トントン、ザッザッ、カンカンカン。職人たちが作り出す伝統工芸は、今日も粋なリズムを奏でている。江戸時代から続く職人の街のほど近く、下町風情の溢れる一角で、まるで海外のアパルトマンかと見まごう素敵な部屋がある。下町に佇む小さなパリ。そんな小洒落た雰囲気を感じさせる。
グレイッシュトーンの壁が印象的なこの部屋は、「Plain」シリーズ。アクセントカラーを居室の一部に取り入れ、シンプルな中にもメリハリを効かせた空間。一見すると個性的、でもその個性にこそ住人であるHさんは心惹かれたのだ。
「壁の色を見たときビビッときて。好みの色だなって思ったんです。日本の賃貸の部屋は、良く言えば誰でも合わせやすい造り。でも無難で面白みにかけるなと感じていて。REISMの物件は、その無難さがなくて良かったんです。結構攻めているなって(笑)」
この部屋に住んで2年半ちょっと。自分好みにカスタマイズして、お気に入りものだけを置いているというHさん。実は、前に住んでいた部屋は倍の広さがあったそう。家具や衣類はそのまま持ってきたのだろうか?
「この部屋の広さは20㎡ちょっと。どうやって理想の部屋に仕上げるかって考えた時、必要のないものは処分しようって決めたんです。以前は結構広い部屋に住んでいて、服や靴、家具もたくさんあって。それをこの部屋に全部持ってくることはできない…、じゃあ必要なものだけに厳選しようと。家具も、この際本当に好きな物を置こうって思ったんです」
見れば、いたるところにこだわりの家具や雑貨が並んでいる。どれもデザインされたハイセンスなものばかり。
「この家に住んでから家具は良いものに新調したんです。特に椅子は思い切って、ずっと欲しかったカールハンセン&サンの椅子を2脚購入しました。1脚は、ゆったり座れるサファリチェア。この部屋の色味に合わせて買ったイケアのキャビネットの横のスペースにすっぽり収まったんですよ。お籠り感のある中で、本を読んだりしています。もう1脚は、Yチェアとして知られるウィッシュボーンチェア。これもいつかは欲しいと思っていたので、引っ越しを機に買いました。私にしては頑張った金額だったんですけど、ずっと使えるものだし、子どもができたときに譲ることもできるなって」
「もっと広い部屋だったら、スペースがあるからとどんどん物を買ってしまうと思うんです。でも、この部屋のスペースは限られていて余計なものが置けない。だから、好きな物、本当に良いものを置きたいって思えて、私にはちょうど良い広さでした」
限られたスペースを最大限に活かし、それを存分に楽しむ。この部屋とHさんのセンスが合わされば、小は大をも兼ねるのだ。
家具のセンスや配色。ちょっとした飾りや、緑の配置にいたるまで、どれもインテリア雑誌に出てくるお手本のよう。それもそのはず、Hさんの職業はインテリアコーディネーター。ただ、以前は大手家具メーカーでマネージメントをしていたという。もともとインテリア好きだったこともあり、家具や照明などを自ら選び、空間を生み出すインテリアコーディネーターの道へ転職したのだそう。
「学生の頃に短期で3回留学をしているんですけど、内装にこだわっている家が良いとお願いするくらいインテリアが好きで。だから、いつかインテリアの仕事をやってみたい気持ちはあったんですけど、センスが良い人がなる仕事というか、アーティスティックな人がやるイメージがあったんです。だから、“私には難しいかな…”と目をそらしていたんですけど、やっぱりチャレンジしてみようと思って。思い切って仕事を辞めてインテリアの学校に通いこの仕事に就いたんです。今の職場は、学校に通っているときにアシスタントとして働かせてもらって、そのまま社員に。好きなことを学びながら仕事にできたので、それはすごく嬉しかったですね」
2年間の勉強期間を経て、憧れだったインテリアコーディネーターとなったHさん。職業柄、華やかでセンスの良さを問われるイメージがあるのだが、それだけだと仕事として成り立たないのだという。
「センスはもちろん大事ですけど、結構細かい寸法とか計画的に組み合わせなくてはいけなくて。内装に関して話すときに、感覚だけで話をするとお客様に採用してもらえない。論理的に話をしないと理解してもらえないんです。そういう意味では、そこまでアーティスト気質じゃなくても大丈夫なんだって思いました。でも、一般的なイメージだとインテリアって難しいって思われているんですよね。洋服がすごくお洒落な人でも、インテリアとなった途端にわかんなくなってしまう。最近だと暮らし系YouTubeとかもあるし、海外の写真も気軽に見られるようになったので、インテリアを身近に感じられるようになってきたと感じます。海外のお部屋のように、色をたくさん使ったりこだわりを前面に出したり、自由に楽しんでほしいですよね」
仕事に真摯に向き合い、たくさんの知識を身につけてきたのだろう。Hさんの話を聞いてもう一度部屋を見渡してみると、培った知識を生かし、自分好みに部屋をカスタマイズして楽しんでいるのがよくわかる。例えばカーテンレール。この部屋のカーテンレールはレース用と遮光用の2本あるタイプなのだが、外側にのみシアーカーテンを取り付け、内側のカーテンレールはランナーを抜いて観葉植物を吊るすために使用している。これだけで、部屋に動きが出るだけなく圧迫感をも取り払ってくれる。
「この部屋が高層階にあって光がよく入るので、遮光カーテンはつけなくてもいいかなって。それに、ランナーを抜くだけで余計なものが取っ払われて部屋がスッキリして見えるんです。実はスポットライトの数も減らしているんですよ。今のこの部屋には明るすぎるなって感じて。だから間接照明をところどころに置いて調整しました。細かい部分なんですけど、トータルで見るとバランスよく見えるんです」
より素敵に見せるためには? きっとそんなことを考えながら暮らしを楽しんでいるのだろう。くるくるとチャーミングな表情を見せるHさんのように、この部屋も日々新たな表情を見せている。
憧れの仕事に就き、自由に自分らしくこの部屋での暮らしを楽しんでいるHさん。ただ、型にはまらないのびのびした発想の持ち主。現状で満足しているとは思えない。新たなステージを考えているのでは?
「実はリノベーション物件のインテリアに興味があって。今は住宅メーカーのインテリアを提案しているんですけど、新築の物件なのでそこまで生活に踏み込むのが難しいなと感じていて。その点リノベーション物件は、自由度が高いなって。今すぐってわけではないですけど、いつかはそっちの道でできたらなって思いはあります」
なるほど、リノベーション物件。ん? リノベーション? それはつまり、REISMの物件みたいなことなのだろうか?
「(笑)そうですね。REISMの物件を見ていると、本当に自由な発想で暮らしの提案をしているんですよね。型にはまっていなくて、住む人のイマジネーションが膨らむ造り。こういった部屋に対して、新たな暮らしの提案ができたら面白いなって。決して売込みしているわけではないですよ(笑)」
自由な発想の持ち主のHさん×型にはまらないREISMの物件。確かに、新たな部屋のカタチが次々と生み出されそう。ぜひ見てみたい。
「リノベーションに興味を持ち始めたのは、REISMの物件に住み始めたのがきっかけなんです。自分でも、いつか中古のマンションを買ってリノベーションしたいって思いが出てきて。まだ先のことかなって考えているので、いつかリノベ物件に住んで自分好みにしたいですね」
この部屋との出会いがきっかけで、リノベーションという新たな可能性を見いだしたHさん。キラキラと目を輝かせて未来を語るその姿は、まるで大切な宝物をこっそり教えてくれる少女のよう。
Hさんが提案するインテリアはきっと、大好きものが詰まったおもちゃ箱のように、眩い輝きを放つジュエリーを並べた宝石箱のように、その空間を住む人をワクワクとさせ心を満たしてくれるに違いない。
Text: Tomomi Okudaira
Photograph: Hiroshi Yahata
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