宮田華子
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。
ウェブ:http://matka-cr.com/
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/
日本でも報道されていると思いますが、ブレグジット(EU離脱)がどうなるのか先が見えず、混乱極まりない状態で4月を迎えたロンドンです。みなさま、こんにちは。
私がロンドンに来て以来、様々な政治ニュースがありました。そのたびに、難解な政治がらみの英単語を調べつつ「一体何が起こっているのやら?」とゼイゼイ言いながら追いかけてきたのですが、今回ほどの混乱は初めてです。イギリスがどうなるのか? どこに行くのか? 全然分からない日々が続いています。
最近の新聞から。連日メイ首相の険しい顔が掲載されております。
本当なら3月29日にEUを離脱していたはずのイギリス。しかしメイ首相がEU側と2年かけてまとめた協定案がイギリス議会で可決せず、やむなく「離脱の延期」をしなくてはならなくなりました。
2016年に行われたEU離脱の是非を問う国民投票は、EU残留支持派と離脱支持派、国民を真っ二つに分断する出来事でした。52対48で離脱派が勝ちましが、今も分断は続いています。私はイギリス人ではないのですが(永住権はありますが、イギリス国籍はないので選挙はできません)、残留派が勝ってほしいと心から願っていました。
見応えがあるドラマだった。ありもしない数字を引き出して独り歩きさせる術は世界で有効なんだと改めて。この流れを変える方法ってないのだろうか?eu離脱がテーマだと、日本ではカンバーバッチファン以外に需要がない気がするので 、放送するか微妙かな。 https://t.co/QqLNCj4yNK
— イギリスについてつぶやく (@uknews_murmur) 2019年1月28日
ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマ「Brexit: The Uncivil War(ブレグジット:無礼な戦争)」も話題に。国民投票で離脱派を勝利に導いたドミニク・カミングス(離脱キャンペーン・ディレクター)を描いています。
イギリスに来たばかりのころ、強烈に感じたことの1つは「欧州間の近さ」でした。LCCは日本よりずっと前から一般化していたので、東京から大阪に行くぐらいの感覚でフランスやイタリア、そして北欧にも行くことができます。そしてEU加盟国の国民は、EU内移動にパスポートが不要なのです。
各国の個性はもちろんあるものの、たくさんの国に行き来できる自由。ビジネス、文化も含め、たくさんの機会がこの自由から生まれているのだなあと思ってこの10数年を過ごしてきました。なのでイギリスがEUから離脱すると決定したことは残念でなりません。
しかし離脱決定から3年弱、イギリスが離脱を宣言して2年以上も経っているのに、この混乱。3月23日には「ブレグジット反対」と「再国民投票」を訴えるデモに何と100万人もの人々が参加し、ブレグジットのキャンセルを求めたオンライン請願書は署名者数が600万人を越えました。国民投票を行ったものの、EU離脱について、国民レベルでの議論はまったく熟していなかったことを痛感しています。
Last Saturday, 1 million people from every corner of the UK came to London to march on Parliament with one demand: that the Gov's Brexit deal is put to the people in a #PeoplesVote.
— People's Vote UK (@peoplesvote_uk) 2019年3月28日
It's clear that a #PeoplesVote is the only way forward. Please RT: pic.twitter.com/BkxQhLXS8W
EU離脱反対を訴える100万人参加のデモ「People’s march」。キーラ・ナイトレイ等のセレブたちも参加を呼びかけ話題になりました。
先の見えない混沌の中におりますが、私もデモ行進の端っこに参加して少しの希望と元気をもらいました。そしてデモ終了後、ロンドン中心部からやや南東にあるロザーハイズ地区で行われている「スカンジナビアン・マーケット」に行ってきました。
Save the date! Scandinavian Spring Market 2019, Saturday 23 March 11-19 #scandimarket #scandinavian #springmarket #Rotherhithe #se16 #finnishchurchinlondon #norwegianchurchinlondon pic.twitter.com/dykdpRhPAI
— Scandimarket (@scandimarket) 2019年1月29日
日本では北欧家具やデザインが人気ですよね。イギリスでも北欧家具&デザインは人気で身近な存在です。というより、何よりIKEA(イギリスでは「アイケア」と発音します)がイギリスの一般人の生活に本当になじんでいるのです。
IKEAがイギリスに進出したのは1987年だそうですが、現在ロンドン周辺部だけでも7店舗もあります。引っ越しの度にIKEAに通い、そして家具を買い足そうと思ったらまずIKEAに行ってみる。そんな「IKEA詣で」を続けているの人は多いはずです。
IKEAそのものの雰囲気は日本のIKEAとあまり変わらないそうです(帰国した友人談)。
IKEA以外にも北欧スタイルのカフェやレストラン、そして家具や雑貨をロンドンでよく見かけます。北欧を語るとき、皆「ちょっと憧れ」のまなざしを漂わせるのはイギリスも日本もほぼ同じです。
ロザーハイツには船着き場があります。昔、北欧諸国からの輸入品がこの場所で荷揚げされていたそうです。フィンランドとノルウェーの教会が同じストリートにあり、ここを拠点にロンドンにおける北欧コミュニティーが形成されました。教会がある同じストリートで、毎年3月と11月にスカンジナビアン・マーケット(蚤の市)が開催されています。
小さなストリートにストールが並び、たくさんの人が訪れていました。国旗にちなんだ色なのか、赤と青のテントが鮮やかで可愛かったです。
ストールは北欧の生活雑貨と美味しい食べ物が中心です。北欧は寒い国々だけに家の中を暖かく、楽しく過ごすためのインテリア雑貨もいろいろありました。
毛布やカーペット、ファー等、暖かなインテリア・ファブリックがいろいろ。
何気ないパターンにも北欧デザインのかわいらしさを感じます。力強く値段交渉中のお姉さん。たくましい…
ソファーに置く動物の形のぬいぐるみのお店で。これはダックスフンドの形。ちょうど頭をのせて昼寝するのに良さそう。
こちらはビンテージのキッチン雑貨の店。キャサリンホルムのロータス柄のケトルやマリメッコのガラス食器を中心に販売していました。
ランチ時だったこともあり、食べ物系の屋台には長蛇の列が!
スウェーデンのミートボールとマッシュド・ポテトのお店。
こちらはフィンランドのミートボールのお店。焼きたてのミートボールとピタパン、そしてビーツの山盛りサラダが添えられていました。こちらも長い行列でした。
この日の私の戦利品は、↓こちらの雑貨屋さんの…
↓こちらのケーキ型(?)にごちゃっと盛られていた中から探し出した…
1個1.50ポンド(約200円)の値札が。
ムーミン一家の皆様!です。
すでに我が家の住人となったムーミン・ファミリー。
実はよく見ると、ムーミン本人がいないのです。半端なフィギュアたちなので安く販売されていたのだと思います。まとめて何個も買ったので、少しおまけしてくれました。こういうちょっとしたやりとりが、マーケットの楽しみです。
マーケットと同じ通りにあるフィンランド教会では「フィンランド・フェスティバル」と称してこちらでも屋内マーケットが開催されていたので入ってみました。
フィンランド建築らしい、木の質感とシンプルなデザインの教会です。
お菓子やパン、調味料や瓶詰、粉類等、フィンランドの食品が量もタップリ、かなりの種類が並んでいました。フィンランド語が飛び交い、懐かしそうにお菓子を物色する人が多かったのが印象的です。子供の頃に食べたものは、どこに行っても懐かしいんですね。
奥にはベーカリーやカフェもあり、焼きたてパンを試食もさせてもらいました。少し酸っぱい黒パンにバターたっぷりつけたもの、本当に美味しかったです。2階ではクラフト類がテーブル販売されていました。
パッケージも味わい深いものが多くて、見ているだけで楽しくなりました。
フィンランド語が読めない人は、販売を手伝うボランティア・スタッフに聞いたり、アプリで調べたりしながら買い物していました。イラストがダサ可愛い真ん中の袋はパンケーキ・ミックス。
同じ欧州諸国でも、イタリアやスペインなどのラテン系国出身者、そしてポーランドなどの東欧出身者の人たちにはよく出会いますが、ロンドンに住む北欧人は絶対数が少ないのでしょうか、北欧系のお店以外ではあまり北欧人に会うことがありません。でも今回、特にこの教会の屋内マーケットの様子から、ロンドンで生きる北欧人たちの生活を少し垣間見ることができました。
北欧家具やインテリア雑貨はロンドンにたくさんあるデパートやインテリアショップ等、さまざまなショップで販売されています。「スカンジウム」は、北欧製のものをメインに集めており、北欧デザイン好きにはたまらないお店です。
