大モノ家具はアンティークマーケットで

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

皆様、あけましておめでとうございます。

昨年から書かせていただいているこのコラム、いつも読んでくださってありがとうございます。今年も「足したり」「引いたり」「迷ったり」しながらのインテリアや、楽しかったり、困ったり、驚いたりしながらのロンドンで暮らしについてを書いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

新年のお花を買いにフラワーマーケットへ

今年はロンドンで年越ししたのですが、少しでも新年らしくと思い、年末にロンドン中心部からやや東にある「コロンビア・ロード・フラワーマーケット」に行き、花を仕入れました。ここはその名の通りコロンビア・ロードにある植物専門のストリートマーケットで、毎週日曜日、切り花や植木を販売しています。

マーケットの端の方で撮影した写真なのであまり混んでいないように見えるのですが、人がぎっしり詰まった奥の方を見てください。

日暮れ間近のギリギリの時間だったのですが、フラワーマーケットは買い物客でいっぱい。寒さに負けず、声をあげて花を売る人、元気に買い物する人で活気があり、独特の高揚感が漂っていました。

この時期人気なのはウィンターベリーと猫柳。ユーカリはここ数年、通年通して大人気でし。この3種類を大量に抱えている人をたくさん見ました。

少し奮発してウィンターベリー、猫柳、ゴールドスティック、そしてユーカリを買い、抱えて帰ってきました。いつも殺風景な我が家ですが、少しだけ色のあるインテリアで新年を迎えることができました。

赤い実は日本的でもあるのですが、イギリスでも愛されています。このまま水を入れずに花瓶にさして置き、自然にドライにする予定です。

私もユーカリが大好きなので、今回たっぷり買いました。まだ瑞々しいのですが、少しだけ乾燥させてから壁につりさげました。

アンティークマーケットに通う日々

フラワーマーケットのみならず、イギリスにはマーケットがたくさんあります。アンティーク&ヴィンテージ、食べ物、雑貨、古着、クラフト、アクセサリーが充実したものまで多種多様です。ストリートや広場を使ったもの、固定の場所や屋内で開催されているものもあり、地域密着型のものもあれば観光スポットになっているものも含め、全国津々浦々、様々なマーケットが存在します。

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イギリス最大のアンティークマーケットは「ニューアーク国際アンティーク・コレクターズ・フェア」。2日間開催ですが、1日目はトレーダーのみ。一般客は2日目に入場できます。

このフラットに引っ越してきて3年半、まだ家具が揃っていない我が家なので私と旦那のヒトは割とマメにアンティークマーケットに通っています。

我が家のインテリアの場合、人にあまり見せる機会のない寝室に設置している収納家具は「収納力」「機能性」「コスト安」を重視し、ほとんどをIKEA、通販、大型DIYショップ等で買いました。デザインも「シンプルであればOK」と考え、目に邪魔にならない程度のもので手を打ち、入居後割とすぐに揃えました。

でも居間に置く家具や雑貨は「できれば長く使えるもの」をじっくり探したいなと思っています。値段が高すぎては買えないし、大きな家ではないのでサイズも大切です。私たちの身の丈と生活に合った「ちょうどよいもの」がどこかにあるはず―― そんな思いで1つ1つノロノロ探しているので、居間の家具はまだ揃わないまま。生活する上で今すぐ必要なものは別として、「ここに置く○○はこういうものがほしい!」という一応のビジョンがあるものはのんびりと探し続けています。

入居後椅子がどうしても必要で慌てて買ったIKEAのベンチ。今は椅子としては使っていないのですが、高さがちょうど良いので植木を置く「箱庭ガーデン」スポットになっています。「とりあえず」がそうでなくなったケースです。

なかなか出会えない「運命の我が子」

この「偶然の出会い探し」を気長&気楽に続けているのは、実は我が家から電車で20分ほどの場所で月2回、「サンバリー・アンティークマーケット」が開催されているからなのです。毎月第2&第4火曜日にケンプトン競馬場で開催されている大きなマーケットで、競馬場の名前から「ケンプトン(マーケット)」とも呼ばれています。雑貨、アクセサリー、布ものから家具まで様々なアンティーク商品が並ぶ、充実したマーケットです。

屋内のストールもありますが、屋外の方が大物が多く値段も安めです。

大きなトランクは「見せる収納」としても使えます。

「Singer」等のアンティークミシンも人気です。まだミシンとして使えるものと、オブジェ用とがあります。手芸好きのワタクシなので見るたびに心が震えますが、反面「ミニマリスト」の血も騒ぐのでなかなか手が出ません。

行くたびに発見があり、新たなインテリアのアイデアももらえるアンティーク好き・インテリア好きにはたまらない場所です。しかしなまじこのマーケットが近くにあることで「我が家の“運命の子(=家具)”」に対する期待値が上がってしまい、同時に「いつかここで出会えるから大丈夫!」とも思ってしまうのです。結局買うのは小物ばかりで、なかなか家具は買えず終い…の繰り返しでした。

そんな「手ぶら状態」で通い続けること2年強。当時私たちはダイニングテーブル用の椅子を真剣に探していたのですが、ついに「運命の子」に出会えました! その運命のカワイ子ちゃんたちがコチラ(↓)です!

2脚だけ撮影しましたが、4脚買いました。

イギリスのミッドセンチュリー(1940年~60年代)の家具、なかでも「Ercol(アーコール)」製ものもが大好きで、できればこのブランドのものを買いたいなあと思っていました。当時のデザインのものは今でも「オリジナルズ」というシリーズとして製造されているので、新品を買うことも可能です。でも高いし、何となくピカピカすぎて味気ない気もしていました。

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とはいえ、新品は使い込んでいく楽しさもあるのですよね…。

「アーコールのミッドセンチュリーの椅子」と言ってもデザインはいくつもあります。どのデザインも素敵なので迷っていましたが、ある時、ロンドン東部にあるレストラン「Lyle’s(ライルズ)」の椅子に座り、「この形がいい」と心が決まりました。

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ショーディッチ地区にあるモダン・ヨーロピアン料理のレストラン「Lyle’s」。インテリアだけでなく、毎回「あっ!」と驚く料理や盛り付けを見せてくれる大好きなお店です。椅子は「オリジナルズ」シリーズの「All Purpose chair」。

勝手に心だけは決まったものの、手ごろな値段で「4脚一気に買える」出物は簡単には探せず。マーケットだけでなく普通の家具屋さんや中古ショップに行くのも好きなのですが、そちらにシンプルで素敵な椅子もありました。「似て非なるブランドのもの」や「似ていないけれど素敵なもの」で手を打とうか?と何度か思ったのですが、「アーコールはちゃんと修理できるからいいよ」「飽きても必ず売れるよ」等々、インテリア好きの友人たちからの推薦も多かったので諦めずに粘っていました。

3本の背もたれ棒が長い、後ろのフォルムが気に入っています。

アンティークマーケットはそのときどきによって出物は違いますし当たりはずれも多いです。その日もいつものようにマーケットに行くと、今まで全然探せなかったというのにアーコールの椅子がいくつものお店に何種類も何脚もでていて、同じ「All purpose chair」の色違いを比べることまでできました。こんな日もあるなんて、待ってて良かった!

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「Ercol」の長椅子「Love seat」も素敵。いつか買いたいですが、我が家の居間にはサイズが合わなそうです。

最後まで「Lyle’s」と同じストロー(麦わら)色と迷った末、すでに購入済だったダイニングテーブル(←こちらにも物語がタップリあります)の色と合わせてブラウンに。値段はマーケットが終わる時間ギリギリだったこともあり、あっさり値切りを承諾してくれたので1脚2000円ほど。新品を定価で買うと、何と1脚約20倍!もするのですから、ものすごく良い買い物をしたことになります。

カワイイ椅子の子ちゃんたちが来て半年ほどたった後、実は同じぐらい“大”念願だった「Ercol」のソファーも我が家にやってきたのですが、これも長~い物語なので、またいつか。

今年の抱負は「コーヒーテーブル」

そんな風に「奇跡の出会い」をゆっくり繰り返している我が家の居間。まだ買えていないけどものの1つに、ソファーの前に置く「コーヒーテーブル」があります。

できれば「ちゃぶ台」としても使用したいので、このぐらいの高さが理想。探し始めて3年半、長すぎますね(泣)。

ソファーに座っても前にテーブルがないと収まりが悪く、お茶を飲むにもカップを置けないので不便です。来てくださった方も何だかそわそわしてしまうようで、みなさんダイニングテーブルの方に座りがち。つまりコーヒーテーブルがないと、せっかく苦労して手に入れたソファー君がまったく活きないことが分かりました。

こちらが念願かなってやってきたソファー君。もっぱら旦那のヒトの昼寝椅子になっています。お客様はほぼ誰も座ってくれません。

新年の抱負を英語では「New Year Resolution(新年の誓い)」と言います。仕事や生活のことなど、個人的には今年もたくさん頑張りたいことがありますが、我が家インテリア関係では「今年こそコーヒーテーブルを!」が抱負です。

いつになったらやってくるのか「運命のコーヒーテーブル」。今年もせっせとマーケット行脚にいそしむことになりそうです。