学生時代は両親の庇護下にあった人も、卒業・就職を経て、独立した社会人としての一歩を踏み出すことになる。一人の大人として自分の人生に責任を持つためにも、いざというときは親に頼ればいいという姿勢ではなく、自分自身でリスクマネジメントをしていくことが大切だ。
そこで考えておきたいのが「保険」について。もしものときの助けとなってくれる保険だが、民間保険にはさまざまな種類があるため、どれを選べば良いのかわからないという人も多いだろう。そこで、社会人として知っておきたい保険の基礎知識と、新社会人におすすめの保険についてまとめた。
会社を通して加入している健康保険や雇用保険、厚生年金保険などは、「公的保険」と呼ばれ、強制的に加入しなければならないものだ。一方、これから紹介するのは、保険会社が提供している「民間保険」であり、加入するのもしないのも、それぞれの人の自由となっている。
ここでは、民間保険にはどのような種類があるのか、第一分野から第三分野まである分野ごとに分けて紹介する。
第一分野の保険とは、いわゆる「生命保険」に該当するタイプの保険だ。死亡時に保険金が受け取れるもので、具体的には次のような種類がある。
第一分野の保険とは、いわゆる「生命保険」に該当するタイプの保険だ。死亡時に保険金が受け取れるもので、具体的には次のような種類がある。
・定期保険
定期保険に加入すると、一定の期間のあいだに死亡した場合、保険金が受け取れる。保険金の額は一定で、例えば「60歳まで3,000万円」といった保険の場合、60歳までに死亡した場合、死亡時の年齢や加入後の年数にかかわらず、保険金の受取人(あるいは相続人)は3,000万円を受け取れる。
しかし、保険期間よりも被保険者が長生きした場合、保険金を受け取ることはできない。なお、掛け捨ての保険となるため、掛け金が割安で済むというメリットがある。
・養老保険
養老保険は貯蓄性のある保険で、一定期間経過後は満期金として被保険者が死亡した場合と同額の保険金が受け取れる。つまり、一定期間内に死亡した場合は死亡保険金、それよりも長生きした場合は、満期金を受け取れることになる。もしものときの備えと老後の備えの両方を同時に行えるというメリットがある半面、掛け金が高額であるという難点がある。また、途中で解約した場合は解約返戻金が受け取れる。
・終身保険
終身保険は、一生涯保障が続く生命保険で、死亡時に必ず保険金を受け取れる。一方で、満期という概念がないため、生存しているあいだに満期金を受け取ることはできない(解約した際、解約返戻金を受け取ることは可能)。
第二分野の保険とは、損害保険会社が取り扱う保険のことで、人ではなく物にかける保険である。
・自動車保険
自動車保険は、法律で加入が義務付けられている自賠責保険と、任意で加入する自動車保険に分けられる。自動車事故が起こった際の対人賠償金や自動車の修理費用、交渉の際の弁護士費用などをカバーする役割を担っている。自動車を保有しているのであれば加入しておきたい。
・火災保険
火災保険は、火災、落雷、ひょう、水害などによって、家や家財が被害を受けたときのための保険だ。
・地震保険
地震を原因とする火災や津波による被害を受けた場合、火災保険では補償を受けることはできない。地震による被害をカバーするためには、地震保険に入る必要がある。なお、地震保険は単独で加入することはできず、火災保険に入らないと加入できない。
第三分野の保険は、入院や手術などに対する保険で、「医療保険」と呼ばれるものが該当する。
生命保険会社は第一分野、損害保険会社は第二分野の保険とそれぞれ取扱い分野が分かれているが、第三分野の保険に関しては、どちらの保険会社も取り扱うことができる。
・医療保険
医療保険に入っていると、病気、ケガで入院したときや手術をしたときに保険金が受け取れる。手術費用や入院費用をカバーできるだけでなく、病気やケガで働けないあいだの収入源として活用することも可能だ。
・がん保険
がんになったときに、一括で保険金が受け取れる保険や、がんを治療するための通院・入院・手術などにかかる費用を補償してくれる保険ががん保険だ。何に対して保険金が出るのか、解約返戻金の有無などは、契約内容によって異なる。
・所得補償保険
所得補償保険とは、病気やケガによって働けなくなったときに、収入を補填してくれる保険のこと。
ただし、補償される金額の上限は、加入している保険商品によるが、平均月間所得額の40~85%程度となるので、適正な保険金額を設定するようにしよう。
数ある保険のうち、特に新社会人におすすめしたい保険を2種類紹介しよう。
どの保険に入るか決めかねているという人は参考にしてほしい。
20代の新社会人にとって、医療保険やがん保険の給付を受けるような大病は、あまり身近ではないかもしれない。しかし、勤め始めたばかりでそれほど貯金もない状態で病気になってしまったときのことを考えると、治療費と病気やケガで働けないあいだの生活費として利用できる医療保険やがん保険には加入しておいたほうがいいだろう。若いうちに加入すれば、掛け金も少額で済むため、手取り額が少ない新社会人であっても無理なく加入することができる。
なお、満期金や死亡保障がついた手厚い保険は、その分掛け金も高い。新社会人には、低コストで万一に備えられる掛け捨ての保険がおすすめだ。備えは大切だが、あくまでも無理のない範囲で加入するようにしよう。
バイク、自動車、自転車などの交通手段を使っているのであれば、必ず保険に加入しておきたい。バイクや自動車、自転車での事故は、自分自身のケガや乗り物の破損リスクだけでなく、第三者にケガをさせてしまうリスクもある。多額の賠償金を支払わなければならなくなった場合を想定して、これらの保険に加入しておこう。
損害賠償に関する保険は、掛け金もそれほど高くない。「自分は事故など起こさない」と過信することなく、万が一に備えておくことが大切だ。
一方、新社会人にとってはあまり加入の優先度が高くない保険もある。多くの保険に加入して、生活を圧迫してしまわないよう、優先度の高くない保険への加入は見送ろう。
新社会人であっても、すでに結婚して子供がいるという場合は、生命保険への加入を検討したほうがいいだろう。しかし、そうでないのであれば、自分が死亡した後の保障を重視する必要はないはずだ。
もし、自分が死亡した後の葬式代くらいは用意しておきたいということであれば、比較的安価な共済などを利用するのがおすすめ。「若いうちに加入すれば保険金が安い」などと勧誘されることもあるかもしれないが、きちんと保障内容を吟味して保険を選ぶようにしよう。
貯蓄型の生命保険や養老保険なども、新社会人にとって優先度が高い保険とはいえない。貯蓄型の保険は掛け金が高額になるため、手取りが少ない新社会人にとって大きな負担になってしまう。将来のために貯蓄したいというのであれば、自由に引き出すことができない保険商品ではなく、自由度が高く目的に応じてすぐに現金化できる金融商品を選ぶべきだといえる。
新社会人になったら、人生のセーフティネットとしての保険加入を検討しよう。ただし、「加入すべき保険」は、それぞれのライフステージによって異なる。
やみくもに加入するのではなく、今どのような保障が必要なのかを見極めた上で、必要な保険に加入することが大切だ。すすめられるまま加入するのではなく、自分自身で知識を身に付け、過不足のない保障を得よう。
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