大は小を兼ねると言うけれど、小にしかできない見せ方というものもある。細かなところまで配慮がなされた“痒いところに手が届く”、いわばミニマルだからこそできる技。
収納やベッド、デスクやシェルフなど、生活に必要なものが一通り揃っている、REISMのシリーズの中でも生活に寄り添った空間、「Fini」。
ミニマルの極みともいえるこの部屋を居住の地として選んだのは、ユニサイクルアーティストとして活躍するKogiさん。車輪ひとつで世界を魅了する、一輪車演舞(ダンス)界のトップランナーだ。
奇しくも、ミニマルという縁で結ばれたわけだが、それ以外にも選んだ理由があるという。
「一輪車ダンスのほかに実はカフェの店員もしていて。実家から通っていたんですけど、家をリノベーションすることになって引っ越しを決めたんです。この部屋は、家具が元から備え付けられていて色々買い足さなくて良かったし、働いているカフェまで5分くらいの距離で。条件がぴったりだったのもあるけど、REISMの物件を見るのが好きなお母さんが薦めてきたのが大きかったかも(笑)」
「内見にはお母さんと一緒に来たんですけど、住む人のことが考えられているって私以上に気に入ってました(笑)。メジャーでベッドや窓を測って、引っ越しのときにはこの部屋に合うベッドリネンやカーテンを用意してくれたんです」
聞けばKogiさんのお母様は、昔建築系のお仕事をされていたそうで、REISMの物件は定期的にチェックされていたのだとか。今回の引っ越しも、REISMの物件選びから内見にいたるまで積極的に協力してくれたという。
「リノベする実家の図案もお母さんが自分で起こして、すごく可愛い家になったんです。でも、私の部屋は物凄く狭く造られてて(笑)。居心地が良い部屋だと、家を出なくなると思ったみたいで、狭くて居心地の悪い部屋にしたそうです。物置部屋になる前提で造ったって言ってました(笑)」
甘やかすことなく、厳しい現実を体験させて自立させる。今回で言うなら、“可愛い子には旅をさせよ”ならぬ“可愛い子には引っ越しさせよ”といったところか。
「そのおかげで、この部屋に出合えたし結果オーライです(笑)。住み始めて1年4ヵ月くらいになるんですけど、来た友だちはみんな最高っ!て言ってくれました」
やわらかなオレンジ色の天井に、部屋の雰囲気に合わせたセンスの良い小物たち。これを見たら、最高っ!と言いたくなる気持ちもよくわかる。
「家具が付いていたので、その分の費用をインテリアに使えたのがよかったですね。揃えたのは家電くらい。テレビ台の扉やクローゼットの扉が実はリバーシブルになってて、気分によって変えられるのも面白くて。今は部屋の雰囲気に合わせて紺色にしているけど、裏は黄色なんですよ」
要所にアクセントカラーを用いた「Fini」ならではの空間を、存分に満喫するKogiさん。ユニサイクルアーティストとカフェ店員というリバーシブルな面を持つKogiさんだからこそ、惹きつけられたポイントなのかもしれない。
Kogiさんが生業としているユニサイクル。一輪車といえば、子どもの頃にハマるものというイメージがあるが、どういった流れでこの道へ進んだのだろう。
「6歳から一輪車に乗っているんですけど、たまたま地元に一輪車のクラブがあって。サッカーとか野球をやる感じで一輪車演舞をはじめました。どんどんのめり込んで、小中ではかなり強くなってましたね。大きくなるにつれて辞めていく人も多いけど、私はずっと続けたくて。ただ、仕事にするには難しい……。そんなときに、アメリカズゴットタレントで優勝した蛯名健一さんが、仕事として活動できる団体を設立したんです。私が所属する団体もアメリカズゴットタレントに出場したんですよ。色々なところに売り込んでくれたこともあって、日本だけでなく世界で認知されて、今では世界中からオファーがくるようになりました」
そういって、宝物である一輪車を見せてくれた。一般的な一輪車よりもサドルの位置が高いのは、衣装のドレスが絡まないようにするためでもあるという。一輪車を持っての移動の際は、お母様が作ったというカバーがかかせないそう。
「安定した収入が得られるようになり、海外の公演もかなり入るようになったので、カフェの仕事は辞める予定で。この部屋も近々退去するんですよ」
この取材の1ヵ月後には、ヨーロッパに3ヵ月間滞在しショーに出演をするという。その後はスイスに1年滞在し、公演を続けることが決まっている。
「今でこそ認知されて仕事になっているけど、仕事がない頃でも、親は好きにしたらいいって言ってくれたんです。その言葉があったら、好きに続けていられたんですよね」
2022年にフランスで行われた一輪車の世界大会「UNICON」では、ペア演技部門で優勝するなど、さらに実力を伸ばしているKogiさん。自身のインスタkgmypnd(@unicircleflow)でも、見事な演技を披露している。
「海外での公演が続くので、練習をひたすら頑張るしかないんですけど、言葉は……まぁ気合いで何とかなるかなって(笑)。海外公演での演技を親はまだ来たことがないので、いつか見てもらいたいですね」
どんな地であろうとも、決してぶれない心の強さ。現状の自分に決して満足せず、邁進し続けるからこそ、心に響く演技ができるのだろう。
「Fini」での生活に終止符を打つKogiさん。決して長くはない期間ではあるが、たくさんの学びもあったという。
「一人暮らしをするようになって、料理を作るようになったんです。パスタとか簡単なものだけど、自分で作るってことが大変だって気づきました。海外での生活は共同生活になるので、これからパスタのレパートリーは増やしていきたいですね」
海外遠征も何度かされているというが、日本食が恋しくなることはないのだろうか。
「日本食が恋しいとかまったくないんですよね。ご飯じゃなくても全然OKで。パンで十分なんです(笑)。ホームシックにもならなくて。海外生活に向いている気がします」
「いつか海外に移住できたらって思ってて。第一希望はヨーロッパですかね。何度も行っているので慣れているのもあるし、部屋の感じもすごく自分に合っていて。真っ白な部屋に、アンティークの小物を飾りたいですね」
未来をしっかと見据え、新たなる居住地で自身を試したいというKogiさん。そこには、自身の活躍の場というだけでなく、楽しむ場所という暮らしまでもイメージできている。
アースカラーを基調とした「Fini」からはじまり、挑むは世界へ。遊び心をプラスしたアクセントカラーのように、Kogiさんの未来もカラフルに彩られるに違いない。
Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata
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