File No.90base M.Mさん work:IT企画職

選抜メンバーが集結した、
悦楽“ときめき”ベース。

家長が絶対だった昭和の時代、各家には家訓があった。

“食事中はしゃべるべからず”
“人の悪口は言うべからず”
“働かざる者食うべからず”

時は令和、家訓が消えつつある中で、絶対的な家訓を掲げて現在の家に住むことを決めたMさん。さて、その家訓とは——。

「部屋を決める際に、“ときめかないところには住まない”って決めていたんです。心躍る部屋じゃないと、住んでいても絶対楽しくない。この部屋を見つけた時、『これだ!』って思ったんです。もうときめきが止まらなくて……」

Mさんのときめきを奪ったのは、鉄管やブリキといった素材を融合させた、秘密基地を思わせるリノベーションシリーズ「base」。

「キッチン重視で探していたんですけど、この部屋を見つけた時に、キッチンも広くて使いやすそうだし、内装が抜群に可愛かった! すぐに内見の申し込みをして実際に部屋を見たら、もう全てが私好みで。内見1件目だったんですけど、すぐに入居を決めました」

一目ぼれのような出会いを果たし、「base」の住人となったMさん。ときめきは部屋だけにあらず、生活空間の全てが“ときめき”によって集結しているという。

「物は基本、可愛い子しか置かないって決めていて。この部屋にある物は、私をときめかせた選抜メンバーなんです(笑)」



Mさんをときめかせたという選抜メンバーだけあって、家具やインテリアはどれも素敵な物ばかり。

「この部屋は、無機質さがあるけど木の温もりも感じさせるので、ミッドセンチュリーモダンにまとめました。その中にパリの部屋の要素も入れて、やわらかさも意識してて。濃いめの革の色に惹かれて購入したソファは、そのままだとちょっと味気ないので、アクセントとして白のファーを置いています。手前にあるサイドテーブルは、大阪にあるANTRYで購入したもの。オーダーしてから作るので、5ヵ月待ったんです。でも、届いたらやっぱり素敵で。壁の無機質なコンクリートと木が持つやさしい感じが相まって、すごく気に入っています」

ソファに座りながら、ときめいた家具たちのことを愛おしそうに語るMさん。ただそれだけのことなのに、「base」とセンスの良い家具やインテリアが上質な雰囲気を醸し出し、なんとも絵になる。

「部屋をすっきり見せたくて、あまり物を置かないようにしているんですけど、インテリアとして部屋にハマるものはちょこちょこ置いていて」

「コンセントの上に飾っているのは、ウェス・アンダーソンの映画に出てきそうな風景を写真として展示した、『ウェス・アンダーソンすぎる風景展』で買ったもの。その横には可愛いお酒の空瓶を置いています。波の形状の額縁は、本当は鏡だったんです。でも鏡が割れちゃって。縁だけでも可愛いので、そのまま飾っています(笑)。ピンクの花瓶はH&Mホームで買いました。形が変わってて部屋のアクセントになるし、コンセントの上に飾った写真のピンクともマッチしてて良いかなって」

ただ物を置くのではなく、何気ないスペースを自分好みにデザイン。定義やルールに縛られない自由な表現は、遊び心溢れる「base」と良く合っている。

「私の趣味って、衣食住なんです。オシャレするのも好きだし、食べることも料理を作ることも好き、家で過ごす時間も大好きで。ほんと、暮らし自体が趣味なんですよね。仕事も週1出社くらいでほぼリモートなので、家にいる時間が長いんです。だから、家にいる時間を贅沢にしたくて。この部屋に越してきて自分が変わったなぁと感じたのは、常に部屋をキレイにしておきたいって思うようになったんです。部屋がキレイだとモチベーションが上がるんですよね」

「base」での暮らしは、ときめきで満たされるだけでなく意識まで変えたとは。衣食住、全てがMさんにとってのライフワークになっているのだ。

(左)「ここには行って良かったお店のショップカードや写真、フライヤーを飾っているんです」マスキングテープを使ってラフに貼り付け、ランダムに飾る。遊び心のある気負いのないお洒落さは、「base」のコンセプトによく合っている。(右)ワゴンには、プロジェクターのほかに日常に使う小物が並ぶ。「黄色のダックの置物は海外のミュージアムで買いました。可愛いんですけど意外と高くて(笑)。スフィンクスになっているのが気に入ってます」

イマジネーションが湧く
ショップチックな魅せる収納

“ときめき”を基準として日々を暮らすMさん。この部屋を決める際に、ときめき要素の1つとして挙げていたキッチン。どんな点に惹かれたのだろう。

「料理を作るのが好きなので、調理スペースが広いのがすごく良くて。調理道具も昔から集めていてたくさん持っていたので、収納棚がついているのもありがたかったですね。カウンターキッチンなので、テーブルとして使えるのも良かった。もう全てが私好みでした」



カウンターキッチンの下にも棚やワゴンが余裕で置けるスペースがあり、料理をする人にとっては最高の造り。

「日常に使うものは全てキッチン下に入れていて、可愛いものやよく使うものを見える収納棚に置いているんです」

選抜メンバー入りしたキッチンアイテム、さぞかし可愛いに溢れているに違いない。

「そうですね、可愛いが溢れる子ばかりです(笑)。赤い取っ手がついているパエリアパンは、部屋のアクセントになると思ったので、給湯ボタン下の鉄部分にマグネット式のフックをつけて見せる収納にしています。その横にはマグネット式のウォールホルダーに包丁をつけて飾り収納に」



「収納棚には、炊飯器やブレンダーのような調理家電のほかに、お皿やマグカップ、お気に入りのコーヒー豆を置いています。可愛かったお店やコーヒーが美味しかったお店、ご飯が美味しかったお店のショップカードも置いて、インテリアっぽく見せてみたり。色々自分好みに飾れるのが楽しいですね」

可愛いものに対するアンテナが敏感で、ときめくものを上手にキャッチする。Mさんにとってこのキッチンは、お洒落のイマジネーションがどんどん湧くステージのようだ。

「友だちを呼んでご飯を振る舞うことも好きで、よく泊りにきています。この間は、タコスパーティーしたんですよ。何度も来ているのでもう慣れたけど、はじめて来たときはみんなびっくりしていましたね(笑)。『何この部屋、可愛い!』って」

こんなに素敵な部屋なら、確かに人を呼びたくなる。泊まることもよくあるというが、布団などの寝具はどうしているのだろう。パッと見、そういったものは見当たらないのだが……。

「キッチンの収納棚の後ろがロフトになっていて、その下に物が置けるスペースがあるんです。そこに人が来たとき用の寝具や季節の物を入れていて。友だちがきたときは、そこから布団を出して敷いています」



「ロフトスペースは、布団を敷いて寝床にしていて。キッチンの収納棚がロフト部分からだとちょうど本を読むのに良い高さなので、灯りをつけておこもり感覚で本を読んだりもしてます。1つのことだけじゃなく、いかようにも使えるのは本当に良いんですよね。ほんと、重宝してます(笑)」

ロフト下を上手に使い、見せたくない物は徹底して収納場所へ。可愛いものは全力で表に出す。このメリハリができることも、心ときめいた1つなのかもしれない。

いくつになっても、
ときめきく心の声に耳を傾ける

理想とする部屋にするべく、お洒落に余念がない、というのはよくある思想。でもMさんの場合、その気負いがまったくない。思ったままを思い切り楽しんでいるだけ。それが、お洒落にまとまっているのだ。

この感覚が、「base」と共鳴しMさんならではの世界観を紡ぎ出す。この部屋での物語、いつまで続くのだろう。

「この部屋が気に入っているのでまだ先かもしれないんですけど、いつかは『Kitchen』に住んでみたいって想いはあります。『Organic』みたいな部屋も好きだし、『KiLT』みたいなアンティーク調の部屋にも住んでみたいですね」



「もしどこに住んでも良いっていうなら、ヨーロッパに住んでみたい。パリ市内にあるマンションの上層階とか素敵ですよね。あの独特な海外の造りも好きですけど、昔ながらの日本家屋も好きなんです。広い庭があって、そこには縁側があって。そこでコーヒーを淹れるおばあちゃんになりたいですね(笑)」

縁側でコーヒーとはなんとも風流。手動のコーヒーミルでじっくり時間をかけて豆を挽き、ゆっくり淹れたコーヒーの味はさぞ格別だろう。

「いつかは誰かと暮らすことになるかもしれないんですよね。そうなったら、お互いの好みを合わせないといけないのか……うーん、一緒に住んでもそこは譲らないな(笑)。きっと自分の好きな感じの部屋にすると思います」

笑いながら、未来の自分について語るMさん。本当に屈託がない。

自分の感覚を信じ、ときめきく心の声に対し素直に耳を傾ける。この思想はいくつになっても、どこで暮らしても、きっと変わらないだろう。

何年後、何十年後、ときめきに溢れた家に住むMさんに会ってみたくなった。



(上)部屋でよく映画を観るというMさん。最近のお気に入りは『aftersun(アフターサン)』なのだとか。「映し出される景色や風景が綺麗な映画が好きで。この映画は景色も話もよかったんですよ。ちょっと暗いんですけどね(笑)」(左下)「コーヒーが美味しかったお店の豆を買って、豆を挽いて飲んでいます。この時間がすごくリラックスできて好きなんです」(右下)ロフト横のラックには、お気に入りの服が並ぶ。「ごちゃごちゃするのが好きじゃないので、納まる分だけ入れるようにしています。物が溢れないように、1つ買ったら1つ手放して入れ替えるようにしてるんですよ」

Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata