宮田華子
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。
ウェブ:http://matka-cr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/
雨が少なく、さわやかな天気の日が多い6月。美しい季節を迎えているロンドンから、みなさまこんにちは。
6月はイギリスがもっとも美しい季節です。こちらは近所の公園。運動以外でも公園で過ごすことはOKになったので、人が増えてきています。
イギリスは6月1日から本格的にロックダウン緩和が始まりました。まずは小学校(3学年のみ)が再開し、野外マーケットや車のショールーム等の一部商業施設の営業も可能になりました。
そして6月15日からは、ソーシャルディスタンス対策を行っていることが条件ですが、デパートなどの「非必須店舗」の再開も始まる予定です。
最近天気が良い日が続いています。アイスクリームの移動販売に並ぶ人々。一応ソーシャルディスタンスを気にしつつ並んではいますが、ロックダウン緩和が発表されて以来、ややこの辺の意識も崩れ気味ではあります。
とはいえ「すぐに今まで通りの生活に戻っていいよ」ということではありません。公共交通機関もできるだけ乗車しないことが推奨されています。また通勤も、社内のソーシャルディスタンス対策やエレベーターの密室問題があるため、「在宅勤務が可能な人は在宅のまま」というのが基本です。
イギリスは新型コロナウィルス死亡者数が欧州最多なこともあり、これからも慎重に時間をかけて元の生活に戻っていく、という方針。我が家ももうしばらくは、2人で在宅勤務の日が続きます。
毎年この時期は、ロンドン中心部にあるリージェント・パークのバラ園に行くことを楽しみにしていました。これは昨年6月半ば過ぎに撮影した写真です。すでにバラの最盛期を過ぎており「来年は6月頭に行かないと」と思ったのを憶えています。しかしまさか今年、こんなことになるとは…涙。残念ですが、満開のバラを見るのは来年の楽しみにとっておきます。
さて日本でもイギリスでも、家で過ごしている期間に動画配信を楽しんだ人は多いと思います。
コロナ禍以降、ビジネス関連はあまりよいニュースがありません。しかし動画配信サービスだけは絶好調だったとのこと。例えばNetflixの場合、契約者の急増により欧州では解像度を落として配信していた時期があったほどです。
こうした有料サブスク系以外にも企業や個人がさまざまな動画を配信したため、動画周りが現在とても賑やかです。
そこで今回は、私がロックダウン時期に楽しんだイギリス発動画コンテンツのうち、「日本でも視聴できるもの」「たぶんもうすぐ日本でも配信できるもの」に絞ってご紹介したいと思います。
コンテンツ情報は、もっぱらオブザーバー紙(ガーディアン紙の日曜版)に挟んである「The New Review」を参考にしています。紙面デザインも素敵です。
3月に行動規制が発表され、アート&エンターテインメント施設は一気に休館しました。楽しみにしていたエキシビションもシアターも行けなくなりましたが、多くのアート関連施設がコンテンツを配信してくれたので「アートはいまや遠い場所」という感じがなく、2カ月以上過ごせています。
実は、このエキシビションは内覧会に行くことができたのですでに見ています。内容も見せ方も見ごたえがありました。
ウォーホルのかつらも展示…。このかつらのイメージも強いですよね、のウォーホル。 pic.twitter.com/wCoVA11Xdc
— イギリスについてつぶやく:ハナコです (@uknews_murmur) March 11, 2020
あまりに良かったので「もう1度行きたいな」と思っていたところでロックダウンになりました。そこでテートが公開したビジュアルツアー映像を見てみたのですが、「エキシビション全体を見せてくれる」というだけなく、ウォーホルの生い立ちに触れるなど、人間としての本人にも触れた内容だったので大変興味深く視聴した動画でした。
テートのYoutubeチャンネルで公開されている、「アンディ・ウォーホール展」を紹介した7分間の動画です。
この動画を見て、彼の残した作品だけでなく「人間・ウォーホル」のことをもっと知りたくなりました。
ロイヤル・オペラハウス。美しいガラス張りのファサードが目印です。
ロンドンのコベントガーデンにある「ロイヤル・オペラハウス」は「ロイヤル・オペラ」と「ロイヤル・バレエ」の拠点ですが、ロックダウン以降、毎週水曜日と金曜日にこれまでのアーカイブから異なる演目をフル配信しています。なかなかチケットを購入できないオペラやバレエが自宅で見られる、かなり贅沢なプログラムです。
こちらは5月22日に配信された「シンデレラ」の予告映像。配信後1週間、YoutubeおよびFacebookで視聴可能。
基本は無料ですが、「投げ銭方式」を採用しているので寄付することも可能です。
オペラやバレエの本拠地でのメイン・シーズンは冬季です。通常夏季は海外を巡業しています。しかし今年は海外ツアーも中止となりました。
現在のところ、イギリスはまだ舞台芸術の再開日程を発表していません。ロイヤル・オペラハウスはもちろんのこと、大小さまざまなステージ系カンパニーの経営が今後厳しくなることは必須です。こうしコンテンツの無料配信はロックダウン中に皆を励ましたいという意図に加え、この時期にファンを増やし、今後の舞台芸術振興につなげようという意図もある様子です。
こちらはイングリッシュ・ナショナルバレエのYoutubeサイトから。同バレエ団も演目をフルで配信していますが、特に力を入れてたのは「自宅でできるバレエ・レッスン」動画。同バレエ団の芸術監督でありプリンシパルでもるタマラ・ロホが自宅(?と思われる場所)からガッツリレッスンしてくれます。私はこのレッスン配信の大ファン。タマラ様のしなやかな動きを真似しつつ、ストレッチに力が入る毎日です。
配信サービス百花繚乱時代だけに、かなりマイナーな作品や「これって、日本語への翻訳が難しいのでは?」と思うドラマも日本で配信されていて驚くことがあります。
今回ご紹介するドラマはすべてBBCで放送されたものです。最近BBCは各配信サービスと仲良しなので、近い将来日本でも配信されると思います。
BBCオンラインで4月13日から配信(1話ずつ)、テレビ放送は4月19日から。全8話。
日本でもシーズン2まで配信済み、言わずもがなの超人気作ですね。私も大ファンです。楽しみにしている方も多いと思います。
こちらはBBCサイトのキャプチャ画面。うちはテレビがないので、もっぱらPCかスマホで視聴しています。イギリスの地上波テレビ局はサイトやアプリからも視聴可能で、見逃し配信もかなり長期間できるので便利です。現在シーズン1と2も視聴可能です。
今シーズンは、MI5を辞めたイブが「ある事件」をきっかけに、また少しずつ捜査に参加していく…という物語です。前半はイブよりヴィラネル(ジョディ・コナー)にフォーカスが当たっているのですが、今シーズンもヴィラネル様はクレイジー度MAXで働いてますよ~!
弾けてますよ~!ヴィラネル様♡
今回イブ(サンドラ・オー)は私の住んでいるロンドン南西部の韓国人街「New Malden」で暮らしているという設定です。見慣れた街並みが登場するという楽しみもあって、個人的にますます親近感が沸いております。
ぜひぜひ、ご期待ください!
4月26日にBBCのサイト&アプリで全話オ配信。テレビ放送は4月27日から。ちなみにアメリカのHuluでは4月27日にプレミア配信したそうです。全12話。
ここ数カ月でもっとも話題となったドラマです。サリー・ルーニー著のベストセラー小説をかなり忠実にドラマ化しています。
Today’s recommendation from #KeepReadingAndCarryOn is the epic love story ‘Normal People’ by Sally Rooney. If you’ve been captivated by the TV show, read the book that started it all! Order online for £6.29 (RRP £8.99) https://t.co/jayKTo6dQK #NormalPeople #RichardAndJudy pic.twitter.com/SpKOwn5oS8
— WHSmith (@WHSmith) May 6, 2020
オイルサーディーン缶の中の2人。小説版のブックカバーも話題になりました。
作者のサリー・ルーニー。ダブリン生まれの29歳。デビュー作「Conversations with Friends」(2014年)が3カ月で10万部を売り上げるベストセラーに。「Normal People」」(2018年)は彼女の3冊目の作品。
アイルランドの田舎町出身のマリアン(デイジー・エドガー=ジョーンズ)とコーネル(ポール・マスカル)が主人公。高校から大学までの数年間にわたる、2人の「離れられない関係」を描いた繊細な恋愛ドラマです。
現在BBCはオンライン上でさまざまな配信スタイルの実験をしています。ドラマの場合、大きく分けて
①週1話ずつ配信/放送する
②テレビ放映前に全話(ボックスセット)をオンラインで先行配信する
場合があるのですが、この作品は後者でした。
すると「一晩で一気に最終話まで見てしまった」という人が続出。「ロックダウン中、もっとも夢中になったドラマ」と形容されるようになりました。
マリアンとコーネルの関係は少しずつ変化するものの、特に大きな事件が起こるわけではありません。しかし美しいヴィジュアルと甘く切なく、そして時に苦い雰囲気が心に残り続け「後をひく」作品なのです。音楽の使い方もとても印象的であり、原作のファンにも好評でした。
このドラマはBBCとHuluの共同制作で作られているので、日本配信も早いかもです。こちらはHulu版の予告編です。
主役のデイジー・エドガー=ジョーンズはロンドン出身の22歳。初の大役ですが、透明感とみずみずしさを併せ持つ女優です。顔はアン・ハサウェイにちょっと似ています。個人的は、映画「JUNO/ジュノ」で初めてエレン・ペイジを見たときに感じた鮮烈さをデイジーにも感じました(顔は全然似ていませんが)。
なかなかの逸材。将来スターになりそうな予感満点なので、要チェックです。
オブサーバー紙の「The new review」の表紙に登場した主役2人。
2019年5月14日からBBCで、同年6月19日からHBOで放送。全6話。
これは昨年の作品なのですが、あまりに力強い作品だったので再度見直しました。2019年から始まる「ちょっと近未来のイギリス」を描いた作品です。EUを離脱し、独裁者のような首相が誕生し、AI化がどんどん進む激動の時代を生きるあるファミリー(リオンズ家)の15年間を描いています。
おばあちゃんからひ孫までの4世代の物語ですが、扱うテーマがとにかく幅広いのです。デジタル化、移民、紛争、性的平等、性的多様性、恋愛、不倫、経済破綻、極右政党の台頭、監視社会、福祉問題等々、時代は予測できないスピード感をもって変化していきます。と同時に決して変わらないものがあることもみせつられる物語です。
このシーンはなかなか衝撃的です。こんな風に↑デジタル・マスクを使って、容姿を変えることが出来るようになる日も近いのかもです(ちょっと便利そうではあるのですが)。
キャラの立つ登場人物が多数出てくるドラマですが、特に注目したいのはエマ・トンプソン演じるヴィヴィアン・ロック。地味目の起業家だった彼女が政治家を志し、そして独裁者になりあがっていく姿がリオンズ家の変化と並行して描かれていきます。
こ~んな政治家、確かにいそう。エマ・トンプシンの熱演が見事!
ヴィヴィアンがどんどん変化していく姿は、実在する某国T大統領を彷彿とさせます。またEU離脱後のダメなイギリス社会をかなり大胆に皮肉っており、その辺のウィットに富んだ描き方も魅力の1つです。
そして現代社会に対して「今、気づいて!」と警笛を鳴らしている勇気ある作品だと思いました。とにかく見ごたえアリアリの肉厚ドラマなので、日本にも早く届いてほしい!と強く願っています。
次回この記事を更新するころには、ロックダウンの終わりが見えているかもしれません。
人との距離を気にせず自由に話し、どこにでもふらりと立ち寄れる生活が戻ってくるときのことを今はまだ想像できません。でもすべての行動制限が解除になったとき、私が1番したいことは何だろう?と最近よく考えます。
これまでも様々なことが起こるたびに「当たり前のこと、普通のことなんてないんだなあ」と思ってきたものの、暫くすると忘れてしまっていました。
やりたいことはたくさんあるのですが、飲食業が解禁になったら、最初の週末はきっと新聞片手にパブかカフェに行くと思います。長々陣取ってゆっくりと新聞読みながら、これからのことを考えたいです。
最後にカフェでコーヒーを飲んだ時、世の中はまだ冬でした。これは行動制限が始まる直前の週末に撮影した写真です。遠い日のことのように感じています。
そんなことをぼんやり想像しながら、その日をゆっくり待っているこの頃です。
みなさまも、引き続きSTAY SAFE & WELL!
安全にお過ごしくださいませ。
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