ロンドンに2店舗、ケンジントン地区とメリルボーン地区にあります。今回行ったのはメリルボーン店です。
1階部分は食器やキャンドルスタンド、ムーミン・グッズ等の雑貨や小物、地下1階は椅子、照明器具、クッション、ガーデン用家具等を中心にレイアウトされています。
地下1階。椅子と照明がずらりと並んでいます。
北欧系のお店に来ると、よく「インテリアに黄色っていいな」と思うことがあります。日照時間が少ない時期もあるだけに、インテリアに明るさ、暖かさを求めているのでしょうか。白木や白の家具に黄色はよく映えます。今回もクッションコーナーの黄色が目に留まりました。
ファブリックを選び、クッションをオーダーできるコーナー。黄色はパンチのある色。上手に使える自信がないので、我が家ではまだ未採用。そのうち…試してみますw。
ガラスやセラミックのコーナーは、「いつか我が家にいらっしゃい~」という思いを込めてひと巡り。
カラフルなキャンドル・スタンド。イギリスでキャンドルは日常的に使います。白いテーブルクロスの上で映えそうなデザイン。
北欧デザインのドット柄に心惹かれます。こちらはマリメッコですが、いつかグスタフスベリのものを買いたいです。
店内のちょっとしたコーナーのアレンジを見るのもこのお店を訪れる楽しみです。「真似したい」「こんなコーナーがあったらいいな」と思う工夫を必ず発見できます。
白木でできたコンパクトな鏡台&ハンガーのコーナー。壁の色とも合っていて、シンプルで好みでした。毎度出かける前は戦争のような勢いで顔に化粧を塗りたくっているワタクシです。我が家にもこんな一角があったら、もう少し穏やかな気持ちで外出準備を楽しめるのでしょうか…。
そして実はワタクシの最大の楽しみは子供部屋コーナー。可愛いおもちゃや小物を発見できることが多いからです。
そして今回はこんなものを見つけてしまいました! エコ建築のドールハウス、その名も「グリーンドールハウス」!
ワタクシ、子供のころからドールハウスやらミニチュア系に目がないのです。大人になってかな~り久しいのですが、いまだにこの手のモノから目が離せません。
お値段は219.99ポンド。現在の円高レートでも3万3,000円ぐらいします。お子様のおもちゃとしては高額すぎますね。通常はアンティークのドールハウスに心奪われていますが、北欧風エコハウスなんて斬新! いいな~と思って調べると、実はタイ製でした(笑)。まったく北欧ではないですが、テイストを合わせてうまく取り揃えているのも見事です。
余談ですが、こちらはいつも見ているオランダの木工家具のブランドのインスタ。子供用キッチンセットにウットリしている変な大人(←私)です。いつか広い家を住み替えることができたら、ドールハウスやらミニチュアやらのコーナーを作りたいなあとぼんやり夢見ております。
…と大の大人が子供部屋で妄想しながらはしゃいでいるわけなのですが、本物のお子様たちがまったく興味なさげで(↓)、ちょっと笑ってしまいました。
子供部屋コーナーの向かいにあるソファーで、たいくつこの上なさそうな女の子と、読書にふける男の子。ドールハウスにもおもちゃにもお尻を向けていました。
いろいろヒントをもらい、大満足してお店を後にしました。
最近は北欧はもちろんのこと、欧州関係のお店に行くたびに「今後こういったお店はなくなってしまうのだろうか?」と思います。イギリスがEU圏内である限り、EU諸国からの輸入品に関税がかかっていません。でもEUを離脱してしまえば、関税が掛かり、また検品の義務も生じるのですべて値上がりするでしょう。
IKEAの安くておいしいミートボールも「ぜいたく品」になってしまうのでしょうか…。
多文化共生がロンドンの特徴であり、この街の良さ・楽しさの1つだと思っています。今回は「ロンドンの中の北欧」を一部ご紹介しましたが、大好きな北欧カフェ、大好きなデンマーク料理のレストラン、いろいろあります。EUを離脱した後も同じように営業してくれるといいのですが。
いつ行っても混んでいる、シナモンロールが美味しいカフェ「Nordic Bakery」。
来月にはもう少し、様子が分かっているはずです。この国で生活するものとして、事の行く末を心配しながら見つめています。
今回紹介したお店:
Skandium(スカンジウム)
https://www.skandium.com/
※「北欧の国」と言われている国のすべてがEU加盟国ではありません。北欧理事会に加盟している5か国3地域の内、EU加盟国はスウェーデン、デンマーク、フィンランド。ノルウェーとアイスランドは加盟していません。
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