File No.97Kitchen K.Yさん work:ミュージシャン&システムエンジニア

キッチンに音と花が溢れる、
ほんわかオレンジデイズ。

今から40年ほど前、頭文字にBのつく職種は彼氏にすると大変だという触れ込みがあった。“バーテンダー”“美容師”そして“バンドマン”。どれも女性にモテるから、付き合うと泣かされるという理由で、理不尽にも挙げられたのだ。

そんな昭和な刷り込みを持っていたためか、Kitchenに住む住人が“バンドマン”だと聞いて、黒を基調にした部屋や尖った風貌なのでは……などと偏った人物像を描いていた。

ドアを開けると、「あぁ、どうぞ」とほんわかボイスで招き入れ、恥ずかしそうに部屋を案内してくれた。そんなYさんを見て、そして通された部屋を見て印象が180度変わった。



要所にオレンジ色を散りばめ、花や緑が部屋を飾る。観葉植物を入れた籠や花瓶、全てがなんてラブリー! 心の声が漏れ出てしまった。

「オレンジ色が好きなんです。オレンジ色と黄色を部屋の基調にしたくて、ポイントで置くようにしてて。観葉植物はもともと置いているんですけど、花は人が来るときに飾るようにしているんです」

セパレートタイプの広々としたキッチンには、インテリアだけでなく、本来の役割であるキッチングッズが所狭しと並ぶ。

「母親が料理の先生なんです。だから、この部屋にあるキッチン道具はほとんど実家からもらったもので。一応、一通りあると思います」

ということは、日頃から料理をしていると?

「基本、料理は毎日しています。節約にもなるし、もともと料理を作るのが好きなんで。いろいろ作るんですけど、得意なのはパスタですかね」

そう言うと、アイコニックなタイガーの形のラグの上で、手際よく料理をはじめたYさん。香辛料の香りがなんとも食欲をそそる。

花をこよなく愛し、料理はお手の物。物腰はやわらかで、ちょっと恥ずかしがりや。本当にバンドマンなのかと疑ってしまう。

「いやいや本当にやってますよ(笑)。ただ、それだけでは食べていけないので、エンジニアの仕事もしています」

OREANGE RANGEの影響で12歳からドラムをはじめ、高校では吹奏楽に入っていたというYさん。父親も音楽をやっていたといい、家では常に音が溢れていたという。

「結構早い段階で、音楽を続けながら仕事を持つっていう道筋はできていて。フルリモートのエンジニアの仕事は、音楽活動の時間を作りやすくて、自分のペースでやれるので合っているんです」

バンドマンとエンジニア。異業種の二刀流。音のように次々と溢れるYさんの一面に、心をすっかり掴まれてしまった。

立ち退きが出会いの足がかりに。
偶然が招いた最高の部屋。

REISMのリノベーションシリーズの中でも人気を誇る「Kitchen」。料理をするYさんだが、キッチンをメインで探したのだろうか。

「前に住んでいた部屋が立ち退きになって、急遽、部屋を探すことになったんです。料理をするので、キッチンが充実したところを探していたんですけど、なかなかなくて。そんなときにgoodroomでREISMのこの物件を見つけたんです。キッチンが充実してるし、部屋の感じがすごく良くて。バンドの練習で渋谷や新宿に行くのにアクセスもしやすくて、すぐに決めました」

Yさんが住むこのエリアは、駅周辺にスーパーや飲食店が並び、住みやすさも抜群。最近は飲食店を探しに散策しているそう。

「駅の近くにすごく良いカフェがあって。コーヒーが好きなんで、お店で豆を買うこともあります。豆を挽いてコーヒーを淹れて、チョコを食べながら一息つくのが幸せで」



エスプレッソメーカーやフレンチプレスもしっかり揃えられ、籠の中にはいつでも楽しめるようにとチョコレートがびっしり。ここでもオレンジ色がアクセントになっている。

「もともとオレンジ色が好きなんですけど、オレンジ色を使った部屋紹介をしている人がいて、その人の部屋を参考にしたところはあります。カウンター前に置いている椅子はその人が紹介していたIKEAの椅子で、すごく可愛かったので買いました」

ほんわかした見た目と口調。オレンジ色が人柄と合っている。

「そうですかね。ちょっと照れます(笑)。部屋にあるものは前に住んでいた部屋から持ってきたものなので、買い足したものはほとんどないんですよ。籠を買いそろえたくらいで。今は、収納用の棚を買い足したいですね」



シンク下の棚には本やDCが並ぶ。ドラムのパーツカバーやギターもオレンジ色と黄色で揃えられている。その横には古着屋で買ったという服がびっしり。

「この部屋は造りがシンプルで窓が多いので色が映えるんです。急遽、家を出ることになって決めた部屋ではあるんですけど、すごく気に入っています」

はにかみながらそう語るYさん。窓から入るやわらかな光のように、言葉のひとつひとつに温かさがにじんでいた。

(左)お籠り感のあるベッドスペース。ここもオレンジ系の色味で統一されている。可愛らしいぬいぐるみが枕のまわりを囲み、眠りにつく時間を幸せに包んでくれる。(右)「このデスクで仕事をしているんですけど、長時間座りっぱなしだとよくないんでたまに立ちながらやっています」デスク上に飾られている天狗のお面がなんともお茶目。

こころ和む可愛いもの好きは、
きっと、ずっと変わらない。

植物に囲まれ、音に溢れて。自分のペースで好きなことができる暮らしに満足しているというYさん。でも、バンドマンというだけあって、音に関する希望はあるそうで……。

「やっぱり音がおもいきり出せる、防音の部屋があると嬉しいですね。楽器の練習が家でできるので、もし住めるならそういった部屋に住みたいっていう理想はあります」



「あとは仕事部屋とリビング、別々だといいですよね。気持ちの切り替えになるので。1LDKとか2LDKとかあったらいいなって」

ということは、今後そういった部屋に住む計画を立てているのだろうか。

「具体的には考えていないですけど、そうなったらいいなと。あとは、動物を飼いたいですね、うさぎとか。うさぎ、可愛いですよね(笑)。好きなんです」

オレンジ色が好きで、可愛いものが大好きで。なんともほっこりさせられる。

「中身が子どものままなんです。好きなものに関しては一貫して変わらなくて。物だけじゃなく食に関してもそうで。お寿司が好きで、その中でもまぐろが大好きなんですけど、そればっかり食べちゃうんです。ほんと、お子様なんです(笑)」

それはきっと、自分の気持ちに素直だということ。真っすぐで、曇りがない。むしろ清々しい。

「そう言ってもらえると嬉しいんですけど(笑)。まだ引っ越してきたばかりなので、今はこの部屋をもう少し自分好みにできたらいいなって思っています」

柔軟な考えを持ち、マイペースに人生を彩る。風貌ではなく、Yさんの生き方そのものがロックなのかもしれない。



(上)「左上の絵は、展示で売っていたカレンダーの表紙で。可愛かったので額に入れて飾っているんです」温かなタッチの絵が、この部屋によく合っている。右に飾っているのは、今一番好きだというYUSSEF DAYES(ユセフ・デイズ)のフライヤー。(左下)メルカリで買ったというウィンドチャイムは、風が入るたびに心地の良い音を奏でる。その横には、ドラムのシンバルを用いたインテリアも。(右下)「リラックスしたいときにはお香を焚いています。よく使うのはNAG CHAMPA(ナグチャンパ)。この香りをかぎながら好きな音楽をかけて、コーヒーを飲むのが最高です」

Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata