不動産投資は、不動産物件を購入し、それを第三者に貸し出すことで得られる家賃を、利益とすることができる投資の方法だ。老後の資産形成やインフレリスクに対応するための手段として、不動産投資を考える人もいるだろう。
だが、不動産投資にはほかの投資手法と同様に、多くのリスクが潜んでいる。ここでは、不動産投資を始める前に知っておきたいリスクについてまとめてみた。
不動産投資には、8つのリスクが潜んでいる。物件を購入した後は、いや応なしにこれらのリスクに対応していかなければいけなくなることを覚えておこう。
不動産投資の一番のリスクは空室だ。いくら利回りが高くても、借り手がつかなければ一切利益を得ることはできない。もうけるどころか、ひたすら経費を支払うだけになってしまう。
空室リスクを回避する方法として、入居者がついている中古物件を買ったり、サブリース契約(※1)を結んだりする方法があるが、何事もリスクがないとはいえない。
現状は入居者がいるからといって、半年後、1年後も入居し続けるとは限らない一方で、不動産投資のためのローン支払いは、十年、数十年と長期間続く。つまり、空室期間が長ければ長いだけ利益は減少していくことになるのだ。
※1 サブリース契約…所有している不動産物件を管理会社に託し、物件の入居者募集や賃料回収を任せた上で、一定の保証賃料を受け取る契約。
不動産投資では、たとえ入居者がいたとしても、家賃を滞納されてしまった場合、利益を得ることができない。
入居者がいない場合は、家賃を下げる、広告を出すといった対処法がとられるが、家賃を滞納されたからといって、ただちに退去を求めるわけにもいかない。
そのため、大きなトラブルや損失につながりかねないリスクだといえるだろう。
不動産を購入した当初、月々のローン支払額よりも高額の家賃を得られる見込みであったとしても、それが長く続くとは限らない。
周囲の類似物件とのバランスや入居者の需要によっては、家賃を下げなければ入居者が見つからなくなってしまうこともある。そうなれば、当初期待した利回りを実現することはできない。
不動産投資のメリットに、不動産を保有し続けることでインカムゲイン(安定的・継続的に得られる利益)を得られると同時に、不動産を売却することでキャピタルゲイン(購入したときよりも高く売却して得られる利益)を得られることが挙げられる。
ただし、これは保有している不動産の価値が下落していない場合に限った話だ。
不動産の売却価格がローン残高を下回った場合、利益を得るどころか、不動産売却時に残高返済のための、まとまった資金を失う可能性すらある。
不動産投資のリスクを考えたとき、多くの人が思い浮かべるのが、地震や火災、風災といった災害によって物件価値が下落するリスクだろう。
火災保険や地震保険などに加入することで、一定のリスク対策をすることはできるが、万が一大きな災害に見舞われた場合、不動産の処分もできないまま物件を持て余す可能性もある。
不動産の賃貸では、入居者の責によらない物件の不具合が出た場合、オーナーが速やかに修理を行わなければならない。これは、給排水設備や換気扇といったそもそもの物件自体の不具合だけでなく、エアコン等、付随設備の不具合についても同様だ。
さらに、マンションでは定期的に大規模な修繕も行われる。修繕積立金を毎月支払うことになるが、これが足りなければ所有者として一時金を支払わなければならない。
たとえ一時金が不要であったとしても、一般的に修繕積立金は築年数が経過するほど上がっていくため、当初の利回りが続くと考えるのは危険だ。
投資用物件を現金で購入する投資家はそれほど多くないだろう。しかし、ローンを組むことは、金利が上昇するリスクもあるということだ。
固定金利であれば問題ないが、変動金利でローンを組んだ場合、金利がある程度上昇しても支払いを続けられるかどうか、検討しておく必要がある。
投資にはさまざまな種類があるが、その中でも不動産投資はかなり流動性が低い投資商品だといえるだろう。
不動産投資用の物件は、売却することでまとまった額の資金を得ることができる。しかし、不動産は売却しようとしても簡単に売れるものではない上、買い手が決まっても現金を手に入れるまでにはある程度の時間がかかる。
つまり、不動産投資は、いざというときの支出に対応するための資産としては、適していないといえるだろう。
もちろん、不動産投資はデメリットばかりではない。メリットとデメリットを比較して、自分にとって適した投資手法であるかどうかを検討することが大切だ。
続いて、不動産投資の5つのメリットを紹介しよう。
不動産投資は、入居者がついてさえいれば、長期的に毎月利益を得られる。
老後の資金として、本業以外の副収入として考えている場合は、大きなメリットとなるだろう。
不動産投資は、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を得られる投資。
売却することでまとまった資産を手にすることができるため、「老後の生活費として毎月賃料を受け取っていたが、老人ホームに入居するタイミングで売却し、利益を入居一時金にあてる」といった利用の仕方も考えられるだろう。
流動性が低いことから急な支出には適さないが、計画的に活用すればメリットが得られるといえるだろう。
ローンを組んで不動産投資を行った場合、団体信用生命保険(団信)に加入することで、万一のときに家族にマンションを遺すことができる。
毎月、生命保険料を支払う代わりに不動産投資していると考えれば、利益がそれほど大きくなくても、一定のメリットはあると考えられる。
相続が発生した際の不動産の評価額は、建物が固定資産税評価額(※2)、土地が路線価(※3)をもとに計算される。
これらの金額は実際の取得額よりも低くなるため、多額の資産がある場合は、現金で遺すよりも投資用物件を購入したほうが相続税を軽減できる。
※2 固定資産税評価額…毎年1月1日現在の土地・家屋を所有する者に対して課される、固定資産税の基準価格。
※3 路線価…相続税・贈与税の税額計算において、土地の価格を決める指標。(市街地の)道路に面した土地の評価額。
不動産投資は、ローンを組んで投資ができる数少ない商品だ。
ローンが組めるということは、手元の資金を減らさずに投資のメリットだけを得られることでもある。
手元の資金を有効活用することを考える上で、投資資金のほとんどをローンでまかなえる不動産投資には、ほかの投資商品にはないメリットがあるといえるだろう。
不動産投資をする際には、リスクを理解した上で物件選びをする必要がある。できるだけリスクを回避し、大きなメリットが得られる物件を見つけるためには、物件そのものの長期的な価値を見極める目を養うことが大切だ。
広告や宣伝文句に躍らされて問題のある物件をつかむことがないよう、投資先は注意深く選定しよう。
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