「はじめまして」のごあいさつ

宮田華子 
ロンドン在住ライター。メディア製作会社に勤務後、2011年からフリーランスのライターに。デザイン、アート、建築、クラフト等を得意とし、文化&社会問題について日本の媒体に執筆。編集ユニット「matka」として、ウェブマガジンも運営している。2015年にロンドンで小さなフラット(マンション)を購入。日本とは異なる一筋縄でいかない「イギリス・家事情」に翻弄される日々を送っている。 
ウェブ:http://matka-cr.com/ 
インスタグラム:https://www.instagram.com/hanako_london_matka/

みなさま、はじめまして。

今回からREISMさんでインテリア・コラムを書かせていただくことになった宮田華子です。ロンドンに暮らして10数年、9年間の会社員生活を経て、現在はフリーランスでライターをしています。デザイン、アート、建築を中心にカルチャー全般・社会問題などについて、日本の雑誌、新聞、web等に記事を書いています。

フラット購入をきっかけに、取り組み始めたインテリア

これまでにもインテリアや建築、ホームウェアのデザイン等について書く機会は多かったのですが、仕事としてではなく、私自身が「生活者」としてこの分野に前のめりで取り組みはじめたのは今の家に引っ越してからです。

南ロンドンに小さなフラット(=マンション)を旦那のヒト(←日本人)と購入したのは2015年7月。間取りは2ベッド(リビング+2寝室、つまり日本の2LDK)、サイズは小さめ。まさに「狭いながらも楽しい我が家」(笑)なのですが…。

入居した瞬間に思いました。

「この『がらんどう』、どうにかしなきゃ…」と。

私たちのフラットは駅前通りの角にある3階建てのビルにあります。2階と3階が計5戸のフラットになっており、すべてリノベーションした状態で販売されました。冷蔵庫や洗濯機はすでに設置されていましたが、家具をはじめとした家財道具は何もついていません。特徴のないシンプルな内装で、つまりただの「白い箱」。

日本では賃貸でも売買でも「家具なし・家財道具なし」物件が当たり前ですが、私たちはイギリスに来て以来ずっと基本的な家具&家財道具がついている賃貸(←イギリスでは一般的です)で暮らしてきました。しかも私はフラットシェア(日本でいう「シェアハウス」)で暮らしていた時期も長く、食器や家具を自分で持たなくていい暮らしをしてきたので「がらんどう」状態への入居はかなり久々の経験です。

古い家が多いイギリス。前の持ち主のテイストそのままの物件が多いのですが、私たちは自分でインテリアを工夫したかったのであえて「白い箱」がいいと思いこの家に決めました。しかしその後の購入手続きがあまりに大変すぎて(←今後少しずつ悲惨な購入劇についてもお話します(笑))、インテリアのことはすっかり忘れていました。

趣味で集めていたわずかな食器と調理器具、いくつかの本棚は持っていたものの、ダイニングテーブルや椅子、ソファーなどの大物家具を持っていませんでした。

入居日当日。内覧した数カ月前以来、久々に見た「白い箱」。ほんとに、何にもない…。

「…この家、形になるのかな?」

とちょっとだけ不安に思ったのを憶えています。

大して広い家でもないのに、モノがまったくない箱の中にいると、人はどこに身を置いていいのか分からないもの。ひとまず部屋の端っこに布を敷き、段ボールをいくつか並べてちゃぶ台替わりにしてご飯を食べる。そんなところから新生活をスタートしました。

入居時に決めた、2つのこと

その日から2年9カ月。

ダイニングテーブルを買うのに1年、椅子を買うのに2年強(!)掛かりましたが、やっと「人が住んでいる感じの家」になってきたような…気がしています。

こちらが2年以上掛けて揃えたダイニングテーブルと椅子です。テーブルはコッツウォルズ地方にあるアンティークショップ、椅子は蚤の市で、どちらも超格安で入手しました。こんなに時間がかかったのはこだわったからではなく、全然探しに行かなかったからです(涙)。

家の中に今も「何もない地帯」はあるものの、生活感溢れる「モノ密集地帯」も広がりつつあり、両極端な空間が共存する大変「アンバランスな家(笑)」に成長しています。

実は「がらんどう」我が家に入居した日、旦那のヒトと決めたことが2つあります。

1つは「気に入ったものが見つかるまで、家具や雑貨を絶対買わない」こと。

何もない家を目の前に「さてどうしよう」と思ったぐらいの2人ですから、当時インテリアに対して「こうしたい」という明確なビジョンがあったわけではありませんでした。

慌てて買いそろえたら絶対失敗しそう。住みながら話し合い、「これなら、失敗してもいいから買いたい!」と思うぐらい気に入った家具や雑貨を1つ買ってからまた考える。そんな「ゆっくり方式」の方が失敗しないのでは?と思ったのです。私たちは車を持っていないので、失敗してしまうと(大物家具は特に)売るのも捨てるのも大変です。そういうストレスもなるべく避けたい…という現実的な理由もありました。

もう1つは「できるだけモノは増やさない」ことです。

これは私が「ややミニマリスト」的趣向を持っていることと、そもそも収納力のまったくない家であることが理由です。

収納がないことは内覧のときから気づいていました。小さな納戸が1つついているだけで、収納スペースはほぼゼロ。モノが少ない状態をキープしつつ、「収納スペース」をどうにか作り出す工夫をしなくてはなりません。

インテリア1年生の2人が楽しみつつ、しかも身の丈にあった方法で家づくりをしていくために考えた上での2つのルールでした。

とはいえ、ダイニングテーブル&椅子が揃うのに2年…というのは長すぎますね(笑)。実はソファーを買うのも1年半掛かり、コーヒーテーブル(センターテーブル)はまだありません。

ソファー前。テーブルがないので、座った人が手に持ったお茶の置き場所を探してウロウロしてしまいます。来てくださった皆様、ごめんなさい。

こんなスローペースで「何とかしたいインテリア」に試行錯誤する日々を送っています。

イギリス暮らしは日本と事情が異なることも多々あり、すでに家にまつわる「痛い目」に何度も合っています(涙)。しかしイギリスは「家に時間もお金を掛ける」伝統がある国です。活気のあるデザイン産業、そしてインテリア関連のフェアやお店も多く、この分野から眺めるイギリスはとても面白いのです。

毎年秋に「Open city」というイベントがあり、普段なかなか入れない巨大ビルや大使館、また個人宅を見ることができます。こちらはチェルシー地区にある個人宅にて。一見シンプルな部屋ですが、柱に描かれたパンダが微笑ましいですね。

こちらも「Open city」で見せてもらった家。建築家が自分で設計した家だそう。地下がスクリーンルームになっていて、灯りの色や電飾を変えられます。音楽を流せばクラブ風にもなるとのこと。

こうしたイギリス的家事情やインテリアのトレンド、そして私が足したり、引いたり、困ったりしている「日々のインテリア」等、ロンドンでキョロキョロしながら見聞きし、考えたあれこれを今後書かせていただけたらと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします(ペコリ)。