File No.89Union K.Oさん work:インテリアメーカープランナー

1Rのモダンホールで、
奏でるは名品ギブソンの調べ。

人は恋をする生き物。その対象は人だけとは限らない。1本のギターに衝撃を受け、迷わず手に入れたというOさん。恋したギターを奏でる空間を求め、たどり着いたのがモダンデザインをベースにしたリノベーションシリーズ「Union」。

「リノベーションした部屋を中心に探していたんですけど、ギターが弾けるように鉄筋の造りがマストで、会社まで30分くらい、近くにコインパーキングがある、その条件にぴったりはまったのがこの部屋で。シンプルな造りでどんなインテリアにも合いそうだと思ったし、細部までこだわっていてお洒落なところが気に入りました」



ギターを弾くのが趣味だというOさん。気になるギターは、名品ギブソン。

「実は、このギターを手に入れるため大阪まで行ったんです。結構値が張ったけど、どうしても欲しくて。高価なものだし大事なものなので配送にはしたくなくて、自分で持って帰ろうと思ったんですけど、帰りの新幹線は自由席がどこも空いていなくて……。約2時間30分、ずっと立ちながらギターを抱えて帰ってきました(笑)」

今では相棒として日々、心地よい音を紡ぎ出しているが、ギター自体はほぼ独学だという。

「ボカロPでもあるn-buna(ナブナ)さんが、ヨルシカとして活動する前に制作した『夜明けと蛍』という曲がどうしても弾きたくて、必死に練習しました。今ではだいぶレパートリーも増えましたね」

ギブソンのほかにも、アコースティックギターの傑作として知られるメイトンも揃え、軽音部に所属している従弟とたまにセッションもするという。Oさんにとって、音楽はなくてはならないものなのだ。



「実は、この部屋を契約するときに、マーシャルのスピーカーを持ってきたんです。そんな奴、普通いないですよね(笑)。音の出かたが気になって持ってきたんですけど、それ以上に内装がすごく気に入って。フローリングでやさしい雰囲気だけど、壁や天井はむきだしのコンクリートでカッコよさもあって。自分の住みたい部屋のイメージが湧いてきたんです」

初の一人暮らしということもあり、納得する部屋に住みたかったというOさん。その希望は、存分に叶えられたのだろう。この部屋に合わせて買ったという家具やインテリア、そして大事なギターがピタリとはまっている。

「部屋の感じに合わせてグレーやベージュ系にまとめて、ポイントに黒を使って全体のバランスを揃えました。ソファやテーブル、スツールなど家具系はIKEAで、小物はインテリアショップで買いました。仕事柄、色々なインテリアに触れることも多く興味もあったので、自分なりのコーディネートができたかなと思ってます」

部屋全体はすっきりとまとめていて、でも、それぞれの存在感はしっかり醸し出す。物の配置やバランスがとても良いのだろう、Oさんが奏でるギターの音色のように、部屋にいること自体が心地よい。

「仕事柄、お客さんの家に訪問してインテリアの提案をするので、自分の住んでいる部屋もちゃんとしたいなって思いがあって。実際に、お客さんに自分が住んでいる部屋を見せることもあるんですけど、『この部屋に住んでいるこの人が言うなら……』と信頼度が上がるんです(笑)」

少し照れながら、自身の仕事と部屋の関係性を語るOさん。この部屋での暮らしは、相棒のギターを奏でる場所だけでなく、様々な人に豊かな暮らしぶりを伝える場にもなっているのだ。

(左)スツールの上には大好きだというヨルシカのギターコード譜が。「ギター歴は4年くらいなんですけど、結構練習したのでだいたい弾けるようになったと思います」(右)「これは、『幻燈』っていうヨルシカの画集アルバムで。普段はベッドフレームの上に飾っているんです。絵と曲がリンクしていて、世界観があるんですよ」

理想のインテリアは
暮らしと仕事の延長上に

この部屋に越して10ヵ月。日々、自分好みの部屋にアップデートしているというが、1つ分からないことがある。引っ越しの条件として挙げていた、近くにコインパーキングがある……というもの。これは一体どういうことなのだろう?

「インテリアメーカーのプランナーとして、自社の商品をお客さんに提案する仕事をしているんですけど、実際にお客さんの家に行って商品の説明をすることも多くて。都心だけでなく、軽井沢や熱海、那須といった別荘地に行くこともよくあるんです。そういった場合、朝の4時過ぎに家を出て向かうので、前日の夜に家の近くにあるパーキングに社用車を停めて行くんですよ。それが結構な頻度であるので、家の近くにパーキングがあるのもマストだったんです」



なるほど、社用車を停めるためのパーキング! 謎が解けた。

「移動は大変じゃないの?とか友だちに言われるんですけど、好きな音楽をかけながら行くので全然苦じゃなくて。むしろ自分の時間が持てるので楽しいんですよ。それに、伺う家が本当に素敵で。だいたい一軒家で広い庭があって、家の造りもこだわっていて……。インテリアもすごくお洒落なんですよ。色々なインテリアにも触れられるので、勉強にもなるんです。本当にいいことずくめです(笑)」

インテリアのセンスが良いのは、こういった経験も生かされているのだろう。Oさんの部屋には細部にまでこだわりが詰まっている。

「この部屋にはディスプレイシェルフがついていたので、自分の好きなものを置こうと思ったんです。でもただ置くだけじゃつまらないので、緑を取り入れて部屋全体のバランスを揃えたくて。飾るアイテムも、部屋の色味に合わせたんです。そして、ゆとりをもって置くことでよりスッキリして見えるんですよね」

自身の感覚を信じ、新たな刺激を取り入れる柔軟さ。Oさんにとって、“暮らし”と“仕事”は延長線上にあるものなのかもしれない。

(左)「部屋にある観葉植物の中で、このモンステラだけは本物なんです。あとは全部イミテーショングリーンで。霧吹きで水をかけて大切に育てています」(右)ミニマルなオープンラックには季節のアイテムのみかけているという。「さほど遠くない距離に実家があるので、冬物は実家の自分の部屋に置いています」

なりたい自分のために
理想は限りなく

ギターと、音楽と、心地よい暮らし。好きな仕事にも携われて、Oさんの「Union」生活は順風満帆。

「確かに今のままでも十分なんですけど、将来的にもっと住宅に関する仕事ができたらいいなって想いがあって。ショールームアドバイザーとなって、自社の商品をより近くで感じてもらいたいんです。それに、色彩検定やインテリアコーディネーターの資格をとって、暮らし自体をアドバイスできるようにもなりたいですね」



「今後は、作詞作曲にも挑戦したいですね。人前で音楽を披露してみたい。趣味ではあるけど、もっと可能性を広げられたらって思っています」

現状に満足せず、常に高みを目指すOさん。まだまだやりたいこと、叶えたい夢があるのだろうか。

「素敵な家をたくさん見てきたので、いつか自分もこういった家に住みたいって気持ちはあります。都心に住みたいってこだわりはないんですけど、すぐに都心に出られるくらいの距離で、あまり人がいない場所がいいですね。一軒家で庭があって、自分のこだわりが詰まった内装で、近くには海があってのんびり暮らせる場所に住んでみたい。めちゃくちゃ理想ですけど(笑)」

きっとその家は広いリビングがあり、たくさんの人を招き入れられるに違いない。そして、その場所で、自身が作詞作曲した曲を相棒のギターで弾き語るのだろう。

いつかのその日まで、今日も「Union」で夢の準備を重ねる。

(左)シンプルにまとめたキッチン。「最近、料理をするようになったので、キッチン道具やお皿を増やしていきたいです」(右)玄関横のラックには、大好きだという魔女の宅急便のアイテムをはじめ、お洒落な小物が並ぶ。

Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata