File No.91Organic R.Yさん work:研究機関サポート業務

鈍色タイルは男前にいなし、
過行く日々はたおやかに。

魅力的な人というのは、得てして“あるもの”を持っている。見た目や性格の良さもそのひとつ。でも、それ以上に隠し玉のごとく持っているものがある。これを出されたとき、人は否応なしに心を掴まれる——。

「昨日必死で掃除したんですけど……、大丈夫ですかね……」

そう言いながら迎え入れてくれたYさん。大人の魅力を備えながらも、可愛らしいという言葉が良く似合う。そのイメージを持っていたからか、部屋に入った瞬間、全く違った一面に驚かされた。

Yさんが住むのは、海外のホテルのような上質な雰囲気を持つリノベーションシリーズ「Organic」。床にはグレータイルを施し、壁や天井には天然の木を使い重厚さを漂わせるシックな造り。高級感のある上質な空間ではあるのだが、この部屋は何というか……優雅でありながも男前感が半端ない。



「もともとシンプルなのが好きなので、服や小物もモノトーンが多くて。アンティーク感のある『KiLT』や料理に特化した『Kitchen』も好きなんですけど、自分的にはこっちかなって。グレーのタイルとカウンターキッチンが気に入ってこの部屋に決めたんです」

可愛らしいからの男前。隠し玉である“ギャップ”をサラリと出され、心をグッと掴まれた。今までも、こういった男前な部屋に住んでいたのだろうか。

「ここまでシックな部屋ではなかったですね。ちょっと気分を変えたいと思って部屋を探していたんです。そんなときにREISMのサイトを見つけて。部屋の造りが好みで会社へのアクセスも良く、駅から近いこの物件がピタリとはまったんです」

聞けば、この部屋に合わせて家具や家電を一新したのだとか。



「このソファはFLANNEL SOFA のもの。最初はカーペットを敷いてスツールだけ置いていたんですけど、一人掛けのソファを買い足しました。普段はソファとスツールをくっつけて寝そべりながら映画を観てます(笑)。テーブルはFRITZ HANSEN。落ち着いた感じが気に入って買いました」

リッチな印象のグレーの磁器タイルに、存在感を放つソファとテーブルが良く映える。

「普段は出社勤務なんですけど、仕事が落ち着いているときは週3くらいテレワークで。家で仕事をすることも結構あるので、デスクやワークチェアは気に入ったデザインであることはもちろん、使いやすいことも重点に探しました。このデスクは、高さや色など自分好みに合わせられるUSM Haller。高さを合わせたデスクに引き出しを置ける移動式の台をつけました。ワークチェアは、快適だけど部屋に馴染むものが良かったのでvertebraに。体にフィットして疲れにくいんです」



どれも決して安くはない。でも、その価値に見合っている物なら、値が張っても気持ちよく払うきっぷの良さ。心根までも男前。ギャップによるギャップに、心はガッチリ鷲掴まれた。

オンオフの切り替えで
生まれる心の余裕

可愛らしい見た目に反し、メンズライクな部屋に住むYさん。そのギャップに驚かされたわけだが、キッチン周りも二枚目感を発揮。二口コンロ横のキッチンツールフックには、黒を基調としたセンスの良い調理道具が並ぶ。



「家具や家電はこの部屋に合わせて買い揃えたんですけど、調理道具や食器はほとんど持ってきたものでなんです。気に入ったものをコツコツ集めていったら、かなりの数になってて。でも、この部屋は収納が割と多かったので、持ってきた食器たちがちゃんと納まったので良かったです(笑)」

そう言ってキッチン横の棚を愛おしそうに眺めるYさん。そこには、棚びっしりに収まった食器にサイズ違いのストーブたちが。

「さすがに全部とはいかなかったので、厳選しました。ストーブにいたっては、だいぶ減らしたんです、これでも(笑)。友だちが来たときは、ストーブを使って料理も作りますよ。仕事がある日は凝ったものは作れないですけど、料理に合ったお皿に盛りつけてキッチンの対面に並べて食べています。その後にソファに座ってコーヒーを飲むのがルーティーンになってて。ホッとできるこの時間がすごく好きなんです」

好きな物に囲まれて、自分時間を満喫する。心地よいルーティーンは、心の栄養にもなっているようだ。

「部屋で過ごす時間も好きなんですけど、山で過ごす時間も、そういう意味では心の栄養になっているかもしれないです。今の職場に登山部があって、何となくはじめたらのめり込んでいって。でも毎回、登っている途中で後悔するんです。辛いの分かっててなんで登っちゃったんだろうって(笑)。ただ、登り切った後の達成感と、登頂部から見る景色は何物にも代えられなくて。仕事のこととか一切忘れて、気持ちがリセットされるんです」

部屋でも外でも、心を開放する時間を持つ。Yさんが醸し出すゆったりとした余裕は、このオンオフの切り替えにあるのかもしれない。

(左)黒とシルバーを基調としたキッチンツール。「使う頻度の高いものを掛けていて、調味料やお箸などはキッチン下の収納に置いています。キッチン下の収納も広々しているので、他にも色んなものがみっちり入っています(笑)」(右)「ストック用の水や調味料などをタイルの上にそのまま置くのも……と思って買った収納ボックス。閉めたら椅子にもなるんですよ」

学びたい欲に従い、
やりたいことに挑戦

この部屋に越して1年弱。「Organic」への引っ越しを機に心地よい生活のリズムも生まれ、気持ちも一新したに違いない。この部屋での暮らしは、ほかにも何か変化をもたらしたのだろうか。

「学びたい欲が強くなった気がします。色んなことに挑戦したいなって。今一番通いたいのが、料理教室。色んな国の料理を、レシピを見ないで作れるようにもなりたいし、少ない食材で色々アレンジできるようにもなりたいですね。少しだけタロットの勉強もしているので、もう少し深く知りたいっていう思いもあって。時間とお金があれば、色々挑戦したいです(笑)」



「あとは……自転車を買おうかなって。アクセスの良い場所で可愛いお店もたくさんあるんですけど、この街自体をあまり知らなくて。だから自転車を買って散策したいですね。ほんとに、やりたいことがいっぱいです(笑)」

自身の今後について楽しそうに語るYさん。この部屋で、この街で、まだまだやりたいことは山積みのよう。では、現状と切り離したらどうだろう。願望だけで言ったら、やりたいことも少し変わるのでは。

「仕事とか関係なかったら下町に住んでみたいですね。浅草とか蔵前とか。和と洋をミックスした部屋に住むのも素敵だなって。本当に願望だけで言ってるんですけど、でも、もう少し歳を重ねたときに、そういった場所でゆっくり暮らせたら良いですよね」

今は、男前の部屋で日々たおやかに暮らしているが、これから先、新たな地でまだ見ぬ一面を見せてくれるのかもしれない。その度にまたきっと、心を掴まれてしまうのだ。



(上)シューズラックに飾られている1枚のレコード。実はこれ、マイケル・ジャクソンの直筆サイン入り!「30年くらい前、マイケル・ジャクソンが来日したときに関係者として呼ばれたて、そのときに本人にレコードに書いてもらったんです。足元が写っているジャケ写なので、シューズラックに飾っています」(左下)コンロの上にある換気扇の上に、ちょこんと座る小さなオブジェを発見。「これは知り合いの息子さんの作品で。もともとアート自体は好きだったんですけど、友だちの影響で若手の作家の展示会にも行くようになりました」(右下)ピクチャーレールに掛かっているのは、天野タケルさんの作品。「この部屋にはモノトーンの物が多いので、明るさをプラスしたいと思って購入しました」

Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata