオン・ステーション正面入り口に最も近づけそうな場所に車を停めて歩くことに。

パーキング入り口。散策を終えて戻ってきたら既に満車になっていました。停められてラッキー!大したことのない駐車場ですが、ロサンゼルスの一風景として載せておきます。なおこちらのパーキングはタンデムパーキング(*前後に駐車)ということもあり、駐車後には写真後ろのPARKINGと書かれたブースに行って鍵を預けます。

このパーキングが人気だったのは何も私のようなアカデミー賞の様子を見たい野次馬だけでなく、実は人気のメキシカン・マーケットに隣接しているので、そちらを訪れる観光客の方が多かったんです。このマーケットはこじんまりとしてはいるもののまるでどこでもドアでメキシコの街に着いたかのような雰囲気。観光にもおすすめですが、テーマから脱線しすぎてしまうのでまたいずれご紹介します。

車を無事停めてズンズンとユニオン・ステーションに向かいましたが、私の冒険はあっという間にジ・エンド。

鉄条網でブロックされてこの先進めません…。

なんてこったい…。

切ない気持ちになりながら、金網越しにユニオン・ステーションを撮影してみました。

授賞式のために張られた白いテントの下には、レッドカーペットがあったんでしょうか?それとも授賞式開催前に候補者たちが寛いでいたラウンジがあったのでしょうか??そこにある背の高いスパニッシュ調の建物がユニオン・ステーションです。

駐車代金勿体ないの精神が前に立ちまして、厚かましくもその場にいた報道陣の女性に声をかけることに。韓国のテレビ局から来たという彼女によれば今年は本当に厳しい報道体制がとられており、普段なら世界各国の報道陣がひしめき合いながら取材を行うレッドカーペットも入れたのは世界でたった2媒体だけ(!!)。この行き止まり地点でカメラと共に張っているということは誰かセレブでも通過するの?と聞いてみたら「いやーまずないと思う」と。切ない。諦めてその場をトボトボ去ろうとした私に彼女が、「マーケットの先にある広場にはもっと報道陣がいるから行ってみると良いわよ」と教えてくれたんです。なんて良い方なんでしょう!

もちろん私、真っ直ぐに向かいました。

早く終わらせて帰宅しないと授賞式のTV放送のオープニングを見逃してしまう焦りも相まって早歩き。かわいいメキシカンのお店に脇目もふらず一目さんに広場に直行しました。

彼女の言っていた通り、複数のメディアが取材を行なっていました。しかしここから会場をクリアに見られるかと言ったらそんなこともなく、このもどかしい思いをそのままレポートしているかもしれないと思うとなんとも居た堪れない気持ちに。スーツケースを踏み台にしている男性の、少しでも会場を覗き見したいという思いがひしひしと伝わってきます。

報道陣だけではありません。熱心なファンの方もプラカード持参で広場に。

こんな感じで報道のヘリもしょっちゅう旋回していました。

広場を電動キックボードでクルーズしていたこのおじさま。右手にはオスカー像を握ってオスカー像のマスク着用。グラミー賞の会場でも見かけたのですが、宣伝をしているようでこの日は最多ノミネート作品『マンク』のフライヤーを持っていました。

ちなみに会場内はこんな感じだったようです。

授賞式が執り行われた駅構内の普段の景色。普段から美しいデザインで人気を博しています。

それがこのようにセットアップ!1939年建造の歴史的な建物のクラシックかつエレガントな魅力を生かしていましたよね。

限りなく密を避け、でも93回を重ねた権威ある賞の威厳を保つためにたどり着いたこのアイデア。この先も歴史に残る回になりそうですね。