宮田華子
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。
ウェブ:http://matka-cr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/
※記事内容は2020年12月17日時点の情報です。その後イングランドの対策およびクリスマス緩和の見直しがあり(イギリス時間12月19日午後に発表)、ロンドンはTier4指定(12月20日から4段階システムに変更)になったため、クリスマス期間の緩和はなくなりました(Tier3以下のエリアは25日のみ緩和)。
早いもので2020年もいよいよ残りわずかとなりました。
今年はEU離脱(1月31日)で始まったイギリスでしたが、その後コロナ一色だったのはどの国も同じだと思います。
イギリスは現在4つの地域(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)の自治政府が各々のルールでコロナ対策を行っています。イングランドは11月5日~12月1日までロックダウンでしたが、12月2日からは「Tier(=段階)」と呼ばれる3段階対策システムに移行しました。現在ロンドンはTier3(危険度:最高)に指定されています。
Here's what you can and can't do https://t.co/bZXf2k1ReF
— Metro (@MetroUK) December 14, 2020
Tier3地域の場合、リテイルは営業可ですが、飲食店はテイクアウトのみの営業にです。室内での世帯ミックスは不可。人と会う場合は「野外のみ、最大6人まで」がルールです。
状況は依然厳しいものの、ワクチンの認可&接種が開始されました。「もうすぐこのコロナ禍が終わるかもしれない…」と希望をもってこの時期を迎えることができて本当に良かったです。
Pfizer/BioNTechのワクチンの接種が本日開始。今日を「V-day(ワクチンのV)」と呼んでいるが、V-dayは欧州における第二次世界大戦の終戦日(1945年5月8日)も指す言葉なので、私にとってはちょっと微妙に聞こえる。でも、コロナに対する勝利(Victory)の日になるといいな。https://t.co/AyqEn0kyUj
— イギリスについてつぶやく:ハナコです (@uknews_murmur) December 8, 2020
12月6日(日)にベルギーからファイザー/BioNTechのワクチン第一便がイギリスに到着し、12月8日(火)から接種が開始されました。
ワクチン接種の順番は以下の通り。
— イギリスについてつぶやく:ハナコです (@uknews_murmur) December 8, 2020
①ケアホーム入居者と職員
②80歳以上と医療ケア従事者
③75歳以上
④70歳以上と臨床的脆弱者
⑤65歳以上
⑥16-64歳の深刻な病気の人
⑦60歳以上の人
⑧55歳以上の人
⑨50歳以上の人
現在はここまで決定。(図はPMツイッターより)https://t.co/obm2YRiFIX pic.twitter.com/84ovFD0nhs
ワクチン接種順位は9グループまで決定済。順位1&2から接種が始まっています。
I feel very lucky to have had the vaccine. I would have no hesitation in recommending it to anyone. https://t.co/gBLRR0OeJc
— Ian McKellen (@IanMcKellen) December 17, 2020
セレブが続々接種の様子を伝えています。こちらは名優イアン・マッケラン様(81歳)。
例年12月はクリスマス一色で埋め尽くされるロンドン。特に賑やかな中心部の街歩きは楽しいものです。しかし12月1日までロックダウンだったのでまったく出歩いておらず、今年のクリスマス風景が分からないままでした。
ロックダウン後の初週末、「どうなっているのかな?」と思い、ロンドン中心部に行ってみました。
大きなターミナル駅である「ビクトリア駅」周辺から街歩きをスタートしたのですが…
大きなオフィスビルは、例年かなり派手にクリスマスの装飾がされています。しかし現在も在宅勤務者が多いので、装飾なしのビルが多いようです。
恐ろしく寒い日だったこともありますが、本当に人がいない…。
週末のロンドンらしからぬ人気(ひとけ)のない街並みです。人がいないのは皆ルールを守って外出を控えているということ。「良いこと」なのですが、現在リテイル業界の経営破綻ニュースが続いているので、「ニュースを裏打ちするような街並み…」という思いが胸に迫ります。
ラグジュアリーな花屋さん。外観をクリスマス仕様にデコレーション中でした。寒そうだけど、頑張るお姉さんに「写真撮ってもいい?」と聞くと、元気に返事してくれました。
しかし中心部に近づくごとに、少しずつ人の姿が増えてきました。
野外でしか世帯ミックスができないので、レストランやパブのストーブやテントを設置した野外席が人気です。この日は最高気温が4度の寒~い日でしたが、皆さま果敢によく冷えたシャンペンを飲んでいる様子。
現在3時半には暗くなります。デパート&高級リテイル街であるナイツブリッジに着いたころにはもう真っ暗になっていました。例年の同時期と比べると人は少ないようですが、それでもコロナ禍だと考えると混雑しすぎの状態でした。
ナイツブリッジにあるマンダリン・オリエンタルホテル前。バルコニーの上に3本のツリーが飾られていました。
人がいなさすぎると心配し、人が多すぎるともっと心配…というのは矛盾なのですが、いつもそう思ってしまいます。経済と感染抑制の両立は不可だとこの数カ月で実感しているので、人は少なめな方が良いのです。でも毎回、どちらの光景を見ても微妙な気持ちになります。
ハロッズ前の道は、人をよけて歩くのが難しいレベルに混雑していました。
この日は若者向けのイベントがあったらしく、派手に着飾った若者グループがハイストリートに大量に出没していました。警察も出動しており、これでは感染が拡大するばかりです。
混雑を避けるため早々にこの場を後にし、ウェストエンドにあるコベントガーデン移動しました。
コベントガーデンはマーケットとロイヤル・オペラ・ハウス、そして広場に大道芸人がいることで有名なロンドン屈指の観光地です。賑わっていましたが、ソーシャルディスタンスを保てる程度の混み具合でした。
通常は人でびっしり埋まっているコベントガーデン。このぐらいの人混みだと安心して買い物できます。
サンタクロース仕様の自転車タクシーも出動していました。
屋根のあるエリアも平常時の週末に比べたらずっと人が少なかったです。とはいえ別世帯の人と1m以上間隔を常にキープするのは困難でレベルだったので、奥までは入らずにデコレーションを眺めました。
天井から大きなヤドリギが下がっていました。
毎年広場に大きなクリスマスツリーが設置されます。大道芸人も寒空の下、頑張っていました。子供たちが楽しそうに笑っているのは微笑ましい光景です。
子どもを巻き込んで爆笑マジックをする大道芸人さん。絶対子供には直接触れず、道具も触らせず、「指を指したり」「数字を言わせたり」の方法でいろいろ工夫していました。現在は投げ銭も現金でなくカード支払いが一般的です。
コベントガーデンからテムズ川を渡り、サウスバンクと呼ばれる川沿いのエリアに向かいました。橋からの眺めは美しかったのですが、風も吹いていたので体感温度は氷点下! 頬を切るような冷たい空気もそういえば久しぶりの感覚です。
川の向こうに見えるのは、コンサートホールや美術館、映画館などの複合型カルチャー施設「サウスバンク・センター」。
今回の街歩きで、この眺め(↓)が1番好きでした。ロイヤル・フェスティバル・ホール(コンサートホール、現在閉館中)前のバルコニーはちょうどよい「立ち飲みテーブル」。野外パブでビールやムルドワイン(温かいワイン)を買い、立ち飲みしているのです。
しびれる寒さにも負けず、楽しそうに飲む人々。
2度のロックダウンは「人と対面で会えること」がどんなに素晴らしいことなのかを実感する出来事でした。現在室内で友人と会うことができないので寒さに震えながら野外飲みするしかないのですが、これもコロナ禍ならではの光景でしょう。数年後に今年を思い出した時、身を切るような寒さの中、立ち飲みする人々を思い出すような気がします。
街歩きを終えた後、予約していたレストランに行きました(この日はまだロンドンがTier2だったので、同世帯のみ店内飲食が可能でした)。この時期の外食には賛否両論あり、人それぞれ考え方が異なります。現在は同世帯の人とのみ店内飲食が可能なので、友人を誘うことはできません。つまり「世帯内での合意」をもとに行動するだけなので、「誰か誘って迷惑をかけるのではないか?」という心配はありません。
私にも迷いはあるのですが、現在厳しい状況下にある飲食店をちょっとでも応援したいという気持ちもあり、ルールの範囲内で月に1回程度は外食してもいいかな、と思っています。
今回行ったのはロンドン東部ダルストン地区にある「Little Duck The Picklery」。美味しいピクルスと、ワインに合うモダンブリティッシュ料理を提供しています。小皿と大皿、数品を組み合わせてシェアしながら食べる、タパススタイルのお店です。
オープンキッチンスタイルの小さなお店です。この写真では人口密度高めに見えますが、店内人数は通常時の半分程度。カウンター4席組、テーブル席2組、店員4名で営業していました。
店名が「Picklery(ピクルス屋)」だけあり、このお店のピクルスは絶品。3種のピクルスとサワードゥブレッドのセット。発酵バターが本当に美味なので、料理が来る前にパンをどんどん食べてしまいます。正直このセットだけでも大満足の美味しさです。
以前夏に来たことがあるのですが、今回は料理も冬仕様。どっしりした味の赤ワインに合う、煮込みや濃い目の味の料理が美味しくて、あまり飲めない私もワインが進みました。
素材とチーズを組み合わせた料理が多いのも特徴。ローストした子牛肉の薄切り&ゴルゴンゾーラチーズ。
英語では「ヘイク(Hake)」と呼ばれる深海魚メルルーサのサフランソース&アイオリ添え。ヘイクはタラのような味の白身魚です。ソースが絶品でした。
何気ないお店の人とのやりとりも、久々なこともあり新鮮でした。会話の楽しさを思い出し、また美味しさと丁寧なサービスに温かな気持ちをもらいました。
まだ感染者数も多く、当面は厳しい規制下が続きます。私もしばらくは移動せずにおとなしく過ごすつもりです。
でも、それでも、クリスマスはやってきます。
教会やパブ前などのスペースを使用し、クリスマスツリーを売る露店がたくさんでています。
毎年書いていますが、イギリスのクリスマスは「家族が集まって過ごす日」。今年はクリスマス期間中(12月23~27日)の5日間は行動制限が緩和し、イングランドでは「3世帯まで『家の中』で会える(=飲食店等、『家』以外の屋内での世帯ミックスは不可)」というルールになりました。この緩和を利用して実家に帰るのを心待ちにしている人は多いですが、「今緩和しても良いのか?」の議論もあり、複雑です。
街角の花屋さんで売られていたリース。赤や紫の木の実が差し色になっていてかわいいです。
我が家は日本人2人家族なので、イギリスには帰る実家がありません。毎年、友人に来てもらったり友人宅にお邪魔したりしてクリスマスを過ごしていますが、今年はお誘いするのも申し訳ないので静かに過ごすことになりそうです。
クリスマス後はまた感染が増え「きっと再ロックダウンだよね」と誰もが思っています。それでも「もうすぐクリスマス」と思うだけで、心がふわふわするものです。
誰にとっても厳しかった1年がもうすぐ終わります。どうか皆さまも安全で楽しい年末年始をお過ごしください。
そして来年が、平和で希望溢れる年となりますように!
I wish you a wonderful festival season!
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